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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ


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140.成敗②

「お……俺の何が可哀想だと…………」


「えーーーー、やだあ自覚ないのお?」


 人を見下す嘲笑にトキは眉間に皺を寄せた。


 そしてルビーは

 

 気の毒そうにトキを見た。


 アリスはフワリと浮いたかと思うと空中の見えざる椅子に腰掛けると足を組んだ。


「生まれは平民の中でもど貧乏。顔は下の上、身長はまあ及第レベル、でもその微妙な筋肉の付き方は騎士としてどうなの?私の周りの方たちはもっと逞しいわよ?騎士としての腕前は剣も魔法も下の下」


「下の下?」


 ルビーの問い掛けにとても楽しそうに答えるアリス。


「そうよ。騎士だからって皆が強いわけじゃないことはルビーさんだって知っているでしょ?」


「でも平民出身なら腕がよくないとなれないんじゃないの?」


「ふふふっ、甘いわ。平民の間ではそれなりに腕が立ち、評判の良い男。国が少々民にごますりをしたってところね」


 即ち……大した腕ではないが人望が厚いし~彼を騎士にすれば民からの好感度上がるんじゃね~という国の思惑で取り立てられただけ。いわゆる国が民から人気を得るための駒。


「なっ!?別に普通でしょう!?た、確かに特出するものはないかもしれませんが平民が騎士になれたし、人望も厚い!俺は決して可哀想じゃない!!!」


「諸々普通もしくは下な上に性格破綻者、しかもそれに自分は気づいていない。自分はできるやつ、人よりも幸せだって思ってる勘違い野郎……ああ!なんて残念な頭をしているの!」


 ああ悲劇!とでもいわんばかり額に手を当てよろけるアリスにルビーもトキも開いた口が塞がらない。


 あまりにも失礼な物言いに。


「それに……」


 まだ言うのか!ルビーとトキの思いは同じだった。


 アリスはおちょくるような表情をさっと消すと真面目な顔に変わった。


「あなたルビーさんを不幸不幸って言うけど、確かに落ちぶれたものの持って生まれたものは彼女のほうが格上だからね?」


「「え?」」


「え!?だってこの通り顔立ちだって上の下、スタイルはまあちょっと慎ましやかだけれど……低めの身長は性格とは違い可愛らしい顔と合わさって保護欲を掻き立てられるわ。それに治癒魔法の使い手、生まれは宰相の孫娘にして伯爵令嬢。あなたのポテンシャルと比べたら月とスッポンよね。ルビーさんをトップオブ不幸みたいな言い方しているけど、あなたがルビーさんを可哀想可哀想と言える立場?と思うけれど」


 …………確かに。


 そうなのだが…………


「だ、だが今は違うだろう!だからこそ不幸なんだ!持っていたものを全て奪われ、落ちぶれ、天から地に落ちた無様な女だ!」


 ひどい言われようだ。よくそんな相手と結婚したなと我が事ながらどこか他人事のような感想が湧き上がる。


「まあ!ルビーさんはそんな環境に負けるような軟弱者ではなくてよ!ねえ?」


「え!?まあ?」


 どうなんだろう?でも以外と確かに馴染んでやっていると我ながら思う。


「与えられた環境の中で新たな自分を見つけ、新たな仲間を得て少し改心した。残念ながら男を見る目は成長しなかったようだけれど……様々なことを学び心が成長したルビーさんのどこが不幸なのかしら?」

 

「ふ……ふん、まあ、彼女が僕が思っていたよりも不幸でないのは認めますよ」


「あら、私もあなたよりとーーーーっても恵まれていて幸せなことも忘れちゃ嫌よ!見よ!この美貌!スタイル!明晰な頭脳!剣術!魔法!民からの人望!可愛い子供たち!そして言いなりの奴隷!……じゃなくて夫!ああ、もうあなたに無いものをたくさん持っていてごめんあそばせ~!」


 今ブランクのことを奴隷と言った。


 めちゃくちゃ高飛車で傲慢でなんだコイツ感満載のセリフなのになんだろうこの敗北感は……。


 アリスの後ろがキラキラと輝き大輪の花が舞っている。魔法だ。なんという無駄な使い方。


「あなたは謙虚さを身につければ完璧かもね」


「おほほほ、ルビーさん。これだけ完璧なのに、そんな私なんて…………もじもじ、と振る舞えばそれは嫌味というもの」


「……確かにそれはそれでうざいかも」


「でしょう?」


「妃殿下が飛び抜けているのは存じております」


 げんなりと力なく言うトキにアリスはすっと冷たい視線を向ける。


「そうよ。だから私はあなたを痕跡も証拠もなく消すこともできる」


 すっと手のひらを向けられたトキは目を見開いた。


「ッ!……ゴボッ」


 息が。


 自分の頭部に水が纏わりつく。


 苦しい。


「息ができないって苦しいでしょう?甥っ子の首を絞めるなんて酷いことを……」


 酷いことと言いながら平然とした様子で魔法を解く気配のないアリス。


「アリス……!」


 ルビーがアリスに縋り付く。


「ああごめんなさい。あなた自身がやりたいわよね。さあ、どうぞ?殴るなり蹴るなりお好きに」


 水から開放され座り込むトキに光るムチが伸び手足を開いた状態で壁に拘束される。ルビーは近づこうとして気づく。


「…………………………」


「あら失礼。彼は檻の中、私たちは外だったわね」


 アリスは馴れ馴れしくルビーの肩を抱くと消えた。一瞬後に現れたのはもちろんトキの真ん前、檻の中だ。


「さあお好きに。あ!これ使う?」


 肩を組んだまま、もう片方の手から現れたのはどこから取り出したのか箒だった。


「…………………………」


 なぜこのチョイスと思わなくもないが、どうせ彼女のことだからウケ狙いだろう。


「心が汚いから掃除してきれいにしなくちゃ」


「……それならモップとかブラシの方がいいんじゃない?」


「変更可能よ」


 バチコンとウインクされ思わず笑ってしまう。


「結構よ」


 思いっきりトキの頭上に振り上げる


 そして振り下ろす。




 


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