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第68話 モフモフ天国実施計画

「ほう、興味深い話ですね。諸君は獣人どもがどこからかは知らないが食糧を手に入れているというわけですね」


「はっ、偵察に出た者からそう報告は聞いています」


 眠たそうに青年は椅子の上に座って、ガラスで作ったコップで果汁を嗜みながら部下たちからの報告を聞いていた。



「なるほど。出所不明ですか、それは詳しく調べることが必要ですね」


「で、いかがなさいますか?」


 部下の質問に青年は首を少しだけ傾げて見せる。



「いかがなさるとは?」


「税という名目でいつものように取り上げに行きますか?」


 その進言に青年は一度だけ首を左右に振り、拒否する意思を部下に示す。



「いや、泳がせてみせるのもいいでしょう。それより食糧はどこから来たのかを調べてほしい。といってもこの界隈じゃ都市ゼノスしか考えられないでしょうけどね」


「では、エッシーピを使いましょうか?」


 それを聞いた青年が瞬時に見せる冷たい目線と笑みに、提言した部下の男は背筋が凍る思いになってそれ以上のことは言えなくなっている。



手に取っているグラスのコップに目をやり、グラスをテーブルに置いてから青年は部下に指示を出した。



「あれはもうだめでしょうね、どうも都市ゼノスで身動きが取れないと聞いています。あなた達が直接調べて来なさい、だれがゼノスで大量に食糧を買い付けたことを」


「ははっ!」


 青年は軽く右手をあげて、無言で部下たちに下がるように手のひらを振るジェスチャーをしたので、それを見た部下の男たちは扉から退室しようとした。



「獣人どもの偵察は続けなさい。きっと怪しい人が出てくるはずです、そいつのことを知りたいですね」


「わかりました」


 部下たちが部屋から消えるとと青年は顔をゆがませてから不愉快そうな顔を作り出している。




「気分悪いなあ、獣人は獣人らしくおれに従えて生きればいいものを。まあいい、足掻くと言うなら徹底的に絶望を与えるよ。今しばらく夢を見て楽しく生きるといい」


 ひとしきり罵ってから眠たそうな青年は椅子に身を預けて、ひと眠りをしようとその瞼を閉じていく。






 セイの突き刺すような視線を無視しながら背中の冷や汗を流し続ける。モフモフ天国へ辿るための第一弾、獣人による団結をピキシー村長さんにお願いすることにしていたので、彼とエティリアが出発する陽の日の朝だ。



「護衛役はセイとレイにお願いするよ、ピキシー村長さんとエティを獣人族の長たちに無事で合わせて、話をまとめてきてほしい」


「...アキラ、レイ任せるといい...」


「……わかったわ」


 本当はアラリアの森への遠征に白豹たちも同行させたかったがピキシー村長さんは獣人族を纏め上げるのに不可欠の人材だ、命を大切にしてもらわないと計画の進行に困る。



「あなた、無理はダメだもん……」


 ともに一夜を過ごしてからエティリアはおれのことをあなたと呼ぶようになっている。今はその両手でおれの腰に回してから頭を胸にうずめてくる。彼女の髪のいい香りが鼻について、おれは何も考えないで彼女の髪に沿えるように手のひらを当てる。



「大丈夫。ニールもついて来るし、いざとなればちゃんと逃げて帰って来るから」


 こういうときは嘘でもいいので彼女を安心させることが大切であることは昔の恋の経験で学習済みだ。


 これからおれとニールはアラリアの森に遠征するので、兎人族でゾシスリアを初め将来有望な若者を数人か連れて行き、この若者たちを鍛える目的も兼ねている。




 話はエティリアとの一夜を明けて、ピキシー村長さんの家へ仲良く手を絡ませながら歩いて行くところからである。



「エティ姉!」


 あ、お姉さんっ子(セイ)が大声を上げながらこっちに走り寄って来る。その後ろでレイは必死に追いかけていて、さらにその後方をエイさんが付いてきているみたいだ。



 セイがおれたちに追いつくとエティリアを引っ張ろうとしたがエティリアはおれの腕にしがみ付いてきて、セイとは距離を開けてしまっている。



「……エティ姉、アキラっちと本当の番になったの?」


「うん」


 エティリアの答えを聞くとセイはおれに向かって気勢を上げようとしたが、こいつ、おれとエティリアのことを許したじゃなかったけ?



 とにかく今は彼女の頭にチョップを叩き込むことにした。



「いたっ!」


「セイだってわかっているはずだ。気持ちが通じ合った男女の仲を邪魔するんじゃありません!」


「あんたに……あんたなんかに……うううっ」


 おれの言葉を聞いたセイは目に今までない光を湛えて、ついには子供のように泣き出してしまった。



「うわーーん……エティ姉が本当に取られたあ……うわーーん」


 おいおい、取り返すつもりでもあったと言いたいのかこのシスコンが。



 泣き止まらないセイを慰めるためにエティリアはおれから離れて、セイの身体を軽く抱きしめる。



「あたいは誰にもとられてないもん。今でもセイのお姉ちゃんだもん」


「お姉ちゃーん……うわーーん」


 仲良きことは美しき事哉、うんうん。温かい気持ちでセイを見守るレイとエイさん、ここにいるみんなは子供のように号泣する美人さん(セイ)に視線をやるだけで二人に近付こうとしなかった。



「お姉ちゃんを泣かせたら本当に許さないわよ」


 照れ臭そうにセイはおれの顔を見ようとしないで吐き捨てるように言いつけた。その横でエティリアはおかしそうに笑っていて、レイはそんなセイの手を握りしめてから彼女に寄り添うように立っている。



