第42話 徳川小督(解説編)
最終部が近づくにつれて、鷹司(上里)美子の宿敵(?)になってしまった小督の解説編です。
本編で描けなかった一部を補足しよう、とまとめ編では筆が思い切り奔ってしまいました。
尚、小督の名前ですが、江となっている資料が多いようで、小説等でもそう描かれることが多いです。
正直に言って、この辺りについて、私もどう名前を描くか、少なからず悩んだのですが。
一文字の名に違和感を覚えたことから、最終的に小督にすることにしました。
そして、史実を適宜、参考にしつつ、この世界の小督の生涯を描いていくことになりましたが、私なりに考える程、最終部が近づくにつれ、小督が歪むというか、いわゆる毒母になっていくことに。
この世界の小督ですが、史実と異なり、浅井長政夫妻の三女として産まれた後は幸せに育ち、この世界の最先進国と言える日本に留学までした末に、北米共和国大統領の徳川家康の嫡長子になる秀忠と結婚することになります。
更にローマ帝国皇帝の義理の姪にも、小督はなったのです。
この辺り、一次史料ではそんな記載はなく、極めて信憑性が低いとされていることではありますが、世間一般では、小督は極めて嫉妬深く、秀忠の庶子になる正之を迫害した上に、忠長を偏愛したとされていることも考えあわせたことから、この世界の小督は、そういった性格がより強くなっているとして描くのが相当かな、と考えた次第です。
そうしたことから、次女の千江の事実上の恋敵になってしまったこの世界の鷹司(上里)美子に対して、小督は警戒心をむき出しにして、更に疑惑の目で眺めることに。
(更に言えば、美子にしてみれば、全くそんな意図はなく、後水尾天皇陛下が自らの想いを結果的に叶えることになったという事情が)
何しろ、小督にしてみれば、夫の浮気相手の子になる正之を引き取ったのは広橋愛とはいえ、事実上は上里清の家といっても過言では無いのです。
そして、鷹司(上里)美子は上里清と広橋愛の実子である以上、尚更に癇に障る存在です。
更に鷹司(上里)美子は、自らの長女の九条完子とは学習院の初等部入学以来の同級生の親友で、次女の千江皇后陛下からも結果的に「お姉様」と慕われた末に、最終的には千江の夫の後水尾天皇陛下の中宮として入内して、皇太子殿下等を産むことに。
そして、広橋愛の養子になった正之が優秀な人材であることを示していて、徳川家と縁の深い面々が、徳川家の後継者は、その才能から正之にすべきでは、という声を内々に挙げていては。
小督が、自分の子どもの家光や忠長に対して、
「正妻の私の子である以上、妾の子になる正之に負けるな」
と猛烈な教育ママ、毒母にならない方が、私はおかしい気がしてならなくなりました。
そして、史実から類推して、更にこの世界なりの流れを考えれば。
九条完子や千江皇后陛下は、鷹司(上里)美子に味方して、母の小督を疎んじる気がします。
又、家光からすれば、母の期待が弟に向いていることを却って勿怪の幸いとして、陸軍の軍人として栄達を図ろうとするならば。
鷹司孝子は、そう言った点でも極めて魅力的な女性になります。
何しろ鷹司家という、日本の五摂家の一角を占める令嬢ではありますが、その血脈はというと。
孝子自身が、ローマ帝国の陸軍参謀総長を務めた佐々成政の外孫になります。
(孝子の実母は、鷹司信尚と同じで佐々成政の娘なのです)
又、鷹司(上里)美子の実父の上里清は言うまでもなく陸軍大将にまで栄達しています。
そして、この世界では家光は孝子と紆余曲折あるものの暖かな家庭を築きます。
一方、忠長は史実に准じて、過度な両親、特に母親の期待に潰されるという運命を迎えることになりました。
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