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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第3章 黒き空賊は月下に笑う。赤き魔導は星辰に吠ゆ。

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前話をスキップした方へのあらすじですが、レオンがトラップに掛かって死亡しました。スライムもいました。


それと「残酷な描写あり」のチェックをONにしました。R15は元々入れていたんですが、忘れてました……わりと序盤から残酷な描写がありましたね。反省。

 重苦しい空気の中、座り込んでいた。

 特にダンテスさんとミミノさんの落ち込み方が重くて、僕はなんて声を掛けていいかわからなかった。

 仕方がなかった。僕らは全力を尽くした。そんなこと——言われるまでもなくわかっているだろう。

 ノンさんは残っていた食器を片づけたりと黙々と作業をしていた。

 ゼリィさんは完全に霧の晴れたこの大広間をあちこち調べて回っている。


「……俺は、レオンが英雄になりたいと思っているのだと……アイツから見たら、俺のほうが英雄気取りだったんだな」


 ぽつりと、ダンテスさんは言った。


「助けてやったのに剣をぶっ刺しやがって……でも、アイツが謝ってくれたら、誠心誠意謝るなら、許してやるかと思ってたんだ……。昨晩な、レオンはもう一度『黄金旅団』に戻ってくれと俺に言ったんだ」


 そうだったのか。てっきり「銀の天秤」に入れてくれ、ということかと思ったのに……自分のところに戻れなんて、ブレないな、レオンは。


「はっきり断ったんだが、あのときからなんだかおかしいとは思ってた。……レオンは、仲間を見捨てた(・・・・)と言っていたが、俺は、もしかしたらレオンは、仲間を殺した(・・・)んじゃねえかと思うんだ……」

「……殺した?」

「あの感情に作用するトラップで、たとえば恐怖のあまり仲間を斬ってしまった……とかな」


 ない、とは言い切れない。

 むしろあり得ると僕も思った。


「だから、レオンはこの壁で……ジャスティンやシンシア、マーフィーの顔を見て……焦った。自分の悪事が、露見したとでも思ったのかもしれん……」


 ノンさんがコップに水を注いでダンテスさんに差し出した。ダンテスさんは黙ってそれを口に含む。すると、


「……わたっ、わたしは、レオンを許せないべな……!」


 しゃっくりをするようにミミノさんが言った。


「絶対、絶対、謝られたって、許したくなかった……! だっ、だけど、どうしてかわからないんだけど、涙が……涙が、出て……」


 鼻をすすって、ぽろぽろと泣き出すミミノさん。手の甲でぬぐってもぬぐってもあふれる涙が止まらない。

 ノンさんが僕を見てうなずいた——慰めろ、ということなんだろうか。こういうとき、どうしたらいいんだろう。

 僕はミミノさんの横に行って、おっかなびっくり頭をなでた。年上の女性にすることじゃない気がしたんだけど、なんだかそれしか思いつかなかったんだ。


「……う、ううぅ、子ども扱いするなぁ!」


 ごめんなさい、と言おうと思ったけれど、それより先にミミノさんは僕の身体に抱きついて声を上げた。


「うわぁぁあああぁぁぁぁ……ぁぁぁあああああ……」


 悲しくて悲しくてしょうがないというようにミミノさんが泣いた。見ればダンテスさんの鼻も赤くなっていた。

 ふたりにとってレオンは、かつての仲間で、今の敵で、生死をともにしたパーティーメンバーで……駈け出しのころにいっしょだったからこそ、彼の死に心が揺さぶられるのだろう。

 少なくとも、こんなところで死んで欲しくないとふたりが思うほどには——レオンの存在は大きかったんだ。

 僕はしばらくの間、ミミノさんの頭をなでていた。

 ミミノさんの気持ちが落ち着くまでは。




「……恥ずかしいところ見せちゃったな」


生活魔法(コンビニエント)】で水を出して、それで顔を洗ったミミノさんがそう言った。目を赤くしてまぶたが腫れぼったいけれど、それくらいで、もう大丈夫だとのことだった。

