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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第3章 黒き空賊は月下に笑う。赤き魔導は星辰に吠ゆ。

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     ★  「月下美人」  ★



「お頭ァ! なんか崖のほうが明るくなってますぜ!」

「うん? そうか。あんなところにもライトがあるんじゃねえのか——おい、砲弾ってえのはこれでいいのか?」

「そりゃ酒樽です」

「なるほど。……ふうむ、トウキビの酒だな。なかなか寝かしてあってうめえ」

「なに飲んでんすか!?」

「俺にもくだせえ!」

「そういうことじゃねえだろ!?」


 魔導飛行船「月下美人」の砲台では3人の空賊が大騒ぎしていた。

 6門ある砲台を3人ですべて使うのは不可能だったが、「とりあえず最初の総攻撃くらいは派手にやろう」と6門すべてに砲弾を装填していた。

 技術者である1人は操舵室で残りの燃料とにらめっこしながらどうやって帝国の猛追をかわしていくかについて頭を悩ませているはずだ。

 そしてもうひとりの乗客——「お嬢」はまだ、部屋だ。


「っていうか、お頭。俺は話を聞いてもピンと来なかったんですがね、どうしてコイツを盗んだときにゃ逃げ切れたんですかい」

「ああ……この船にゃ『隠密迷彩(ステルス)』っつう魔道具——『英雄武装(ヒロイックギア)』が搭載されてるようでな、そいつを使ってみたと思いねえ。パァッと消えたように見えるってえ寸法よ」

「そんじゃ、また使えばいいんじゃねえですかい?」

「バカ野郎。できるんならしてらあな。燃費が死ぬほど悪くてよ、燃料をバカ食いするもんだから今使ったらほんの数分消えるだろうが、その後は真っ逆さまに地に落ちるぞ」

「ゲッ」


 お頭に話を聞いていた、頭がつるっぱげの空賊が舌を突き出すと、


「お、お頭、崖に光が!」


 もうひとりの出っ歯の空賊が叫ぶ。


「それはさっき聞いたってんだよ。耳にたこができらあな」

「違いますって! 別のとこです!」

「別のライトがあるのか? そりゃ1基見たら30基って言うからなあ」


 するとハゲ空賊が、


「お頭、そりゃあ人類の敵、キッチンを守る母ちゃんの敵の『G』ですぜ」

「ああ、5基(・・)だったか」


 わっはっは、とお頭が笑っていると、


「違いますってえ! 明らかに違う光なんですよお!」


 出っ歯が叫ぶ。


「それが9本! 帝国を囲むように光の柱が!!」



     ★  「畏怖の迷宮」  ★



 一度揺れたと思った迷宮内は静まり返り、測量のために「デスマスクの壁」を測っていた研究員は一度、最奥の小部屋へと戻った。


「まったく、なんでこんな狭い通路を四つん這いでいかなきゃいけないんだろ……」


 ぶつぶつ言いながら小部屋へ戻ると、ちょうど中の研究員たちも「休憩する」と大部屋へ出て行くところだった。


「君、見ていてもいいが勝手に触るのはやめたまえ」

「あっ、はい」


 甲高い声で答えると、誰もいなくなった最奥の部屋を見渡した。


「狭いよなぁ……石板以外には特になにもないし……」


 ふと、石板がちらちらと青白く光ったような気がした。


「…………」


 これでもいっぱしの研究員である。測量をするために研究チームに入ったのではない——測量だって大事な仕事であることはわかっているけれども。


「先輩たちが触ってみて実証検査とかやってたんだから、僕だっていいよね……?」


 ちらちらともう一度石板が青白く光った。これは石板が「そうだね」と言っているかのようにも感じられた。「悪魔のささやき」と言ってもいいし、「人というものは自分の都合のいいように解釈する生き物だ」と言ってもいいだろう。

