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第4話 やはり異世界は異世界です

 はい、人間発見です。おめでとうございます! この世界は人間が存在していました。




 あれから砂漠を抜け出して、しばらく平野が続いていたが固定したままの草原を歩くのには閉口したね。針の山を行くという感覚で、不壊属性があるから刺さることはないのだが、歩きにくいこの上なしってやつだ。平野のその先に視野いっぱいの森林を見つけたが、それは森林というより古代林という印象を受ける。マッピングするのため、迷わずに森の中へ入った。



 探索していると様々な動物を見かけることができ、それらを見た感想としては見慣れたものが多かった。例えば鹿は3本角だが、四脚歩行で元の世界とそんなに大差はない。狼の集団もそうだが、ゴブリンダンジョンで見たものより一回り小さく、大きさは地球の狼とそんなに変わらない。


 口から突き出した2本の牙をみて、これはオオカミというよりはサーベルオオカミといったほうが適切なのかな。猿みたいな小動物も木の上にいたし、ちょうど木と木の間を移動しているのか、空中で止まったままの絵図となっていた。


 確かにイノシシはファンタジー通りで巨大な身体をしている。5メートルを超えたらそれは生き物というよりおれにはモンスターにしか見えない。森で木に実っているリンゴのような果物を見つけられたけど、実は全体的に違和感を感じずにはいられなかった。



「……ファンタジー通りすぎるんだぞこれ」



 ゲームを切り出したみたいな森の世界がそこにある。これで人類同様の生物、人間を見つけたらそれはまさにファンタジーそのものじゃないか。そんな都合の良すぎることって果たしてあるのだろうか。


 もっとも異世界転移をしているおれはすでにファンタジーそのものなので、深く考えないことにしている。なんだっておれには魔力があるし、能力がステータスという数値で表示されているし。



 砂漠を抜けるほど時間がかかっていないが、それでも異世界の森林は驚異的に大きい。行けども行けども森ばかりで、3メートルはあるトンボや1メートル蚊みたいな昆虫が森の中を飛び回っている。1メートルもある蚊は怖い、どんだけ血を吸われるだろうな。見たところで数が少ないのが動物にとっては救いだろう。もちろん、おれから見ればすべてが停止しているオブジェなんだけど。



 森の中にもダンジョンが存在していて、そこの走破と以前に目論んだ検討事項を含めて、トレンジャーハンターと成るべくダンジョンの最深部まで行った。ここのモンスターはすべがて豚頭の人型モンスターで、いわゆるオークだ。


 最深部の地下50層にはオークキングとオーククィーンが鎮座していた。ボス部屋を全体的にくまなく探したが、ダンジョンコアみたいなものはどこも見当たりません。この世界のダンジョンはどういう風に成り立っているのだろうか。


 去る時にここでもなにかの囁きが聞こえた気がしたが、お宝も頂戴したことだし、さっさと退却することにした。頂いたお宝は中々のものとは思うが、どうせ使えないから全部アイテムボックスへお蔵入りしている。



 やはりというか、検証した結果、ここの宝箱でも一回のみ取ることができ、時間を置いても二度と採ることはできなかった。また、ここもゴブリンダンジョンと同じく黒い霧の集まりが存在していて、ゴブリンダンジョンと同じく下層になればなるほど多く現れている。


 ダンジョンではないが、この世界の至る所にそれは存在し、例えば平野にもそれらは発見することができ、森林も黒い霧の集まりがあって、出現率は平野のそれより多くなっている。ひょっとして黒い霧の集まりはこの世界になんらかの意味をもっているのだろうか? 停止した世界ではその関連性がわかりません。




 その森林を抜け出すとまたもや平野が広がっている。草が深いところでは歩行の苦労をしながらもなんとか渡ることができた。川を見つけたときに水面をを歩いたほうが早かったりするので、特定の目的地がない今はなるべく河川での移動を選んでいる。



 この世界は本当に綺麗なんだよな。草も花も空もすべてが色鮮やかで見たこともないものばかり。川や池は澄んでいて魚影もよく見える。きっと空気もすごくおいしいのだろうが、空気の成分は地球のそれと一緒かどうかは呼吸していないおれでは確認できないけれど。


 遥か遠くのほうで山脈が連ねていて、上へ行けば行くほど白くなっているので、それは雪なのかなと気になったので次の目的地を登山に決めようと思います。




 とにかく気長に旅路を続けたいと考えているから、気を引くものがあればそれはそれで気分次第に行動を変えよう。そうして見つけた動物や植物のオブジェを考察したり、風景を楽しんでいたりしているとそれは唐突に現れたのだ。



「道? なのかな?」



 平野の中で轍のような跡が果て無く伸びている。すでにほとんどのことでは驚かなくなっているつもりなのだが、これは少々心が踊ります。だって、自然的にこういう風に平行した線が自然でできるのだろうか。当面の目標をこの跡を辿ることにしよう。そうすれば答えが見えてくるのだろう。


 轍を辿っていると多分車一台分の幅と思われる、平野のなかで草が生えてない部分がはっきりしてきた。希望は湧き上がるばかりで、ついに道らしいものが見えてきた。これは道という確信がないからあまり期待を高めないで歩き続け、この先で出会うのは人間の村ではなく獣人の村という可能性もある。



 あっ、そっちのほうが興奮するか、フンス!



