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第46話 精霊魔術師の兼任は拙者でござる

「先の話だけど、おれからは手を出すつもりはないが守りたい人のためにこの世界で暴れてしまうこともあるかもしれないよ? っていうか、もうすでに暴れてますけど」


 精霊王(ようじょ)にはオルトロスのことを伝えた。若干の寂しそうな表情が一瞬だけみせた精霊王はオルトロスの最期を聞いて、望んだことが叶ったねヴァルとだけ呟いた言葉はおれも耳にすることができた。


 いつか、オルトロスと幼女の物語を聞きたいと思ったが、いまは話を済ませて爺さんのところへ行く方法を精霊王から聞き出したい。



『いいのよ、あんたが守るのもあたしにとっては愛し子なのね。それにあんたからは手を出すのは誰かを守るためっていうのなら仕方ないわ。誰にでも大事なものはあるのね』


「心配するなよ、管理神様とも約束はしてるんだ。おれにとって、アルスは第二の故郷だから壊すつもりはないよ」


『それは心配じゃないわ、あんたの力でこのアルス・マーゼが壊せるとは思ってないよ。光魔法の特級が使えてもそれは大地に爪痕すら残すことはないのよ?エデジーなら手のひらで払いのけられるわ』


 そうですか、おれってあなたたち(神クラス)からみるとハナクソですね。チクショー!



『それにね、いくら秘宝殿で取った強い武器でも所詮それは生き物に対しての話。本当にあたしと神龍を傷つけたいなら、あたしらを倒して真の秘宝殿の一番下から神滅の武具を取ってくることね。黒竜のおっちゃんがもっているものでもいいけどね』


「無理無理無理無理無理。あんたらを倒すってどう考えても無理ゲーでしかないし、その前に友達とはやり合いたくない」


 優しいそうに笑う幼女におれは滅竜の槍を取り出して見せた。黒竜のおっちゃんと幼女は言ったが、黒竜が住むダンジョンから取ってきたこれが神滅の武具とはこういうものだろうか。



『こんなの玩具よ、これは黒竜のおっちゃんと会うだけの資格を示すものよ。普通のドラゴンならともかく、エデジーにでもこんなものは通らないわ』


 そうですか、おれの最強の武器がおもちゃ扱いですか。おれ最強とかみっともないことをしなくてよかった。



『ほしかったら来てね? 手加減はしてあげるから。あたしと神龍が守る秘宝殿は主様の最高の傑作なの、この世の最後の挑戦として主様から託されているわ。中にいる守護魔物はみんなが名付きでエデジーと勝負できるくらいの猛者ぞろいよ』


 あの管理神は絶対にラストダンジョンをクリアさせる気なんてないだろう。モンスターと呼ばずに精霊クラスで名ありの守護魔物と称えられるものとは戦うどころか、会う気にすら起こるもしない。もうこの一件は記憶の奥底に封印してしまおう。



 この世には踏み入れてはならない地獄があることだけ、ファージンさんらと再会した時に伝説として語ってあげよう。




「相談したいことがあるだけど」


『なになに? あんたの相談は難しいことばかりから頭が疲れるよね』


 幼女は手のひらをヒラヒラさせて、露骨に賄賂を要求しているようだ。こいつは火事場の泥棒かよと思いつつもチョコレートを袋ごと渡すことにした。



『わかってるわね。相談ってなーに?』


 さっそく貰ったチョコレートの袋を破って、幼女は風の精霊にもチョコレートを配ってから二人で異界の甘味を楽しんでいる。



「爺さんの所へいきたいけど遠いよな。なんとかエデジーさんみたいに早く飛べる方法はないのかな?」


 おれの質問に精霊王はなにかを思い出したような身振りをした。



『あら、そういえばあんたに精霊を付けるのを忘れちゃったわ。早く飛びたいならいい子がいるわ……来て、ローイン』


 世界樹のほうからおれより大きな鳥が音も立てずに精霊王の前に舞い降りてくる、よくみるとそれは鷹によく似ており、全体的に濃い茶色の羽毛を生やし、嘴は大きくて鋭く尖っていて、その胸元には真っ白の三日月の斑紋がとても印象的だ。



『精霊王様、何かの用があってお呼びでござるか』


 鷹の形した精霊はまるで俺がいないように渋い声で精霊王に話しかけた。



『ローイン、この異界の者アキラに付いてあげてね。願い事があれば(ことわり)に沿うかぎり、ちゃんと聞いてあげてよ』


 あ、思いっきり嫌そうな目をしたようだぞ、このゴザル鷹。



『イヤでござるが、精霊王様の言いつけなら従うでござるよ』


 いま、ハッキリと嫌って言ったよな。おれだっていやだよ、精霊といえば美女がいいでござるよ。



『頼んだわ、ちゃんとあたしがチョコレートを食べたいときは連れて来てね』


 このやろ、てめえの欲望を満たすために変な精霊を付けんじゃねえよ。交換を要求する、チェンジだチェンジ。




 ローインと呼ばれる鷹の形した精霊は口から魔石みたいのを吐き出した、汚いなおい。


『人の子よ、その魔晶を取れでござる。拙者を呼びたいときは我が名を呼ぶがいい、精霊王様に仕える風の精霊ローインが貴様の願いをイヤイヤだが、しょうがないから聞き届けてやるでござるよ』


 言いたいことをいうやつだな、この(ローイン)も風の精霊か。何気なくエデジーのほうを見るとなぜか彼女も手に魔晶を持って、それをおれにくれようとしている。思わず精霊王に目で確認して見るが、幼女はひたすらチョコレートを食べているだけ。使えねえ!



