第54話 無法者の親玉は小人
「陰の日にエティの村へ食料品の配給へ向かおう」
倉庫の前ではおれとエティリアに銀龍メリジーことニールが話し合いをしている。エティリアの従姉妹であるゾシスリアに冒険者のモージンとは、護衛の役が終えたということでここ都市ゼノスに残留してもらうことにした。
元々二人はここで冒険者をしている。よく話を聞けば白豹たちに弟子入りしたくてゾシスリアが村から出て、ゼノスでモージンとゼノスで出会い意気投合してペアを組んだらしい。その足でセイに会いに行ったが今はテンクスの町にいると言われて困っていたそうだ。
商人ギルドでなにか仕事をありつけようと出向いたところ、エティリアとゾシスリアが再会を果たして、その依頼で近くの村々でエティリアが食料品を買付けるための護衛を引き受けたと、酒場で食事を取りながらエティリアから説明を受けた。
それならと白豹たちに今までの出来事を伝言として情報を引き渡すことを、おれのほうからということで銀貨10枚を渡して二人に依頼することにした。最初はエティリアとニールから離れることを嫌がっていた二人に銀貨をさらに15枚を上乗せして、金にものを言わせることでリクエストを引き受けさせた。
「ニールお姉さま、またお会いしましょうね!」
「エティお姉ちゃん、村に帰ったらあたいは元気でやっていると伝えてほしいの!」
ニールを抱き着いて離さないモージンにエティリアの両手を自分の両手で握りしめるゾシスリア、おっさんは金だけを出して何もしてもらってない。援交してるのに何もサービスがないまま美人局されている気分。まぁ、れっきとした情報の依頼だけどね。
若い冒険者の二人は活気に溢れるゼノスの街の雑踏に消えていく、こんなに都市ゼノスが賑わうのは初めてだと酒場のマスターが言っていたので、二人にはこのまたとない女神祭を楽しんでほしいと思う。
荒事はおっさんがちゃんと担当するから心配ないよ。
「女神祭の後じゃダメなの? エティはアキラっちと女神祭を回りたいもん」
縋るような眼差しにグラグラと心の防壁が崩壊しそうなおっさん、彼女と楽しみたい思いを我慢しつつ、血が滲むくらいに拳を握りしめると首を左右に振ってみせた。
「ごめんね、女神祭の本祭の間にゼノスから出たほうがいい。その後になってしまうと街から出にくくなるなると思うから」
「そうよね、その後だとみんなもゼノスから出るから混んでしまうもん。村ではみんなも待っているのにあたいはなにを考えているだもん……」
悲しそうなうさぎちゃん。君を困らせるつもりはないのに、悪いのは全てあの商会のおっさんだ。やつなら今が稼ぎ時だからここに留まるだろうが、本祭の後になればきっとちょっかいをかけてくるに違いない。
コノ恨ミ、晴らさでおくべきか!!!
うさぎちゃんと女神祭で思い出作り、キャッキャウフフが消える。あのおっさんをどうしてくれよう!
「ニール、頼みたいことがある」
「なんだ? 俺に何をしてほしいんだ?」
頼もしい助っ人さんは相変わらず立派な胸をおれのほうに張って来る。そうそう、もみもみしたいのでそのままで……って、違ーう!
