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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ


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80. 診療所①

 やって参りました診療所。今アリスがいるのは王家が運営している診療所である。ルビーは医師のレベルが低いなどと批判していたが、所長のおじいちゃんは元王宮医師長。しかもよくある家の権力によるものではなく平民から自分の力でのし上がった高度な医術を操るハイレベルな医師。他の医師たちも王宮医師にと声をかけられる者ばかり。尊敬されこそすれ、こき下ろされて良い存在ではない。

 

 アリスは到着早々その所長に挨拶をしているわけだが、ルビーは何処へ?


「アリス様!何をしていらっしゃるのですか!?」


 お、ちょうど見つかった。いや、見つけられたと言うべきか。


「ルビー様。所長殿に挨拶をしている「私達がすべきことは所長に媚びを売ることではございません!」」


 人の言葉を遮り放たれたものは的外れすぎる言いがかり。本日のルビーの格好は黒のワンピースに白のエプロンという至ってシンプルな色合い。ただ至る所につけられたフリルはなんの意味があるのだろうか。


 まあそれはさておき、身体の横で握り締めた拳が震えている。いかにも許すまじという見事な演技なのだが……。


「は?」


 初めてくる場所。ここは王家が運営している診療所。自分は王子妃。普通はまず所長に挨拶するものでは?


 媚び……?


 媚びとな?


 いつもルビーがブランクや王家の人達にしている媚び?


 アリスが生を受けてから初めて言われた言葉。


 ーーーKOBIーーー


 衝撃のあまりフリーズしていると一緒についてきていたイリスに突っつかれ、はっと我に返る。


「私達がするべきことは人々の傷を……病を癒やすことです!」


 おー、右手は胸に左手は前に突き出しているが、どこの舞台女優の真似だろうか。そのまま暫く無言のポージング。


「それを患者の方たちを放置するなど……恥を知るべきです!」


 おー、今度は左手が右手の横に移動し両手とも胸の前で握り拳になっている。力説している感じが出ています!表現力満点!!まともに聞くだけくだらないので心の中で暇をつぶすアリス。


 そもそも挨拶&診療許可を得るだけのほんの短い会話。よっぽどルビーの演技がかった大袈裟な身振り手振り付きの会話のほうが時間を取っている。


 言いたいことを言い終えたルビーが患者ーーー子供や若いイケメンたちに近づいて行くのを確認し、所長の許可のもと診療所の中を見て回った。


 その後一番重傷と思われる患者の元へ向かう。身体の至る所に包帯が巻かれた男性。止血の布や包帯から僅かに血がにじみ出ている。隣のベッドの患者が痛まし気に教えてくれる。今朝馬車に轢かれてなんとか命は助かったもののいつまでもつか……と。


 アリスは怪我の部分に手を当て目を閉じる。暫くすると傷が塞がった。その作業を何度も繰り返す。細かい傷はあるが命に関わるような傷は手当てし終えると、周りにいたものからおおー……と感嘆の息が漏れる。


「すげー……」


 思わずといったように声を漏らした先程の隣の男性と目が合う。


「お褒めに預かり光栄です。しかしかなりの貧血状態です。何か有りましたら早急に医師をお呼び頂けますか?」


 にこりと笑みを向けられた男性はコクコクとぎこちなく頷く。そんな男性に隣の女性がしっかり!と思いっきり背中をはたいた。


 その後も酷い傷を負った者を中心に診て回るアリス。その次は病の者を診ていき、薬を処方していく。残念ながら魔法で病は癒せない。亡くなったものを生き返らせることができないように。薬が効かぬのなら病巣を切りとり残りの部分を繋げるしかない。が、それは医師の仕事で専門家でないアリスがやることではない。


 彼女が出来ることは薬で癒せるものは癒し、痛みを和らげてあげることのみ。


 あまりにもテキパキと淡々とこなす為に見ているものが呆然としてしまい、アリスの周りは静かだ。


 それに比べルビーは治癒する度に“んー……”とか“はー……”とか、やってる感満載なので、周りも頑張れーなど少々騒がしい。


 アリスは《《手当が必要》》と思われる人たちの治療を終えた。ルビーはまだまだ頑張る気みたいなので先に帰ろうと声をかける。


「ルビー様」


「あっ、アリス様」


 彼女の額には汗が光っている。顔やら首やらに髪の毛が張り付いている。やってる感満載ではなくて、あれはマジモンの気合の声だったのか…………アリスは心の中で失礼しましたと謝る。


「ルビー様、私先に「とっても綺麗なお姉さん!」」


「なあに?」


 綺麗なお姉さんという甲高い子供の声に即座に反応したのはルビーだった。


「あなたじゃないわよ!あなたは中の上顔でしょ!貴族にしては普通。良く言ったとしても少しだけ可愛いって感じ!」


 ルビーの勘違いを即座に否定する甲高い声に皆ちょっと噴き出すのを堪えた。



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