『アキラ、これをもらって。なにか用があればあたくしの名を呼ぶがいいわ』


 こまったな。精霊王(ようじょ)に断りもなくエデジー(メガミ)の魔晶をもらっていいかどうかの判断がつかない。そもそも契約をかわすのは鷹の風の精霊じゃなかったっけ。



「ちょ、ちょっと。精霊王よ、部下が勝手なことしているけどいいのか?」


『べつにいいんじゃない?精霊(あの子)たちはだれかに懐くことなんてほとんどないから、だれかと契約したいなら好きにさせているのよ』


 部下に丸投げですね、最悪だよこんな管理職。仕事をしろや!



 エデジーがあまりにもおれのことを見るもので、チラッと精霊王(ようじょ)とローインと呼ばれた風の精霊の様子を見てみたが、二人は雑談していて気にするそぶりすら見せない。それならばと悲しい表情を見せているエデジーが持っている魔晶を受け取ることにした。


 風の精霊(メガミ)がとても喜んでおられるので拗ねるようなそぶりをした(ローイン)のことは気にしないことにする。



『契約者はあくまでローインだけで、エデジーとは友達になってくれるといいわ』


 精霊王(ようじょ)さまのお許しも出たことだし、エデジーとローインの魔晶はアイテムボックスに仕舞っておいた。けれど、よく考えてみるとエデジーってのは女神の代理で、多種族の間では女神扱いだぞ?これでお気軽に呼んだらおれは間違いなく教会から狙われてしまう。そういうわけなので、エデジーを呼ぶのは何か起きない限り極力控えることにしよう。




「それじゃ、爺さんに会ってくるからまた今度ゆっくり来るよ」


 お別れするのは名残惜しいが精霊王(ティターニア)と言葉で戯れるのは今度にしよう。今は神龍(エンシェントドラゴン)におれがこの世界で生きていくことを選んだこと、ちゃんと伝えておかねばならない。


 精霊王と風の精霊は世界樹の下で見送りをしてくれているけど、二人の両手には持ちきれないほどのチョコレートと飴を抱え込んでいる。



『また来てね、ちょこれーと』


『いつでもあたくしを呼ぶといいわ、ちょこれーと』


 アキラです。おれの名はアキラです、断じてチョコレートという甘ったるい名前じゃない。お前らは本当にブレないな、女の人は甘いものが好きなのはわかるがここまでこじれたら異常としか言いようがない。



「来たれ、風鷹(ウィンドウ)精霊(ファルコン)よ!」


 目の前にはやつがいるけどこういうのは手を空にかざしてから格好よく召喚したくなる気分になるじゃん。



『貴様はバカでござるか?それとも人族は総じてバカでござるか?』


 呆れた顔をする風鷹の精霊におれはブチ切れていいのか、それとも自分のアホぶりに泣いていいのかを迷っている。だってさ、せっかくもらった召喚みたいな術を使ってみたくなる世界から来ているので、どうしてもやめられないんだよ。



『ローイン、許してあげなさい。アキラはいい子だけどおツムのほうはちょっと……』


 ちょっとなんだよ! 変なところで切らないでくれるかな? 精霊王(ようじょ)よ。お前に頭が悪いと言われるとな、心のヒットポイントが激減するからやめてくれ。マジ泣きしちゃうぞ。



『ちょこれーと、頑張るのよ。あたくしはちょこれーとがあればいくらでも応援するからね。』


 あのぅ、仮初にも多種族から女神様と言われるお方が、そういうチョロインみたいなことを申すのはやめてください。もう精霊そのものがただのお馬鹿の集まりしか思えなくなるから。



 それに何度も言いたくなるけど、おれの名はチョコレートじゃない!



『おツムの足りぬアキラよ、拙者を呼びつけて何の用でござるか。』


 憐みを込めた視線でおれを可哀そうな生き物ように見る風鷹の精霊(ローイン)、ハッキリ言わしてもらうけど、本日一番ムカついたのはてめえなんだよ。力をお借りしたいからなんも言えないのが情けない。



「アルス連山の神龍のところへ連れて行ってくれ」


『お高い御用だ、拙者に任せれば高くつくでござる。行きたくなったら言ってくれでござる。』


 お高い御用という言葉は初めて聞く、新鮮な造語だぞおい。偉そうにその首を高く掲げる風鷹の精霊(あのやろう)、人が下手に出てりゃ付け上がりやがって! ここで舐められたらこれからずっとこいつの気分次第でおれが振り回されてしまうことになりそう。



「じゃもうあんたはいいや。エデジーさーん、この(ばかやろう)はもう呼ばないから、あなたにお願いできませんでしょうか」


 嬉々と美人の風の精霊は何度も頷いてくれた。見栄えもいいし、なんか仲良くなってくれたし、ハラハラして様子を見ている精霊王(やくたたず)なんてのは無視して風の精霊と空の旅を楽しもうか。



『行くでござるよ!』


 焦った風鷹の精霊(このやろう)は風の精霊と同じように姿を四散してからおれを風で抱え込んで空高く飛び立つ。視野から急速に手を振る精霊王(ようじょ)風の精霊(メガミ)が小さくなって世界樹の下で点となって消えていく。


ありがとうございました。

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