「陰の日になればエティを守って倉庫の中にいてほしい」
「アキラっちは? また危ないことをエティのためにしちゃうの? あたいは嫌だもん」
おれの頼みにニールよりエティリアのほうが反応した。
勘のいいうさぎちゃんめ。おれの生理現象が隆起しそうなので、胸に抱え込むようにして腕に巻き付くのはやめないでほしいけどヤメなさい。
「あのね、エティ。君はおれのお抱え商人だ、危険から回避させるのもおれのお仕事。聞き分けのいい子だから邪魔はしないでくれる? メっだよ!」
「……うん。アキラっちのいうことは聞くもん。だから危ないことしないでね?」
もう可愛いよ! なにこの子は? 今すぐ食べちゃっていいかな? こんなおっさんのキモい、メっというポーズも気持ち悪がらないで受け入れてくれる。この子のためならおっさんは何だってしちゃうよ。
「今のおれなら最強の竜どもにも負ける気がしないぜ! エティ、おれにもっとパワーをくれ!」
「はーん……来るか? 相手にしてやんぜ! 手加減なしでだ」
ほう、おれの横溢した覇気に反応してか、両目がスーッと細められたて、爪が鋭く飛び出してヤル気になっている彼女。この世界で最強の一角、神話にまつわる伝説の銀龍メリジーだ。
「ごめんなさいです! 調子に乗ってすみませんでした! どうか許してつかさい!」
「己を弁えるとは結構なことだ。ドラゴンにケンカを売ろうなんざ一億歴早えんだてめえはよ」
綺麗に両手をそろえたおれのパーフェクトなジ・ドゲザ。地面に顔を擦り付けるおれの頭を片足で踏みつけている銀龍メリジー。そのシュールな光景で目が点になっているうさぎちゃん。
うむ。人間はやはり謙虚な態度が一番であると、望まずしておれは人生の教訓を復習することができたね。グスン
夕焼け空になってもゼノスの混雑は衰えろどころか、益々盛んに女神祭の本祭に合わせて活況を呈していく。喧噪の街並みの中、幾つもの視線がこの倉庫に向けられていることをおれは察知している。
「ご苦労なことだな、祭りを楽しんでくれたらいいのに」
このバカたちは殺さない、その後を辿ることで大物が出てくるはず。おれの狙いはそいつにあって交渉すること、いずれは去ることになるができるだけうさぎちゃんに守役をつけさせてやりたい。これはおれが彼女のために残す手土産みたいなものだ。
夜の空が待ち遠しい。三つの月はすでに空のほうに掲げるように浮かんでいて、大小の違いはあるがどれも美しく輝いている天体だ。この風景を見れるだけでもおれはこの世界に来てよかったと思っているし、できることならこの美景をだれかと二人っきりでずっと眺めていたい。
倉庫の中では焼き肉パーティで満足するまで肉を食べ続けた満腹な二人が休もうとしている。お客様のお持て成しはおれがするからときつく言い渡しているので出て来ないはずだ。もしも言うこと聞かなくて出てきたらたっぷりとお説教してやるからな。
「こんばんは、祭りが楽しい夜に人気のない倉庫になんの用かな?」
けして大きい声ではないがコソコソしている賊どもを驚かすくらいには大きかったらしい。ご丁寧に燃えそうな薪を抱えて、思った通りこの倉庫に放火しようとしているだろう。
賊どもは薪を捨ててから得物を抜いて、それらはすべてがおれのほうに向けている。
「はっ。眠り込んで死んでいればいいものを、わざわざ……ゴホッ!」
こいつらはおれがいちいちゆっくりと押し問答でも付き合ってやると思っているかな? そんなバカなことはしないよ。手にはとっくに黒竜のガントレットだけを付けているからこれで腹パンをかましてやる。
殴る、ひたすらに腹を殴るだけ。全力だと今のおれは殺しかねないので手加減だけはする。ちゃんとお帰りしてもらわないと後のイベントが続かないからね。
「グエッ!」
「グボッ……おええー……」
食べ物を腹に詰めるから吐くんだよ。戦闘の前に食い過ぎはよくないぜ? お勉強はできましたか?
「ゲボーっ……引け……おええー……引くぞてめえら!」
夜道は暗いから気を付けてね。でも心配ない、あとにつけてちゃんとお家まで送ってあげる。
「た、大将……話が違うぜ、そいつはとんでもないやつだ……ゴハッ!おえええ――」
大将と呼ばれたいかにもごっつい大男にさきの奴らが涙目で訴えている。険しい顔した大男は先まで吐いていた男の腹にケリを一瞬で入れて、さらに胃液を吐き出させてからおれが居る方向を睨んできている。
「使えねえ馬鹿どもめ、尾行されているのがわからんか!」
激痛で転がるケリを入れられた男を小人みたいな人が横で介抱している。大将と呼ばれた男はそれを無視してほかの手下に何かを告げているみたいだ。
「出てきたらどうなんだ? 勇気があるからここに来たんだろうが」
確かにその男の言う通りだ。賊どもの後を追って、街のはずれに大きくてボロい建物まできたが中には十数人しかいない。だけどおれの目は誤魔化せないよ? この付近の草むらに100人以上は草の中や木の後ろに潜んでいることは察知するだけでおれにはバレてるんだ。
「おばんどすぇ、皆様はお集りのようでご機嫌麗しゅうかな?」
「ここにオバハンはいねえよ、ババアに会いたきゃ娼館に行け」
もういけずぅ、だれがババア専だよ。おれの国で夜の挨拶言葉のひとつだ、まったくこの世界の奴らは洒落がわからなくて困っちゃう。
「あいにくと若くて綺麗なオッパイの大きいお姉さんが好みだ、ババアにおれも用はない」
さっと周りに目を通す。普通なら威嚇している大男がボスだとみんなは考えるだろうが、おれには鑑定という人までわかっちゃう便利なスキルがある。おかげでノーム族という妖精にお初にお目にかかることができた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
名前:ペンドル
種族:妖精族ノーム
レベル:39
職業:盗賊
体力:432/432
魔力:1296/1296
筋力:144
知力:???