「娘が泣くのを見るのは久しぶりだ!」


 エイさんが感慨深そうに呟いているので、それを聞いたセイが自分の親の脛にケリを入れた。痛そうにしているエイさんは顔に笑みを同時に浮かばせている。



 さあて。こんな寸劇は和やかで気持ちを穏やかにさせてくれるが今日はピキシー村長さんに大事な打ち合わせがあるんだ、ニールとゾシスリアは先に行っているからおれたちも向かうとしようかな。




「それでは第一回モフモフ作戦会議を行いたいと思います」


「そのもふもふというのはなんのことかな?」


 おれの発言にピキシー村長さんがまずは知らない名詞について問い合わせてきた。オッホン、質問ある場合は手を上げるように。



「んなの聞かんでいい。どうせしょうもねえことだから」


 モフモフについて熱く語ろうとする矢先にニールのやつがおれの出鼻をくじいてくる。この野郎、モフモフのすばらしさを語らせろや。



「……わかった」


 なぜかピキシー村長さんはニールのやつに逆らおうとしない。ニールのほうもピキシー村長さんが引き下がるのを見届けると椅子にどっかりと身を預けるように座り直した。



 別に今日で言いたいことはモフモフについてじゃないから、おれは当初の目的である獣人移住計画について説明することにした。



「それでは改めまして、そうやってアラリアの森へ移住を行うのかを説明するので、質問がある場合は説明が終わってからでお願いします」


 一同が頷くのを見てからおれは自分が考えたザル計画を語り出した。



「この計画には三つの阻害があるので順に追って説明していきます」


 みんなが真剣な目でおれのほうを注視している。約一名の予測妨害者は先に渡したチョコレートと炭酸飲料水に夢中になっているから会議は進めやすそうだ。



「その一、それは森の主地竜ペシティグムスの阻害を排除すること。それはおれとニールに一任させてもらおう。森に入っていくに当たって、今後のことを考慮すると村からゾシスリアと数名の鍛えられそうな若者を預けてほしい。大先生ニールさんが強くしてくれるそうだから」


 ピキシー村長さんにエイさんがなにか言いたそうな顔をしているがおれが質問は説明の後と言っていたので、それを守ってくれようとしている。うむ、話がはかどりそうだ。



「兎人の若者を預かるのはほかにも目的がある。おれとニールだけで森に入ると森の民エルフたちが妨害してきそうなので、付き合いのあるあんたたち村人が同行していればすくなくても直ちに交戦状態にはならないとおれは思っている」


「...レイ同行する。同胞説明できる...」


「ありがたい申し入れだがレイさんには大切な役割があるのでそれは遠慮しよう」


「...レイ、アキラ様振られる。悲しい...」


 本当に涙を出しそうなエルフ様におれはハンカチを出しそうになったがここはグッと堪えることに成功する。やばい。エルフスキーの病気が治りそうにないや。



「オッホン! 話を続ける。兎人の若者たちには地竜ペシティグムスとの接触はやらせないから安心して。やつと対峙するのはおれとニールだ」


「……俺だろうが」


 だらしなく座っている自由な銀龍め。口を挟んでくるな、お前はチョコを食っとけよ。あ、もうすぐ無くなりそうだからお代わりは出しておこうと。



「なんらかの成果は出して見せるつもり。地竜ペシティグムスはおれたちに任せろ」


 必ずしも納得しているわけではないが、みんなが黙っておれを見ているので次の説明に移りたいと思います。



「その二、それは開墾する人数と食糧に道具だ。食糧と道具はおれに任せてほしいが、獣人の団結がなければこの話は成り立たないので、ピキシー村長さんにお願いしたいと考えている」


「ワタシですか?」


 自分の名前が出されて、さすがに耐えることができなかったのか、ピキシー村長さんは声を上げてしまっている。



「ああ、これは獣人で村の長のあんたじゃないとできない。献上品というわけじゃないが、エティには同行してもらい、食糧を各獣人族の村で使い果たしてほしい。ピキシー村長さんは大事な役割を負うので、人族からの妨害を退けるために最強の冒険者である(ツイン)白豹(ホワイトパンサー)に護衛をお願いするから、絶対に守り抜いてくれ」


「この名にかけて心配しないで任せてほしいわ、あんたこそヌシ様にやられて死ぬんじゃないわよ」


「...アキラ心配ない。レイ、エティリア必ず守る...」


 あのね、エルフ様? ピキシー村長さんのことも守ってやってね。



「ワタシはほかの長になんて言えばいいのかな?」


 いくら質問はおあとでと言っても、ここはピキシー村長さんの質問に答えたほうがいいのだろう。



「森に移り住むからマッシャーリア村に集結してほしい。あんたらには悪いがここを足掛かりに開墾団を結成するので、村を砦に作り替えるよ」


「なっ! そんなことはできない。ワタシたちは人族みたいに知識がないから砦を作ることはできない」


「それはおれに任せてもらおうか。土塁に隅櫓、三日月掘に丸馬出し。ふふふ、ここでタケダ流築城術を見せてくれよう!」


 世界を回って、色々な城塞や町村を見てきたが、この世界の城塞概念は射線とか逆襲のための施設とかを考えていない。ただ柵や城壁を出来るだけ高く分厚く積み上げているだけ、それでは敵を有効的に殲滅することはできない。元の世界で城好きでよかった、役に立ちそうではないか! あ、獣人に騎馬兵がいないや。馬出しは意味ないな。



「なにを言っているのがよくわからないけど、考えは持っているということだけは理解しようか」


「うん。ピッキっち、それがいいもん。うちの人が言うことは聞いても意味わかんないから聞くだけ無駄だもん」



 失礼な兎人たちだな。それにエティよ、恋人のおれを理解しようとする気持ちを持とうよ。泣きそうになったじゃないか。そっか、うちの人かあ。デレ!


ありがとうございました。

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