 研究員は他のみんなが出て行った小さな穴を見やると、


「いよ〜しっ」


 両手を開いて閉じて、グーパーして、ぺろりと舌なめずりして石板に手を伸ばした——ときだった。


《——「憎悪の迷宮」の制御システム解除を確認。「九情の迷宮」は9分の5の過半に達し解除されたため、全体最適の後、「離界壁」の強制開口を執行します——》


 青白い光とともに文字が宙に浮かんだ。それは古語で書かれてあったが研究員にはかろうじて読むことができた。

 地面が揺れ始め、小刻みな振動からすさまじい縦揺れへと変化する。


「いだっ!?」


 尻餅をついた研究員に、


「き、き、君ィ! なにをしたんだね!?」


 這いつくばりながら先輩研究員がやってくる。


「まだ、やってませんでしたよぉ〜!?」


 彼は涙目で叫んだ。



     ★  ムゲ商会  ★



 ミミノ、ノン、ムゲの3人は、解読が終わった文字——レイジが「畏怖の迷宮」の壁画を書き写したらしい内容を見つめていた。

 ミミノは内心驚いていた。

 レイジの知性には目を瞠るところがあると思っていたけれど、まさか一目見ただけの壁画の模写を完成させるとは。


(もしかしてレイジくんは、記憶に関する「天賦」を……?)


 そう考えそうになって、首を横に振る。今はそれよりも、この内容だ。


「ムゲさん、ノン、この内容で間違いないんだべな?」

「ええ。古語に関してはミミノさんのほうが強いでしょう? 私は教会ですこし習ったきりですから」


 ミミノはハーフリングの里で、薬品調合に関する書籍を読むのに必要だからと古語を習っていたために、ムゲよりも古語をよく読めた。ムゲの辞書も助けになった。


 最初の絵は背を向け合うふたりの女性。

『原初、世界は1つであり、2つに分かたれた』


 2つ目の絵は8つの丸が等間隔に並び、それが2セット、16個の丸。

『天賦は2つの世界で1つ、偏ることがあってはならない』


 3つ目の絵は扉を通り抜ける男

『偉大なる魔法使いは、世界を超えた』

 この「偉大なる魔法使い」は「九情の迷宮」を作ったラ=フィーツァのことだと考えられる。


 4つ目の絵は思い悩む男。

『偉大なる魔法使いは、元の世界に戻る方法を考案した』


 5つ目の絵は9つの扉。

『世界の理である数字は「8」。これを超える9の迷宮を造れば世界の理を超えることができるはずだ。「九情の迷宮」は長い年月を掛けて感情のエネルギーを溜め込む』


 6つ目の絵は9つの扉が、開いている。

『「九情の迷宮」の過半を攻略すれば、9つすべての迷宮を解放する。それとともに溜め込んだエネルギーも解放される』


 最後の絵は最初の2人の女性が今度は向き合い、伸ばした手と手が触れ合っていた。

『莫大なエネルギーは、2つの世界をもう一度つなげるだろう』


「2つの世界がつながる……って、レイジくんが前に言ってたな」


 ミミノは、クルヴァーン聖王国で起きた混乱についてレイジからある程度の情報を教わっている。「裏の世界」と呼ばれる場所があり、そこからやってきた「調停者」との戦い、そして「調停者」が召喚したウロボロス——巨大な蛇とはミミノたちも戦った。


「ミミノさん、攻略した迷宮はすでに4つあります。そうなればあと1つで過半数を超えてしまいますよ」

「ちょ、ちょっと待ってください、おふたりさん。もうひとつの世界ってのに心当たりがおありなんで? この国じゃ全然聞いたこともありませんよ!」

「帝国が把握せずにもう1つを攻略してしまったら危険じゃないか? ムゲさん、誰かに報告してきたほうがいいべな」

「そ、それがいいと思います。夜も遅いですが、迷宮管理局の夜番はいるはずです。行ってみましょう」


 ムゲは言って、紙をまとめて立ち上がる。

 がちゃりと家のドアを開けると目の前に大男が立っていた。


「うわあああああ!?」

「ムゲさん!?」

「何者だべな!! ——ってダンテス!」


 そこにいたのは呆然と突っ立っているダンテスだった。


「お、おい、アレを見ろ」


 ダンテスが指差したのは——この建物の上、はるか遠くの上空だった。

 そこにはすでに、9つの光の柱が立っていたのだ。


5基ジョークはたまたまそういう発音だったという感じでひとつ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーは独自性もあって面白いと思います。 [気になる点] まだ160話ですが、「主人公が頑張ったのに結局報われない」という展開が繰り返されるのはストレスが溜まります。 恐らく終盤で解決…
[気になる点] 世界の理が8だから9つ作ったのに、過半数っていう8にも満たない数で目標達成出来るの何なんw
[気になる点] そいつを使ってみたと思いねえ。
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