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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第4章 離界盟約《ワールド・アライアンス》

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 敵対している間柄ではあったが、ボロボロの地底人を見て戦いを挑むダークエルフたちではなかった。

 ダークエルフたちは亡くなった仲間たちの弔いに出かけ、やってきた地底人に対応したのは僕とノックさん、それに地底人の百人長だった。一応居場所がないからとキミドリゴルンさんもついてきている。


「ありゃァ……フォレストイーターか!? アンタら、倒したのかよ!?」


 地底人のひとりが驚くと、ノックさんが自慢げに、


「我らが崇拝する指導者が倒したのダ」


 と胸を張った。

 彼らはアーシャの極大魔法が炸裂したところまでは確認し、その後は魔法に吹き飛ばされて見ていない。まあ、僕がしゃしゃり出てもあまり意味がないのでそのままにしている。


「そんなことより、お前らどうしたんだ。まさか……初夏鳥の群れがそっちへ行って被害が?」

「百人長、聞いてくだせェ。確かに鳥公は来ましたが、ほとんど喰われちまったンです」


 彼らが言うにはヒトマネという巨大トカゲが出現し、初夏鳥を食っていたらしい。

 それからサルメという女傑が戦いを挑んだが、ヒトマネを倒すことはできなかった。

 サルメ……確か、調停者を呼び出した人だ。そんな人が自ら戦ったのか? まるで戦えるような感じではなかったけれど。

 いや、それより……。


「サ、サルメ様が……!?」


 それを聞いた途端、百人長はその場に膝から崩れ落ちた。


「あの方が……地底都市をなによりも大事にしてくださった方が、死んだ……」

「百人長、しっかりしてくだせェ……。問題はこっからなんです」

「これ以上の問題があるってェのかよ」

「…………」


 地底人たちは顔を見合わせてから、


「ヒトマネは地底都市に突っ込んできたんです。山が崩れ、都市内の天井も崩落し、元帥閣下は全市民の撤退を命じました」

「元帥が……!? バカな! あそこを失っちゃァ、俺たちは生きていけねェだろ!」

「生き埋めになるよりゃマシなんですよ!」


 地底人のひとりが吠えるように言ったあと、肩を震わせる。


「ランプが切れて真っ暗闇で……天井が崩落してくるのは恐怖でしたよ……。元帥閣下が決断してくださったおかげで、兵士たちが誘導しながら外へ逃がすことができました……」

「……そう、だったのか」

「まとまっていることはできねェので、3つの集団に分かれました。ですが、食料は1日2日で尽きやす。なんとしてでも地底都市に戻って食料は取ってこねェと」

「ヒトマネは?」

「山の周辺にいるようです。だもんで、地理に明るく勇敢な人が必要ってことで……元帥閣下は百人長をなんとしてでも連れてきてくれと」

「俺を?」

「『サルメ様の思いをいちばん深く知っている百人長が、今は必要だ』と、必ず伝えてくれと言われまして」

「————」


 ぽかん、とした百人長だったが、複雑そうな顔で、


「……そうか、元帥はあの方と俺のことを知ったのか……」


 とつぶやいた。


「百人長」


 地底人たちに詰め寄られ、百人長は腕組みしてしばらく悩んでから、


「なァ……あんたノックって言ったっけな」

「そうダ」


 すると百人長は地面に手をつくと額をこすりつけた。


「こんなこと頼める義理じゃねェッてことはわかってる! だが、頼む、力を貸してくれねェか!? 地底種族が絶滅しちまう!」


 これには仲間たちもぎょっとしたようだったが、次々に百人長にならって土下座を始めた。


「…………」


 ノックさんはどうしていいかわからない、という視線をこちらに向けてきた。

 ね? 困るよね? いきなり土下座されても。


「——プンタに聞いたぞ。おまえは、プンタが制止するのも構わず初夏鳥の卵を割り、鳥に襲撃されるや我らがダークエルフ集落にそれをなすりつけようとしたのダそうだな」


 やってきたのは族長だった。向こうのほうで、泥だらけのプンタさんがこちらを見ている。

 はっとして顔をあげた百人長は、何事かを口にしかけ、一度口を引き結んでから、


「そのとおり……です……」


 絞り出すように言った。


「我らにこれほどの被害を与えておいて、よくもまあ、手を貸せなどと言えるな?」

「……はい。だけどッ」


 百人長はもう一度額を地面にこすりつける。


「虫のいい頼み事だとはわかってる……俺の命ならッ! どうしてくれても構わねェッ! 八つ裂きにしても、どんなひどい殺され方をしてもッ……! だから、お願いだ、ほんの少しでいい、手を……お願いだ、手を貸してくれェ……」


 ぶるぶると震えながら頼み込む百人長に、族長は——ニヤリと笑った。


「顔を上げよ。お前は地底人の中では多少なりとも立場があるのダろう? 仲間も困惑しているぞ」

「しかし……」

「手は貸す」

「——えっ!?」


 予想外の族長の言葉に、百人長が驚いて身体を起こす。


「プンタから聞いた。お前は、置いていけばいいというのにプンタを叱咤激励し、ここまで連れてきたのダと。卵が割れたことは決定的ダが、プンタが『卵置き場』に入った時点で初夏鳥にマークされていた可能性もある……。お前は、プンタの恩人でもある」

「そ、それは……別に……」

「なにか駆け引きを考えてのことではなかったのダろうな。ニッキを救ったこともダ。人は、極限の状態でその本性が現れる。その点で、お前は完全なる悪人ではない」

「…………」

「それにこれは、私個人の決定ではない。我らが崇拝するハイエルフ様のご指示ダ」


 え、アナスタシアの——と思っていると、


「レイジさん!」


 いつ目覚めたのか、アーシャが走ってきて僕の顔を両手でがしっとつかむ。


「ああ、ああ、本物です、本物のレイジさんです……!」

「い、いひゃいれふ」

「もっ、申し訳ありません!」


 手を離しながら真っ赤になったアーシャは血色がよくなっている。魔力も戻ってきているようだ。


「……えっと、アーシャ。いいの? 地底人を助けるというのは」


 僕がたずねると、アーシャはうなずいた。


「はい。我らエルフ種は地底人の方々に協力をします。その代わり——交換条件がひとつ」


 口を開いたアーシャは、ほんの少しの時間でだいぶ変わったようだった。

 交換条件、と聞いた地底人たちが固まる。


「……これまでの遺恨をすべて水に流し、互いの存在を尊重し、協力し、生きていくこと。守れますか?」


 14歳の少女とは思えない威厳を感じ、僕ですら鳥肌が立つ。

 百人長を始め、地底人たちは目尻に涙を浮かべ、頭を垂れる。


「守ります。必ずそのお約束、守り抜きますッ!!」


 こうしてダークエルフと地底人は、恒久的に互いの種族を敬い、助け合うという盟約(・・)を結んだのだった。

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― 新着の感想 ―
これまた自然な展開とは真逆の無理筋しかない展開ですね・・・・・・ シビアな世界観なのに、優しさと甘さを混同しているどころではなく、道理を超越したママゴト遊びが成立しているので、気持ち悪さしか感じられな…
これって王城にモンスタートレインした挙句レイド戦までさせて戦死者出したのに心根は良いやつなんだろ握手してハイ仲直りみんな友達って言ってるの?いかれてんだろwww こんなお遊戯会で死んだダークエルフマジ…
[一言] 一度口に入れた食物を飲み込むような義務感で不快感に耐えて読んでいましたが、ストーリーが幼稚でついていけません。 231話まで苦行のような時間を過ごしました。 今後あなたの作品を読むことも購…
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