 そしてついに待ち遠しかったものを目の当たりにする。木の板でできた柵、丸太で組んだ大きな扉。その中には多分木造だが確かに家屋がそこに存在している。たぶんだけどここは村だ。この世界に来てから初めて出会う文明。



 待ってろよ愛する獣人たちよ。モッフモフ、モッフモフ!




 人でした。



 村の入り口に皮の鎧と腰巻、手には安そうな槍を持った人が警備しているように立っているが、あくびしたままで停止している。モフモフじゃないから少しだけ落胆したけれど、それでも心がかなり躍る。もうこの時点でファンタジー決定。これは確定的だ! 反論は許しません。今後はなにがあってもファンタジーの一言で片づけてやる。



 村の衛兵はおれと同じぐらいの身長で顔に目に鼻や口があって、瞳の色はグリーンで顔は全体的に彫が深い。ちゃんと髪の毛もあって栗色だ。手は左右一本ずつで、指も五本である。足も同じだが皮のブーツを履いているから指まで確認はできないが五本だ五本。もうこれは立派な人間、おれと同じ人間なんだ。異世界へ来てから、初めてホッと一息をいれたような気がする。


 停止した衛兵に顔に落書きするいたずらをしたいと遊び心が湧いたが、実際にはなにもできないので諦めました。筆箱からペンを取り出せないし、出せたとしてもペンとしての機能を果たせるとは思えない。


 さて、これから村の探索だ。




 わりと大きな村かもしれない。こじんまりした木造家屋が100軒ぐらいはあるだろうか。石畳を敷いた広場があって、野菜や肉類などの食べ物を商売している露店店舗が結構ある。店に寄って物を買う人、雑談している人、どこかへ向かう人が広場中にいる。その中には腰に武器を携えて鎧を着こんでる男女の集団もあった。冒険者なのだろうか。



 うん、ファンタジーだ。



 大き目な木造建築を見かけたのでそっちのほうへ行った。入り口は読めない文字でなにか書いてあるが、木材で彫ったグラスの看板があったので多分ここは酒場だろう。扉は開いていて中へ入ると人は閑散としているが、テーブルに座ってなにかを飲んでいる様子の粗暴そうな中年男性たちがいる。その横では女の人が飲み物をテーブルに置こうとしていて、ウェイトレスさんだろうか。


 ウェイトレスさんは年齢がいささか歳月を感じさせるけど、服の胸元が開いていて豊満そうな胸を惜しげなく晒している。そこを一人の粗暴そうなおっさんがねちっこい目線で遠慮なく注視していて、なかなかどうして、この安っぽい酒場にらしさを演出させている。いいね、一杯のビールを是非ご相伴にあずかりたい! おれもウェイトレスさんを見ていたい。この世界にビールがあるかどうかはしらないけれど。


 しばらく豊艶な峰へ繋がる深い谷間を堪能させてもらったがやはりなんの生理反応もありません。やばい、枯れたのかな? それとも異世界転移したための影響かな? どっちにしても悲しくなるから違うことに観察しようと思った。食べ物だ、これ大事だね。いそいそとカウンターへ入って、厨房のほうへ足を運んだ。



 厨房の中では石窯があって、その横に薪が置かれている。中を覗いてみるとピザみたいに薄く生地を伸ばした食べ物を焼いているようだ。そのほかに金属製の鋳物もあったので、なにかの煮物料理だろうか。調理台の上で肉の塊やらなにかの野菜が載せられていて、仕込みでもしているような感じである。


 調理しているのは若く線の細い金髪の男性で、あの色っぽいウェイトレスとはどういう関係だろうか。うん、見てみると昔に観光でヨーロッパの古城で厨房のようなもので、なぜかホッとした。ホールのテーブルの料理と同じく、どれも食べられそうで食欲をそそります。



 酒場を出ると村中をブラブラして見回した。村の外れは畑となっていて、何人かが畑仕事をしている、そういえばこの世界の主食はなになのだろう。酒場の厨房ではパンも見かけていたので、小麦かもしれない。もっともいまのおれには関係のないこと。悩むに値しない。


