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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第3章 黒き空賊は月下に笑う。赤き魔導は星辰に吠ゆ。

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23

「行ったぞ、レイジ!」

「はい!」


 ダンテスさんが3体のオートマトンを引きつけようとしたけれど、その横から1体が抜け出してきた。ハリネズミ型のオートマトンは「人形」と言うよりも「戦車」のようだ。

 毛を逆立てて突っ込んで来るそこへ、僕は枝を投げつけ【花魔法】を放つ。「六節木」という変わった名前のこの枝は、成長させると多くのフシを持って伸びていく。

 つまり、車輪に絡ませるのにうってつけと言うわけだ。

 ギギギギギッと車輪を床にこすりつけながらハリネズミは横倒しに倒れると、ごろごろと転がって行き、壁に針が突き刺さって停まる。腹を晒したハリネズミが、虚空へ向けて残りの車輪をカララララと回転させる。無力化一丁上がり。


「ぬおおおおッ!」


 針や突進など大盾で受け止め、かわし、ダンテスさんはハリネズミの鼻っ面にメイスを振り下ろした。多少針に引っかかってもこの凶悪な鉄塊には関係ない。すべてを破壊し、ハリネズミの鼻っ柱をへし折るとやがてオートマトンはその動きを停める。


「これは無理、無理っすよ〜!」

「ゼリィさん、顔を狙って!」

「無理っすわ〜!」


 近距離で戦うにしてもダンテスさんのように重量のある武器を持っていないゼリィさんはひょいひょいとハリネズミから逃げ回っていた。無理無理言いながら余裕はありそうなので放っておいても大丈夫そうだけれど、アレが最後の1匹なので僕は【土魔法】で礫弾を発射するとハリネズミの顔を破壊し、停める。


「ふーっ、終わったか。オートマトンは生き物じゃないからな、なかなか扱いが難しい」


 ダンテスさんが息を吐いた。


「いえ、最初の一撃をダンテスさんが押さえてくれるだけでかなり楽ですよ。観察する余裕ができますし」

「そうか? それならいいが」


 僕らは3度目の「畏怖の迷宮」に取りかかっていた。ダンジョンに入ってからすでに1日が経過しているのだけれど、


「……しかし、敵が多いべな?」


 オートマトンから、原動力となっている魔石を取り外しながらミミノさんが言う。

 戦闘に遭遇するのは1時間に1回ほどだけれど、出現数は1体から5体で、平均すれば3体くらい。「畏怖セヨ」を言ってくるのも紛れているけれど多くは動物型だ。


「モンスターも出現するはずですけど、出てこないですね」

「そうだなぁ。なんだか他の迷宮とは趣が違う感じもするべな」


 僕らが事前に読み込んでいた他の迷宮の資料は、もちろん迷宮の仕様をすべて書いているというわけではないだろうけれど、大がかりな仕掛けやトラップ、オートマトンについては書かれてあっても「畏怖の迷宮」には当てはまらないものが多かった。

 迷宮によって個性が違う(・・・・・)、というのは大いにありそうだ。


「レイジ、全部で何体倒した?」

「そうですね……戦闘回数は11回、合計討伐数は35体になります」


 僕が運転する猫チャンの荷台には、ムゲさんから「是非ともここはむしって(・・・・)きてください!」とお願いされていた、希少な部品が積まれている。魔石、可動部分の魔術、少量使用されている天銀(ミスリル)である。

 オートマトンの表皮をめくると内側にミスリルが含有されている場所がある。それはパッと見ではわからないけれどエンジニアが調べればすぐに判明するし、僕には【森羅万象】があるので見分けがつく。

 ムゲさんがとりあえず売却して得た利益のうち、ほとんどが魔石とミスリルだった。


「……そうか、やはり多いな」


 ダンテスさんはむっつりとして黙り込んだ。

 なにを考えているのか——たぶんだけど、わかる。「黄金旅団」のことだろう。これだけオートマトンとの遭遇頻度が高いとなると、ちりぢりになった彼らが個別で戦って撃破していける数はそう多くない。ポリーナさん救出から丸2日以上経っている今、何人が、レオンさんは、生き残っているのかどうか。


