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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ


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97. ダイエット

 本日のアリスは早々に政務を終わらせ、優雅に部屋でお茶を嗜みながらクッキーを食べていた。この後侍女から衝撃的な言葉を聞くとも思わずに………………。




「アリス様ちょっと太りましたか?」


 イリスの口から発された言葉に、雷に撃たれたかのように衝撃を受けるアリス。


 太った……。


 太った…………?


 今まで色々と言われる人生ではあったが、その誰からも自身の顔やスタイルに関して物申されたことなどなかったのに。まさか腹心の侍女からその言葉を聞くことになろうとは。


「ああ、少し太ったかもしれませんね~。ドレスの後ろのファスナーを締める時に少し締めにくいですもん」


 アイラ……そうね。確かに最近ドレスに少ーーーしだけぐっと締め付けられているような気がするわ。


「太っただなんて、失礼よ。少しふっくらされただけよ」


 ルリハ……あなたも十分失礼よ。それはカバーになっていないわ。


「年じゃないですか?若いときは太りにくいじゃないですか。年取って肉がつきやすくなったんじゃないですか?」


 ケラケラとからかうように笑うフランク。

 お黙りフランク。まだ私は17歳。そんな年ではないわ。そういうあなたこそ33歳。お腹周りには気をつけるべきでは?


「フランク様、アリス様が年だったら私達はどうなるんですか。もしかして幼女趣味なんですか?」


「失敬な」


 イリスの言葉に心外だと言いたげに声を上げるフランク。


「失敬なのは全員よ」


「「「失礼致しました」」」


 素直にペコリと頭をさげる面々にアリスから苦い笑いが漏れる。


「でも確かに少し太ったわよね……」


 ムニッとお腹の肉をつまむアリス。あっ腹肉つまんだ……自分で太ったって言っちゃったよ、一同の心が揃った。


「ここに来てからたまに魔物退治するくらいだものね。討伐頻度も減ったし、訓練もしていないから当然といえば当然よね」


 アリスは少し考えた後、


「ダイエットしますか!動けばなんとかなるでしょ」


 ダイエットを決めたアリスだった。


 

 

~~~~~



 深夜皆が寝静まった後アリスは部屋を抜け出した。


 ダイエット……それは痩せて美しくなるためにする努力。決して恥ずべきことではない。そうなのだが、なんとなく気恥ずかしさを感じるアリスは夜中に運動をすることにした。


 というのも王妃やマリーナに見られたら、温い視線で見られそうな気がするからだ。彼女たちはお茶会でもあまりお菓子を食べない。見た目ゆるふわなのに、ケーキが似合う見た目なのに。スタイルを保つためにストイックなのだ。自分は結構彼女たちの前でもバクバク食べていたので、ダイエットしているところを見られたらやっぱり食べ過ぎだったのねとか思われそうで嫌だ。



 彼女の行き先は木が生い茂る山。軽く準備運動をすると猛スピードで駆け出すアリス。明るい月が出ているが、木が生い茂る森の中にはあまり光がない。だが何にもぶつかることなくスムーズに森を走り回るアリス。


 ……………………………………………


 どれくらい走っただろうか。よくわからないがもうそろそろ切り上げようとしたとき何やら森の中が光ったり消えたりを繰り返している場所があることに気づいた。


 そっと近づく。


 そこにいたのは夫であるブランクだった。久しぶりに見る夫。最近は何やら部屋に閉じこもっていることが多いらしい。一応政務はこなしているから、誰も何も言わないらしいが。


 静かに気配を消して観察するアリス。


 自分のことに夢中で気づかぬブランク。いや、アリスの気配の消し方がうまいのか。




 彼は何やら脇に本を抱え、紙を地面に置いている。何やら口が動いたが小さ過ぎて聞き取ることができない。口の動きからしてーーー召喚だろうか。



 紙が光ったかと思ったらその場に現れたのは赤色のドラゴンだった。




 アリスの目が驚愕に見開かれる。


 あれはーーーーー。



 アリスが見ていることに気づかず、部屋では試せなかった大きい魔物を次から次へと召喚するブランク。最後に全ての魔物を還すと彼はとても満足げな顔をして山を降りていった。



「なんだか面白いことになっているわね」




 誰もいないが思わず声がこぼれるアリス。


 その顔には危機感などない、とても愉しげな笑みが浮かんでいた。




~~~~~



 次の日の朝


「おはようございますアリス様」


「おはようイリス」


「アリス様目の下のクマひどいですよ」


「あらま……」


 あれからアリスは一睡もしていなかった。


「でも、何やらとてもご機嫌ですね」


 そう、アリスは目の下にクマを作りながらも、その表情はとても明るいものだった。


「近々面白いものが見られそうよ」


「どんな災厄ですか?」


「失礼な。面白いものだっていってるでしょ」


「アリス様は色々巻き起こすものですから……」


「でも、まああなたにとっては災厄っていうか、災難なこととも言えるかもしれないわね」


「…………?どういうことですか?」


 ニターッと実に悪い笑みを浮かべるアリスにイリスはゾットする。



 コンコンッ


 とても常識的なノック音。


「ザラ様がお茶でもと言われておりますが、本日のご予定はいかがでしょうか?」


 ザラの侍女だった。



「あら、お義母様からのお誘い嬉しいわ。ぜひご一緒したいとお伝えしてくれるかしら」


 ザラの侍女はほっとしたような顔をすると失礼致しますと言って去っていった。


「珍しいですね」


「そうね」


 とても楽しそうだ。そんなに義母とお茶できるのが嬉しいのだろうか。


「……?身支度お手伝いいたします」


「ええ、よろしくね」


 そういうアリスはとても上機嫌な様子。




 でもなぜだろう?

 先程から悪寒がするのは……。


 





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