 大きな木を見つけた。結構立派な木で青葉が繁々と太陽の光りを遮ている。


 木の下で若い男女が肩を寄せ合て見つめあっている。リア充爆発しろ! とは思わないけど。



 長い間を一人でこの世界を見ているなのだろうか。なぜかか人恋しい気持ちを持っていない。よく考えてみると、この村を見かけたした時や衛兵を見つけた時は人間を発見する喜びよりもこの世界でも人間がいることに興味を向けていた。



 どちらかというとゲームで新しい種族を入手したようなもので、なぜこんな思考なっているのかがわからない。でも、村があるということは町や都市もあるかもしれないから、冒険する目標がまた増えた。当面は退屈しなくてもよさそうだ、山登りする目標もまた残っている。



 広場へ戻ると石造の建築物が二つ建てられている。多分だけど、なにかの重要な施設かもしれない。ここはテンプレでいくと村長の家か教会かだ。木製の扉が開いているほうへ伺うことにした、ほかの家屋の窓は木で作ったよろい戸だ、外から見ると窓の開口部は小さいけどここだけはガラス板を使用している。



 予想した通りの教会である。そして神々しい女神像が教会の奥のほうで慈しむような表情で微笑んでいる。ゆったりした布を身に着けて、それでいて右手にはハルバートのような槍斧、左手はバックラーみたいな盾を持っている、この女神は戦神だろうか。


 ここはテンプレ通りならこの世界は女神が世界を治めているのか? おれの転移に係わっているのだろうか? ひょっとして何かのヒントになるかもしれないから祈ってみることにした。



「女神様初めまして、異世界より来たカミムラアキラというものです。よろしければ私になにかお告げくださいませ」



 うん、しばらく待ってみたけどリアクションがないね、念話とかを期待してみたがなにも起こりません。そんな都合よく物事って変化しないのね。ここへ来てもきっと世は理不尽だらけだね。グスン


 立ち上がろうとしたときにそれは起こった。なにか温かい力に包まれるような感じだった。この世界に来て、初めておれ以外のなにかが変化を起こしたんだ。



「女神様、今のは女神様のお力ですか? なにか私に伝えたいのですか?」



 再度、ありもしない信心で深くお祈りを捧げる。それは全身を地面に擦り付けるぐらいの五体投地。土下座だけでは到底おれの気持ちが伝わらない。異世界から初めてのサイン、変わることを望むおれはこのチャンスを逃したくない。



 そう思ってたのだが、いくら待てども女神像から再度の反応は起きて来ない。気落ちはしたが仕方がない、収穫がないわけじゃないから今日はここまでとしようか。



「女神様、ありがとうございました。どこかでお会いした時にまたお祈りさせていただきます」


 先の感覚が気になったので長らく見てなかったステータスをみようかとフッと思いついた。



「メニュー」


 そしてステータスのアイコンを押してみる。ビンゴだ! 異世界で自分によらない変化が初めて起こりました。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

名前:カミムラ アキラ

種族:人族

レベル:1

職業:精霊魔術師


体力:30/30

魔力:135/135

筋力:10

知力:25

精神:20

機敏:15

幸運:30

攻撃力:?/(10+?)

物理防御:?/(?+?+?+?+?)

魔法防御:?/(?+?+?+?+?)


武器:異世界の手斧(測定不能・不壊)


頭部:異界のヘルメット(測定不能・不壊)

身体:異界の服(測定不能・不壊)

   異界のTシャツ(測定不能・不壊)

腕部:異界のグローブ(測定不能・不壊)

脚部:異界のズボン(測定不能・不壊)

   異界のトランクス(測定不能・不壊)

足部:異界の靴(測定不能・不壊)

   異界の靴下(測定不能・不壊)


スキル:精霊魔術Lv1

ユニークスキル:住めば都・不壊・不老

称号:迷い込んだ異界人・世界を探求する者

   精霊王の祝福

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 戦の女神じゃなくて精霊王のほうかよ! 予想を斜め上行くとは異世界はなかなかどうして手強い。思い通りにはいかないものさ、えへへ。しかも無職から脱しただけでなく、初のスキルゲットしてその上でユニークスキルまで頂けた、もう精霊王さまさまだね。


 それに不老ってなに? 歳を取らないってこと? これ以上顔が老けないのは嬉しい。



 まさしくファンタジーだ! ここはさっそく精霊術の行使、ファイアっ! あっ、それは魔法のほうか。ちっ。しかもよく見ればスキルの精霊魔術Lv1もアイコン化されていて、表示は灰色となって押すことはできない。



「精霊王様ありがとうございました。この世界を回りますので、どこかでお会いすることをお祈りいたします」



 新たな目標もできたし、村を回ってから出発!


ありがとうございました。

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