精神:235
機敏:139
幸運:118
攻撃力:154/(144+10)
物理防御:39/(15+14+10)
魔法防御:0/0
武器:鉄のナイフ(攻撃力+10)
頭部:無し
身体:チュニック(物理防御+15)
腕部:無し
脚部:皮革のブレー(物理防御+14)
足部:皮革のサンダル(物理防御+10)
スキル:???Lv?・????Lv?
????Lv?・???Lv?
???Lv?・??Lv?・??Lv?
????Lv?・????Lv?
ユニークスキル:土遁の術
称号:夜闇の怪盗・無法者の頭目
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
当たりだ、称号の欄で無法者の頭目と出ている。この小人みたいのがこいつらのボスってわけだ。ステータスの強さはおれからすれば大したことはないが、こいつのスキルが全然読めていない。これは早急に鑑定のレベルを上げる必要がある。
妖精の知力については何も言うことはないよ。だから何も聞くなよ?
「女の好みを言いに来ているわけではねえだろうが。ここへ来れる勇気は褒めてやるがそれは無謀とも言うんだぜ?」
大男は背後に控えている男からクレセントアックスを受け取ると頭上でクルッと振り回してからおれに向かってそう言い放つ。小人以外の十数人はそれぞれの武器を手にしておれを取り囲むように集まって来る。
「茶番はやめておこうよ、あんたに用があるんだ」
つまらなさそうにおれは小人の男に話しかける。大男のほうはクレセントアックスで斬りかかろうとしているがククリナイフをそいつの足元に投げつけて、突進の勢いを止めた。
「てめえ、ボスの俺に……」
「いいよ、プーシル。どうもボクのことはこの人にバレているみたいよ」
小人の男は大男にニカッと笑ってからおれのことを上から下までじっくりとなめ尽くすように品定めしている。美女に見られるのは嬉しいが男では鳥肌が立つくらい気持ち悪いとしか思えない。
「おっちゃん、ボクたちに何か用なのかな?」
白々しいセリフだな、手を出してきたのはお前たちのはずだ。
「なぜかか家が燃やされそうになったので、その下手人を付けてきたらここまできた」
「ふーん。燃やされそうになったということはまだあるということだよね? だったらボクたちには用はないはずじゃないかな」
あくまで恍ける気でいるこの小人、自分たちが優位にいると思っているのだろう。普通ならそうであるはずだけど、おれを見下すのは良くない。
「未遂という言葉がある。証拠がなくてもお前らが企んだことは動かない事実であることに変わりはない」
「そうだとしてもおっちゃんには何もできないじゃないかな?」
嘲笑っているように小人の男はニタ付いた笑顔を崩さない。周りの男たちもいやらしくにやけているだけで、こいつらの中ではおれはもう亡き者になっているのだろう。
「そうでもないぜ、やって見なきゃわからないことだってある。そうだろう?妖精」
最後の呟くような一言で小人の顔色がいきなり変わって、魔法陣を呼び出した。だがそれはあらかじめアイコンを用意していたおれの魔法行使に勝ることはない。
「水魔法、中級と」
おれの頭上に水玉が数十個が出現して浮かんでいる。飛び掛かろうとしている男たちの足がそれを見て停止してしまった。小人のほうも魔法を起動させるのを躊躇ってしまっている。
「バカな……魔法陣無しでの大水魔法だと……」
「お話しといこうよ。殺し合うのは決裂してからでも遅くはないと思うけど?」
暫くするとノームの魔法陣は消えて、それに合わせておれも水玉を空へ向かって撃ち放した。自分を濡らすようなマヌケな失敗はこいつらの前では曝け出せない。
ペンドルのスキルです
スキル:土魔法Lv6・魔力操作Lv5
配下指揮Lv5・短剣術Lv6
偽装術Lv5・回避Lv6・夜目Lv4
気配遮断Lv7・気配察知Lv5
ありがとうございました。




