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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ


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31. 二人の侍女(仮)

 アリスの部屋から出た侍女(まだ仮)の二人。


「アイラ、私は宰相様にアリス様が到着されたことを報告してくるわ」


 ストレートヘアーの侍女がゆるふわヘアーの侍女に声をかける。


「お願いねルリハ。私はここでアリス様の声がかかるのを待つわね」


 ストレート侍女ーーールリハは宰相の執務室に向かい、ゆるふわ侍女ーーーアイラはアリスの部屋の前で待機となった。



~~~~~



「で、どんな感じだった?」


 書類に目を落としたままルリハに問いかけるのはダイラス国の宰相だ。水色の髪の毛と瞳。その見た目にふさわしく水を操る魔法に長けている。なかなかの美丈夫紳士だが目の下の隈がすごい。


「とても麗しい方かと。それに非常に優れた魔法使いのようです。蔑まれていると噂で聞きましたが、正直なぜそのような事態になったのか理解しかねます」


 むしろあれはいじめっ子のほうが似合うような気がする。大国であるガルベラ王国ではあのようなご令嬢が多いのだろうか……よくわからないが、ダイラス国にあれだけ器用に魔法を使いこなせるものはいない。同じことをしようとしたら恐らく殆どの物がぶつかり合って壊れてしまう。


「そうか。やはり例外に漏れず化け物だったか……」


 はー……とため息が漏れる宰相。カサバイン家の者と何度か会話をしたことがあるが、美しさも賢さも魔法の実力も同じ人間とは思えなかった。傲慢不遜で自国の王族に対してあんなに奔放に振る舞う生き物は見たことがない。


 彼は家臣どころか王族総出で迎えるべきだと進言したのだ。だが王妃が私達は王族なのに……とポツリと言ったことで頭でっかちの大臣共がそんな必要はないと言い出して却下された。なのでほぼ全ての使用人を出迎えに行かせ、自分の手先である非常に優秀な者一人を侍女にした。もう一人は王妃の手先だが。


「とりあえずアリス様を怒らせないようにしないとな……。頼んだぞ」


「……承知いたしました」


 正直、うまくできる気がしない。アリスを見たとき何か背中にゾクッとしたものが走った。何かよくわからないが、何かがヤバイと感じたのだ。

 


~~~~~


 場所は戻りアリスの自室。


「そういえばエレナ様が仕事に行かれる前に何かを渡されていましたが、あれは何ですか?」


「ああ、これ?」


 手の上にこれ?が現れる。紙だ。くるくると巻かれた紙に赤色のリボンが付いている。コクンと頷くイリス。


「条件書よ」


 婚姻における条件が書かれた書類だ。合意されればこれをもとに婚姻契約書が作られる。


「……エレナ様、思いっきりぽーーーんと投げられてましたよね」


「そうね。ぽーーーんと投げてたわね」


 声を失うイリスの肩にフランクが手を置き、首を横に振る。考えるだけ無駄だと。


「大丈夫よ。大したことは書いてないわ。カサバイン家の好きにさせろみたいなことだけよ」


「国や王家のことは組み込まなくて良いのですか?」


「オッケーオッケー。王妃が嫌がらせとして結んだ婚姻話だし。そもそもガルベラ王国がダイラス国に求めることって何かある?」


 軍事力、経済力、国土の広さ全てがガルベラ王国の方が上。特産物も不要、何か重要な資源があるわけでもなし。


「確かに…………無いですね」


「だからカサバイン家が勝手に決めちゃってってお達しがあったみたいよ。まあガルベラ王国に損になる条件をつけることはないってわかってるのよね」


 敵視してるくせに誰よりも信頼している。変な関係だ。


「さあ、あちらはどんなことを言ってくるかしらね~」


 話し合いは明後日だ。


「その前に顔合わせが先ですよ」


 明日はダイラス国の王族との顔合わせだ。


「どんな方かしらね、ブランク王子。………………はっ!」


 急に大きな声を出されて身体が跳ねるイリスとフランク。


「ブランクとフランク……そっくりな名前ね。紛らわしいからフランク改名しちゃう?」


「え~~~~~?マジっすか?」


「フフッ冗談よ」


 いや、冗談には聞こえなかった気がするんですが。




~~~~~


「アイラ」


「ルリハ」


 宰相の部屋から戻ってきたルリハが部屋の前で待機しているアイラに声を掛ける。


「戻ってきたのね。何も用がないのか全然呼ばれないわ。私達のこと気に食わなかったのかしら?」


「何かヘマをしたわけじゃないし大丈夫よ」


 チェンジと言われたら、二人共アリスの監視ができなくなってしまう。呼べ~呼べ~呼べ~とドアに向かって念じるが一向に開く気配はない。


 はーと息をつく二人。


「それにしても美しい方だったわね、アリス様」


 人外の美しさだった。美人は3日で飽きるというが、あの顔は飽きないだろう。美しい絵が何年経とうと皆を見惚れさせるように。


「…………王妃様の方がきれいよ」


 ポツリとアイラが呟く。


「もちろん王妃様もおきれいだけど……」


 きれいはきれいだが、レベルが違う。


「…………若かりし日の王妃様の方がお美しかったわよ」




 いや、その言い方は不敬では。その言葉をルリハは飲み込んだ。







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