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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第5章 竜と鬼、贄と咎

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     ★  レフ魔導帝国 レッドゲート最前線  ★




 ノンによって身体を支えられたラルクは、前へ前へと進んでいくダンテスとミミノの背中に叫ぶ。


「無理だ! アンタたちにどうにかなる相手じゃねーよ! 見りゃわかるだろ!?」

「見てわかっています。時間稼ぎ(・・・・)ならできると」

「どうやって——」

「シッ、今は体力を回復させてください」


 ラルクの焦りも理解できる。どう考えたって、あれほどの巨大モンスターを相手に盾ひとつでどうにかなるものではない。ノンだって心配だったが、今自分がなすべきはこの少女を——触れてみて初めてわかる、この少女の細さを——癒すことだ。

【回復魔法】を発動させるが、自分の魔力が入り込んでいく感じがほとんどしない。

 ふつうならば水を撒けば大地が吸い取るように魔力が浸透し、傷を癒し、自然回復力を増大させる。

 だがラルクはどうだろう。まるで踏み固め続けカチカチになった地面に水をまいているかのようだった。


(これほどになるまで、この子は自らを酷使して戦ってきたのですね……!)


 ノンもまたラルクの奮闘振りを知っているが、年齢は見たところ13、4ではないかと思われた。実際は20歳の自分と3つしか違わないとわかれば驚くだろう。

 不摂生な生活と、【影王魔剣術】の行使によりラルクの肉体はさほど成長しなかったのだ。


「——無駄だ。魔法で治るんならとっくに治してる」


 自暴自棄にも聞こえる口調でラルクは言う。


「これを多少なりともどうにかできるのはあの貴族の嬢ちゃんくらいで——」


 言いかけたときだ。

 ガァン、とメイスで大盾を鳴らしたダンテスが叫んだ。


「犬っころ、敵はこちらだぞ!」


 その大音声は離れた場所にいるノンが聞いても耳にうるさいほどだった。モンスターの注意を集めるための発声法で、魔道具によって声を増幅することができる。

 さすがに、終焉牙もダンテスへと視線を向けた。


「ダンテス!」

「なんだ、ミミノ」

「虎は猫の仲間だべな!?」

「……し、知ってるわい、そんなこと」


 すばしっこく駈けて建物の陰に入っていくミミノに負け惜しみを言ったダンテスだったが、のそりのそりと近づいてくる終焉牙へと再度目を向けた。

 終焉牙は、まるでダンテスのことなど相手にしていない。だが先ほどこちらを見た一瞬で、ラルクの姿を見失っており——ノンが移動させたからだ——まずはダンテスを踏み潰そうと決めたようだ。

 だがラルクとの接触で手痛いしっぺ返しを食らったせいもあるだろう、その足取りはどこか慎重だ。


『グルルルルオオオオオオオオオオオ!!』


 咆吼が放たれると衝撃波によって砂塵が舞う。

 ダンテスは大地にしっかりと足を踏みしめ、大盾で音圧を防いだが、それだけでみしみしと盾が軋み、飛んできた小石がぱらぱらと音を立てる。


「……参るぜ、コイツは。誰も勝てねえんじゃねえのか?」


 弱気になる自分を、ぎりぎりで持ちこたえる。


「ビビったら負けだ」


 咆吼が止み、大盾をどけると——そこには、吹き飛ばされなかったダンテスに不愉快そうにしている終焉牙がいた。


「ビビったら……タイミングがずれる」


 大盾を握りしめるダンテスの左腕には、いつもならつけていない見慣れぬ金色の腕輪があった。

 金属製のバングルに、スマートフォンほどの大きさの箱が2つくっついている。表面には様々な回路が浮かび上がっては消えている。

 片側の中央にはボタンらしきものがあり、もう片方には青色にきらめく球形の鉱石が5つ、スロットにはまっていた。


「来いや、犬っころ!」


 先ほど猫だと言われたことも忘れて叫ぶと、終焉牙は軽やかに走り出し、ダンテスへ向けて前脚を振り下ろした。

 ダンテスにはその攻撃の、距離感がつかみにくかった。あまりに巨大なものが迫ってくるのでわかりにくかったのだ。しかも前脚は徐々に加速していった。


「——早く!!」


 ミミノの叫び声が聞こえなければマズかった。


「は、発動!!」


 大盾を構え、ダンテスは腕輪のボタンを押す——そのタイミングはまさに紙一重だった。

 あとコンマ1秒遅ければ、盾などものともせずに切り裂かれ、ダンテスの首が飛んでいただろう。

 ダンテスの身体に這うように薄い魔力膜が出現する。その膜は彼の身体を伝って地面にまで広がっていた。

 膜が張られた直後、終焉牙の爪が大盾に触れる。


「!?」


 次の瞬間に起きたことを目撃したラルクは目を疑った。

 終焉牙の爪が割れ、前脚に展開していた魔力も切り裂かれ、毛皮ごと肉が断たれたのだ。


『ギアアアアアッ!?』


 即座に身を引いた終焉牙の動きは早かった。反射神経だけで動いたと言っていいだろう。


「ふー……うまくいったみてえだな」

「——ダンテス、ぼさっとしたらダメだべな!」

「わ、わかってる。あんまり急でよお」


 ダンテスが展開していた魔力膜は、もはやそこにない。彼が押していたボタンもすでに手が離れている。

 そしてスロットに入っていた青色の鉱石は、1つが黒く焦げて変色しており、2つ目の半分ほどまで変色が進んでいた。


「あ、あれは……?」


 唖然とするラルクに、ノンは【回復魔法】を使いながら答える。


「あれは『英雄武装(ヒロイックギア)』です。私たちが見つけた(・・・・・・・・)、魔道具です」


 実のところ「銀の天秤」は、レフ魔導帝国から出奔したのではなく、帝国内に身を隠していたのだった。

 そして彼らは消失した「英雄武装」をすでに発見していた——自らの潔白を証明するために。


レビューをいただきました。ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここのところグダグダしすぎて、好きだった爽快感も緊迫感も失われてる。
[一言] 展開に文句があるならもう読まなくていいんじゃないかな
[一言] 主人公とちゃんと会話する前に、ラルクが力尽きるパターンでしょうか。 ハーレムヒロインは整理しないと。。。from アーシャ
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