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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ


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102/186

102. 母の愛

 騒動から3日後ーーーーー


「それでは第四王子ブランク様の先日の魔物……もどき騒動の処遇について話し合いを始めたいと思います」


 そう告げるのは法務大臣だ。彼は自分で言ってて虚しい。魔物もどきってなんだ。なんか格好がつかない。ちなみにこの場にいるのは騒動を引き起こしたブランク、王族一同と主要役職につく者、いわゆる大臣だ。


 大臣が揃うと飛び交う飛び交う主張の嵐。


「処刑以外の選択肢があるわけない!」


「反逆罪……、脅迫罪ですかな?どちらにしても王様を意のままに操ろうなどと、あってはならぬことです!処刑に致しましょう!」


「本来ならば民衆の前で公開処刑ですが。あまりにもお粗末な展開でしたからな。王子の醜態など王家にとって恥でしかありません。そんなことを民の前でおおっ広げには言えないことを考慮して賜薬が妥当でしょうな」


 主に上がるは処刑という選択ばかり。ブランクは身体の震えが止まらない。こんなことになるとは思わなかった。そんなに悪いことだったのだろうか……確かに魔物を利用しようとしたのはいけなかったかもしれない。


 でも別にルビーを貴族籍に戻して自分が彼女と結婚しようと、住まいを変えようと、自分に服従する使用人を雇おうと、国に何かいけないことがあるのか?


 兄たちだって好きな相手(ブランクにはそう見える)と結婚、婚約しているし、そのうち皇太子以外は爵位を得て王宮から出ることになるはず。自分だって王子なのだ。なぜそれを求めてはいけないのか。


 貴族の子息子女だって父親より力を持てば言うことを聞かせられるし、婚姻相手も自由に選べるだろう。実際に親の弱みを握って好いた相手と婚約、結婚した者を何人も知っている。自分は力を手に入れたのだ。それを利用して何がいけなかったのだろうか。まあ結局は力など手に入れていなかったわけではあるが……。


 そんな思いが駆け巡る。だが、一方でここまできてやっと自分のしたことがヤバイことだと理解しつつあった。これだけ皆の口から処刑という言葉が出てくるのだから皆がそう思うことをやってしまったのだ。


 恐怖が募る。心から反省したわけでも、自分がいけなかったと思っているわけでもない。だが、皆がそう言うのだから自分が引き起こした事態は処刑にあたるものだという認識はできた。


 震えが止まらない。


 処刑。


 処刑……。


 処刑…………。


「陛下はどう思われますか?」


 一人の大臣が問うた。王がゆっくりと口を開く。


「ブランクがしたことは非常に愚かで、結末はどうあれそもそもやった事自体が許されるべきではない。実際に魔物ではなかったがあれが本物だった場合、多くの死傷者が出ていたかもしれない。奴等を制御できる保証などなかったはずだ。それに王に力を以ってして何かをねだるは謀反と捉えられても致し方ないだろう。…………王妃。そなたはどう思う?」


 王妃の顔にいつものような穏やかな笑みはない。威厳に満ちた……冷たい顔だった。


「ブランクは陛下の血を引く王子にございます。彼に何か処罰を下すは苦渋の決断にございましょう。陛下が苦悩されながらもされる決断を私は尊重したく思います」


 王は王子たちにも視線を向けた。無言で頷く3人の王子。その顔は悲しみも、同情もない。ブランクの顔が蒼白になる。


「お待ち下さい!」


 声を上げたのはザラだった。彼女の顔はブランク以上の蒼白になっており身体は震えていた。場がざわつく。当然だ。彼女が公の場で物申すことなど今までなかったのだから。


「どうか!どうか……!命だけはお助け頂けないでしょうか!?この子がこのような愚かなことをしたのは私の教育が至らなかったせいにございます!私が代わりに処罰を受けます!ですから命だけは……!」


 母親の悲痛な叫びに僅かに王妃の目が揺れた。


「命だけは助ける……か。そなたは流刑を望むか?」


 頷くザラ。


「だがな……」


「陛下」


 先程よりも更に大きなざわめきが起きる。あの大人しいザラが王の言葉を遮った、と。


「我が家がどれだけ王家に支援をしてきたか、貢献してきたかお忘れですか?今後のことはお考えですか?」


 まっすぐに王を見据えるザラ。ザラは必死だった


「わかっている。忘れてもいない。だが、どれだけ貢献した家の者でも謀反は許されぬ。それに今後……恐らくそなたの実家は傾いていくだろう」


 このような事態を引き起こした王子の母の実家が傾かないわけがないと王は思う。


「そのようなことでは傾きませぬ。我が家が営む商会はこの国だけを相手にしているわけではありません。それに孫の所業がなんでしょう。我が父はブランクの処罰を利用して同情や憐れみを利用し更なる発展をさせるでしょう」


 場が沈黙で満ちる。それは……なんか良いのだろうか?


 パチパチと手を叩く音がした。


 皆が音の発生源ーーーアリスを見た。


「見事です、お義母様。自分のもつ力、強みを利用した振る舞い。ブランク様もお母様を見習いませ。あなた様よりも余程格好いいですよ。それにいつもは大人しいお義母様の子供を守らんとするそのお姿とても素敵ですわ。思わず応援したくなってしまいます」


「アリス……そなたも流刑を望むか?ブランクはそなたの夫であるが単身でやったことはわかっておる。奴がどんな処罰を受けようとそなたに害が及ぶことはないぞ」


 まあ色々と思うところはあるが諸々の事情や活躍もあり、アリスに害を与えぬ方が良いのは満場一致の意見である。


「いいえ」


「いいえ?では処刑を望んでいるのか?」


 ザラの顔に緊張が走る。どういうことだ。アリスは命は助けると約束したのに…………。




「あれだけたくさんの人に迷惑をかけたのです。無罪……とは言いませんが、謹慎といったところでしょうか」


「「「!!!」」」


 その場の皆が驚愕の表情になる。




「なぜそのようなお顔をなさるのかしら?当然でしょう?」



 なんでそんなこともわからないの?とでも言いたげに挑発的な視線を皆に向けるアリス。その表情は冷たく嘲笑っていた。




 


 

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