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ビッチになった幼馴染との関わり方。  作者: 蓄膿症が再発
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「敬語終了の動き」

 教室に戻って、陸人の席の周辺にある机と椅子を集めて昼食を取った。


「部活あるのに、それだけで足りんの?」

「絶対に足りないな。まぁ、今日は我慢するしかねぇかな」

「二、三時間くらいは部活するんでしょ?」

「まぁそうだけど、一日くらいは大丈夫だって」


 おにぎりや菓子パンを買ったとはいえ、高校生で部活をバリバリにしている陸人からすれば、全然足りないだろうな。


「食堂で食べても良かったかも。俺が、弁当持っていけばいいだけだから」

「いや。人多いし、三年生が席を陣取ってるし、面倒くさいからそこまではいいや」


 早々に食べ終えた陸人は、俺の英語のノートと自分のノートを開いて、予習の完成をするべく手を動かし始めた。

 その様子を横目に、俺は弁当をゆっくりと口に運ぶ。


「あ、また写してる! 昨日、あれだけ言ったのに!」

「やべっ! 見つかった!」


 そこにお昼御飯を食べ終えて、空き時間になった有田さんが近付いて来た。


「いやいや、これでも頑張ったって! 悠太にも凄いって褒められたぞ!」

「本当に〜?」

「本当だって! なぁ、悠太?」

「お、おう」

「ほら、悠太もこう言ってるじゃん」

「悠太、気を遣わなくていいんだよ? 甘やかすとずっとサボってやらないんだから、厳しくしてもらっていいんだからね!」

「いやいや、えっと……。八割ぐらい自力でやってたから、今までのことを考えたらかなり頑張ってきたと思うよ」


 有田さんにそう言われたが、実際のところ陸人は頑張ってきていたので、それを説明する。

 その時に、いつものように敬語が出そうになるが、意識してタメで話してみた。


「へぇ……。って、悠太が私に敬語じゃない!?」


 よっぽど衝撃だったのか、すぐにタメ口である方に反応してきた。


「おー、早速実践したな。いいぞー」

「やっぱり慣れないって、これは……」

「半年以上、敬語だったもんな。いきなり変えたら、違和感もそりゃあるだろうよ」

「何々、どういうことよ? どういう流れでこんな展開になったの!?」

「俺がさっき色々と話したら、そろそろ観念して晴香とタメで話すことを、頑張ることにしてみたらしいぞ」

「え、本当に!?」


 陸人から話を聞いた有田さんが、ここ最近で一番ビックリした様子を見せている。

 一年の頃から、天然なところはあっても芯がしっかりしている性格で、ちょっとのことじゃ戸惑わないイメージなのに、俺のこんな些細なことで大きな衝撃を受けている。


「まだ慣れないけど、ちょっとずつ自然に話せるように頑張ることにしたんで……」

「……どうしよう。ここ最近で一番嬉しいかもしれない!」


 笑みが抑えられないと、言った様子で有田さんが口元に手を抑えている。


「おいおい、彼氏といるより嬉しいイベントなのか? 流石にそれはどうなんだよ!?」

「陸人は大して良い変化ないし。誕生日プレゼントセンス無いし、バカだし」

「あー、その発言ライン超えだわ」


 急に、軽くカップル同士のディスり合いが発生したが、これぐらいのことはよく起きる。


「えー、遂に悠太の敬語の牙城を崩せるとは!」

「俺のおかげだからな!」

「そんなに俺の敬語って、高い壁だったの……?」

「だって悠太って優しくて頭いいし、私達二人の関係を一番理解してくれてんだもん。なのに、距離感がある敬語が、何とももどかしいなってずっと思ってたし!」

「なんかそれを聞くと、今までのことが申し訳なくなってきた……」

「いやいや、責めてるわけじゃないよ? 私達に気を遣ってくれているからこそ、その悠太から敬語無くせるかってなってただけだから!」

「まー、ずっと悠太との距離感を近づけたいって、定期的に言ってたからな」

「遂にその一歩が踏み出せたわけだ!」


 有田さんが過去見ないぐらいに、テンションが上がっている。


「ちなみにその一歩ってことは、まだ次の段階とかあるの?」

「ある。主にあと達成したい項目が今のところ、二つあるよ!」

「二つも!? 陸人は全部知ってるの?」

「いや、全然知らん」

「そういや言ってなかったっけ。いいだろう、ここで全て打ち明けてくれる!」


 テンションがマックスな有田さんが、熱のこもった話を続ける中、陸人はそちらに目を向けることなくノートに予習内容を書き込んでいる。


「一つ! 悠太が私と連絡先を交換しても良いと思えるぐらいの仲になること! 二つ! 私の名前を呼んでくれるくらいの仲になること!」

「ごめんなさい。絶対に無理だ……」


 あまりにも無謀な内容に、すぐに口から自然とノーという言葉が出た。


「はっきり拒絶されたー!?」

「いや、やっと敬語を止めようかってなってる所に、宣言するような内容じゃねぇだろ。悠太またよそよそしくなるぞ」

「ごめんごめん! ちょっと踏み込み過ぎた! だから敬語に戻らないで……」 

「だ、大丈夫」


 慌てる有田さんを戸惑いつつも、宥めた。


「ま、こんな感じで悠太が砕けてくれると、晴香は喜ぶから、徐々に慣れてってくれ」

「お、おう。まさかこんなに喜ばれるとは思わなかったわ」

「そりゃ私にとっても、悠太は大事なんだから! お互いに遠慮のない関係を形成していこうぜ?」

「徐々にそうなっていけるように頑張るということで、よろしく」

「あい! 良く出来ました!」


 黙々と英語の予習を完成させる陸人の隣で、満足そうに有田さんが頷いている。

 まだまだ抵抗はあるが、有田さんも喜んでいるので、何とか慣れていけるようにしていこうと思った。

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