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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第6章 再臨する女神と希望の子

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★エイプリルフール 学園オバスキ

エイプリルフール企画です。

 はっ、とするとクラスに設置されたスピーカーから、授業開始を告げる鐘の音が聞こえてきたところだった。


「え?」


 あれ、どういうことだ? 僕は確か、ブランストーク湖上国の……ええっと、なんだっけ。


「——勉強してきた?」

「——え、今日なんかあったっけ」

「——小テストだろ」

「——げっ」


 そんな声が聞こえてきてドキリとする。

 懐かしい——並んだ机に、制服に、黒板に。

 ここは僕が通っていた教室だった。


「起立——」


 クラス委員の声に従って立ち上がった僕は、機械的に頭を下げ、そして気がつく。


「今日は先週告知したとおり小テストですよー」

「ぶほっ!?」


 教壇にいるの、


「ノンさん!? なにやってんですか!?」


 いつもの修道服ではない、ダークカラーのスーツに身を包んだノンさんは、その、つまり、出るところと引っ込むところがはっきりしていて、はっきり言えば目に毒だった。


「? どうしました、レイジさん」

「あ、え、あ——」


 いや、僕はなにを言ってるんだ。

 ノン先生(・・)は社会科の教師じゃないか。


「すみません……なんでもないです」


 恥ずかしさに顔から汗が噴き出る。おいおいレイジ、ノンちゃん先生が好きすぎだろ〜、みたいな声が掛かって周囲に笑いが起きる。

 僕はいそいそとイスに座り、前から送られてきたプリントを受け取った。

 小テスト。

 そうだ、小テスト。

 なんだかわからないけど僕は小テストを受けるのだ。

 そうしなきゃいけない気がする。

 謎のパワーが働いている気がする。


「ぃよしっ」


 ふふふ。これでも勉強は得意だからね。

 掛かってこい!


『時事問題』


 ……ん?


『安倍晋三首相は歴代最長となる通算3188日の在任期間をもって辞任しましたが、その次を担った首相の名前をフルネームで答えよ』


 んんんん!?

 いやちょっと待って!? なにこれ、僕知らないんだけど!

 ていうか安倍首相が辞任したの!? 次、誰!? ふつうに知りたい!


『猛威を振るっている新型コロナウイルスの——』


 んんんん!? なにその新しい病気!


(あ、ダメだこれ……)


 僕が異世界に行っている間に、日本はずいぶん先へと行ってしまったらしい。


(——だけどね)


 僕は異世界で手に入れたのだ。

 力を。


(僕には【森羅万象】がある!)


 天賦が身体に息づいているのを感じている。

 僕はその力を解放する。


(教えて、【森羅万象】!!)


 紙。植物紙。インク。化学合成による。インクの焼きつけ。油性。植物紙。パルプ原料……。


「…………」


 そうでした。

【森羅万象】さんは、そういう力でした……。

 僕は小テストの時間を、凍りついた彫像のようにして過ごしたのだった。



     ★  保健室  ★



 がららっ、と乱暴に戸を開くのはいつも同じ生徒だった。


「うっす。いるかよ、ミミノォ」

「まーたアンタだべな?」


 白衣の袖を折って、裾は内側に折って縫い付けている保健室の主、ミミノは、小さい身体をイスから器用に下ろして腕組みした。


「ライキラ! またケンカしたべな!?」


 やってきたのはほぼ毎日ここに来ている獣人だった。

 その恵まれた体躯を学校の制服に窮屈そうに押し込んでいる彼は、左腕を見せた。


「おら。ケガしてんだよ」

「なにしてケガしたんだべ」

「こけた」

「はぁ〜〜? 獣人が転んでケガするなんてあり得ないベな」

「そういう人種差別はしちゃいけねーってお勉強しなかったのか? 保健室のセンセ」

「まったく生意気ばっかり言って」


 ぶつぶつ言いながら、治療の準備を始めるミミノを見て、ライキラは小さく笑ってイスに座る。


「そんで、相手はケガさせてないべな?」

「ぶん投げて転がして終わりだ。実力の違いを教えてやった——あっ」

「ほら、やっぱりケンカしたべな!」

「ず、ずりーぞミミノ! 誘導尋問だ!」

「まったく……どうしてケンカばっかりするのかねえ。ほら、傷口出して」

「……おう」


 一本取られて悔しそうながら、ライキラは不承不承左手を出した。

 肘の辺りに擦り傷がある。

 ミミノは薬瓶からガーゼに液体を染みこませる。


「……ちょっと待てミミノ。なんだよその怪しげな緑色の液体は」

「キズグスリダベナ」

「てめっ、また怪しげな薬作ったな!?」


 あわてて腕を引っ込めるライキラ。


「俺で実験すんじゃねーよ!」

「ダイジョブ、ダイジョブ、コワクナイ」

「消毒だけしてくれりゃいいんだっつうの!」

「鮮度が命なんだべな! 今日もライキラが来ると思って作っておいたんだ! これがうまくいけば、民間治療として画期的な……」

「やっぱり実験じゃねーか!?」

「貴重な経験と言って!」

「おまっ……そういうところだぞ。そういうところ直さねーから、いまだに結婚できねーんだよ」

「はぁ!? 結婚してないんであってできないんじゃないですけどぉ!?」


 ぎゃーぎゃーとふたりで言い合う保健室。


「…………」


 外の廊下を通りがかった校長は注意するべきかどうか悩んでから、止めた。


「……元気なのは、いいことだ」


 薄くなってきた前頭部をさすりながら歩いていく。


「たぶん……」


 ダンテス校長の苦労は尽きない。


本日4/1に新作を投稿しました!

「裏庭ダンジョンで年収120億円」

という頭の悪そうなタイトルですが、是非こちらもお楽しみください。ページ下部にリンクがあります↓↓↓↓↓

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新連載『メイドなら当然です。 〜 地味仕事をすべて引き受けていた万能メイドさん、濡れ衣を着せられたので旅に出ることにしました。』
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→書籍紹介ページ

― 新着の感想 ―
[良い点] ヤンキーライキラさん!!!
[一言] ライキラさんが出てきただけで泣ける ミミノさんはライキラさんとは恋仲とかそんな関係じゃなかったとは思うんだけど、失って喧嘩相手がいなくなってちょっと寂しいのかもって考えてしまった そしてレ…
[良い点] ちょっと待って!!!?急登場したライキラが久しぶりすぎて涙が出そう。 [一言] 更新してくださりありがとうございます。三上康明さんの小説に何度も魅了されてます。
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