 ダンテスさんもすでに気持ちを持ち直して、準備運動をしている。


「いえ……それじゃあ、これからどうしましょうか」

「坊ちゃん」


 戻ってきたゼリィさんが「顔」の壁を指差すと——そこに新しく1つの「顔」が浮かび上がっていた。

 近くで確認するまでもない、レオンの「顔」だった。


「…………」


 みんながそれを見上げ、無言だった。


「……僕は、絶対に『畏怖の迷宮』を踏破(クリア)したいと思いました。この悪趣味なダンジョンを乗り越えたいって」

「奇遇だな。俺もだよ」


 ダンテスさんの声は落ち着いていたけれど、闘志を感じさせた。

 そして、まるで僕らの再出発を待っていたかのように「顔」の壁が左右に開いて——通路が、レオンが挟まれた通路が再度現れた。


「……こりゃあ、入ってこいってことか?」

「推測でしかないんですけど、このトラップが最後のトラップなんじゃないでしょうか?」


 レオンはジャガーノートが最後の関門だと思っていたみたいだけど。


「そうかもしれん。だが違うかもしれん」

「ですね。まだ先があると思っておいたほうがいいのかも」

「調べるぞ」


 ダンテスさんが真っ先にそちらへと向かい、僕らはそれに続いた。

 通路内は狭いのでひとりずつ入ることにする。調査は、身体が小さく動きの早い僕が適任だ。

 僕の身体にツタのロープを巻きつけ、


「異常があったらお前の反応を待たずに引っ張るからな」


 とダンテスさんは警戒心たっぷりに言った。

 これは、冗談でも「あっ!」とか言ったらロケットのように引っ張り出されそうだな……。

 ともかく中に入ってみる。

 気味が悪いくらいに中はキレイで、なんの痕跡も残っていなかった。誰かがいた痕跡も。誰かが死んだ痕跡も。誰かの遺物もなにひとつ残っていなかった。

 ダストシュートにいたスライムと同じなんだな……ここで罠に掛かった者を掃除するのが役目なんだ。

 金属や衣服の繊維まですべて溶かしきるにはあまりに短い時間だ。ここで溶かしたと言うより、どこかへ運び去ったんだろう。奥……は突き当たりに壁がある。となると上か?


「どうした、レイジ?」

「……上に穴がありますね。そこにレオンは引っ張り上げられたんじゃないかと」

「…………」


 10メートル以上高いところだ。


「なにか残ったものがないか……」


 言いかけたダンテスさんは、


「いや、いい。あそこまで上がるのは相当の手間だ。ここを切り抜けることに集中しよう」

「……わかりました」


 僕は注意深く奥へと進む。レバーには手を触れないようにして通り過ぎる。かこん、と小さい音が足元で鳴ってギクリとしたけれど、なにも起きなかった。

 ふー……なんだよ、もう。

 そして僕は壁に書かれた文章の前にやってきた。



『後ろのレバーを引き、畏怖を乗り越えればただひとり迷宮の深淵にたどり着く』



 レオンが言ったそのままだった。僕は一度戻って書かれていた内容をみんなに伝えた。

 それから、レバーを引いたあとに突き当たりの壁に通路ができていたことも。

 つまりレバーを引いてトラップを発動させることと、奥へ進む通路を出現させることはセットなんだ。

 僕らが先に進むには、レバーを引くしかない。

 あるいは引き返すか……。でも、ここに至るまでの道はすべて確認済みなんだよな。戻るとなるとレオンと再会した場所まで戻ることになる。


「僕は行くべきだと思います」

「危険だべな」

「あまりに危険だと思います」


 反対はミミノさんとノンさんだ。


「…………」


 ダンテスさんはじっと悩んでいる。


「戻って財宝を手に入れるルートに行きましょう!」


 目を金貨にしているのはゼリィさんだ。

 意見が割れた。


「ダンテスはどう思うべな? これ、行くなら身軽なレイジくんってことになるけど」


 ミミノさんが意見を振ると——ダンテスさんは、ようやく口を開いた。


「……レイジを危険な目に遭わせるわけにはいかない」


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― 新着の感想 ―
脱出後に追悼の盃を掲げるくらいのほうがよかったかなあ 迷宮内なのに士気下げまくってるのおかしいでしょw声出して泣いてるしww 危機管理も切り替えも何もできないの笑うわ全滅したいんかwww
[一言] ダンテス達ももう無理、謝ったら許そうと思うのもレオンが死んで泣くのも意味わからん とっとと死んで一緒に行動しないでほしい
[良い点] 設定は非常に面白く、作者の方は村上春樹さんが好きなんですかね、書き方がなんとなく・・・。 [気になる点] ミミノと主役の考え方が気持ち悪くて仕方ありません。 ミミノが特に気持ち悪くて、悍ま…
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