「剥ぎ取り終わったべな、ダンテス」

「わかった。レイジ、魔力はどうだ?」

「問題ありません」

「よし、先へ進もう」


 僕らは通路を進んでいく。小部屋があるとオートマトンが出現する合図と言ってもいいくらいには通路に出てこない。狭ければ狭いで戦い方はあるのだけれど、狭いところに出てこないならそっちのほうがいい。

 次にたどり着いた空間はこれまでとは趣が違った。


「……行き止まり?」


 三方を壁に囲まれた大部屋だった。


「行き止まり、と言えばそうかもしれませんけど……」

「趣味悪いっすねえ」


 のんびりとゼリィさんが言ったほどには、確かに「趣味が悪い」と言えそうな場所ではあった。

 正面に巨大な灰色の顔。右にも顔。左にも顔。3つの顔があった——入口と同じ立体造形となっているのだ。

 顔は相変わらず大きく、見上げるほど。すべて口も瞳も閉じられていたがその造形はヒト種族のそれだった。


「……なにか唇に書いてありますね」


 魔導ランプを掲げたノンさんが言った。近づいていくと——ぬらりとした上唇に文字が刻まれてあった。


『畏れることなく財貨を求める者』


 ただ、それだけだ。


「…………」


 僕らは顔を見合わせる。なんだか意味がわからないが、ポリーナさんが言うには色とりどりの岩石を調べていたら床が抜けたらしいので僕らも不用意には近寄らない。


「……皆さん、とりあえず離れずいっしょに行動するというのはどうでしょうか?」


 ノンさんの提案はすんなりと受け入れられた。

 左右の顔も調べてみると、同じく上唇に文字が書かれてあった。

 右は、


『畏れとともに真実を求める者』


 左は、


『畏れ、生を懇願する者』


 とあった。


「…………」


 僕らは一度部屋の入口まで戻ることにした——ここにはオートマトンも出ず、トラップも、今のところはないようだったからだ。


「最後の分岐はどれくらい戻ることになるんだったか」


 ダンテスさんが言ったので、ノンさんが、


「道は平坦、戦闘込みで歩いて2時間ほどですから、走れば30分も掛からないでしょう。ただ、道がそのままだという保証はありませんわね」


 簡単にマッピングしている紙と、ゼンマイ式の懐中時計を出して言った。ダンジョン攻略に必需品である。ちなみにゼンマイ時計は1日経つと数分くるう程度の精度らしいけれど、それくらいは許容範囲だ。


「わかった。……それじゃ、問題はあの『顔』だな?」

「レイジくん、なんだと思う、あれ」


 ミミノさんに聞かれ、


「唇にだけ濃い魔力が漂ってましたから、あそこに手を触れるとなにかが発動するんだと思います」

「なにか、ってなんだべな」

「口が開いて次の通路が開けるんじゃないですかね」


 それは推測に過ぎなかったけれど、魔力の循環を見るにあの顔は動く(・・・・・・)


「……この迷宮を作ったヤツは頭がイカれてるな」


 ダンテスさんがため息を吐きながら言ったけれど、もちろんそれには大賛成だったし、なんなら最初の迷宮挑戦のときからみんな思っていたことではあった。再認識したに過ぎない。


「どれを選ぶ?」


 そう、問題はそこだ。


「そりゃ金でしょう!」


 いきなりテンションが上がったゼリィさん。


「『畏れ』の単語が気になるベな。それをのぞけば、やっぱり『真実』って言葉に惹かれるなぁ」


 冒険者というよりどっちかというと学者気質のミミノさん。


「危険が少ないところから行くのがよろしいのでは」


 安全第一のノンさん。


「見事に分かれたな。俺の意見はさておき……レイジ、お前は?」

「僕は……」


 多数決になりそうな雰囲気だった。すでに答えた3人と、ダンテスさんが僕を見る。

 少し迷って、答えた。


「左。『畏れ、生を懇願する者』ですかね」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 以前の会話で「攻略課が入っている迷宮ダンジョンには、レフ人の入場が認められているんです。いっしょに入りませんか?」 ムゲさんが、上のように発言していました。 そのため、今回ダンジョン…
[一言] 底意地の悪いトラップ満載で、ダンジョンの醍醐味を感じます
[良い点] ハート機能がないのでここに ♡×10
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