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村人達の雪の芸術祭

少し書き方を変更しましたが、おまけの話みたいなものなので気にしないでください。次回はいつも通りアルフリートです。

 

 ――コリアット村のとある民家


 夫と子供が分厚い革の靴を履き、立ちあがる。


「じゃあ行って来るよ」


「お母さん行ってきまーす!」


「はい、行ってらっしゃい。私はこの編み物が終わったらレーナさんのお宅で共同作業をするから、お昼ご飯はシチューを温めて食べてね」


 子供の元気な様子を見て、室内から送り出す私はニコニコとしながら手を振る。


「はーい!」


「わかったよ、ありがとう」



 私の言葉に元気よく答えた子供は雪の世界へと飛び出し、夫もそれに続く。


 それから扉が閉まります。


 室内では部屋を暖めるための、薪の燃やす音が鳴るのみ。


 私は暖炉に寄ると、薪をより燃えるように調整し、傍に座り込んで編み物を始めます。


「はあー、寒いわ」


 この季節は農作業ができないので、税として衣服や木で作った籠などを納めます。いくつかあるこの中から選びます。


 私達の家では衣服と木の籠を納めることにしました。


 他の家では茶碗やコップや木の彫り物などやっている人もいるみたいですけれど。私の家族にはそんな器用な人はいないので、ごく一般的な作業をしています。


 最近は毎日家族三人でやっていたのですが、今日は雪が積もったのでせっかくという事で子供を遊びに行かせるようにしました。


 本当は皆で行きたかったのですけど、今日は我慢です。


 なぜならば今日はあの日だから。


 実を言うと、今日のノルマはこの日のために終わらせているのです。


 後は連絡が来るまで、編み物でもしておきましょう。


 今日は雪が降ったせいか、朝からツンとした寒さをしていて、手が冷たいです。


 なんとか手がかじかまないようにしながら、火で軽く指を温めながら編み棒を操り服を作り上げていきます。


 さっきまでは子供が雪だ雪だと騒いで賑やかだったために、室内が余計に静かに感じます。


 それから喋る相手もいなく一人黙々と作業をしていると、玄関をリズムよく叩く音が聞こえてきました。


「大丈夫よ」


私が返事をすると、ガラッと扉を開けて親友のリタが入ってくる。


「ハンナ、今日は雪だから寄合は外でやるわよ」


「一体今日は何をするの?」


「今日はね、な、なななな、何と! 氷像を作るのよ!」


 リタの興奮気味の声が聞えます。これはもしかしたらもしかするのでしょうか? 私の中の妄想が広がります。


「もしかして対象は……」


「「シル×アル!」」


「一分待って! すぐに行くわ!」


「早くしなさいよ」


 私はすぐさまに火を消して、服を着て雪の世界へとリタと共に走り出す。


「さあ、絡ませるわよ!」


「どんな風にしようかしら」


「「ぐふふ腐腐」」




 ×      ×      ×




 ――コリアット村にて。


 村では雪が積もったおかげか、たくさんの子供が外へと元気よく走り回っている。


 それにつられて大人の男達も面倒を見るため付き添ってはいるが、その多くは家の中でじっと内職をすることに飽きたのだろう。子供が遊びたがっているからと理由をつけては男達が子供と一緒に逃げるように飛び出す。


 村で雪だるまを作るローランドもその口だ。


「見ろ! ウェスタ! 俺の雪だるまを! 俺のように腹筋がボコボコだろう?」


「ふん、ローランドよ。そんな二頭身しかない物を自慢して何が楽しいのだ? 俺のを見ろ! ちゃんと人型だろうが」


「何だと! ちょっと待ってろ! 今にも俺の肉体そっくりの氷像を作ってやるからな」


「ふん。精々熊か雪男にならんように気を付ける事だな」




 そして背を向け合いながら作る事しばらく。


「出来たぞウェスタ!」


 ローランドが自信満々に見せる。


 それは逆三角形の身体を作り上げており、細かい筋肉に至るまで見事に表現していた。特に腹筋、上腕二頭筋には並々ならぬこだわりが感じられる。


 ここだけを見れば感嘆の一声をかけていいと思ったウェスタだが、


「その下半身はなんだ?」


「ああ? 立派な俺の上半身を支える下半身に決まっているだろうが」


「お前そんな事もわからないのか?」 と言ったローランドの顔を見て、ウェスタは顔に青筋を立てる。


「まさか、熊や雪男の範囲を飛び越えて魔物を作りだすとはな? なんだその不格好の身体は? まるでオークのようだぞ?」


「はあ!? そういうお前のはどうなんだよ?」


 いきりたった様子でローランドが詰め寄る中、ウェスタはふっと鼻を鳴らして自分の氷像を披露する。


「括目せよ! これが美しき俺の肉体美を現した氷像だぁ!」


 両腕を頭の後ろに回して、これ見よがしに胸筋や腹筋を強調させたウェスタの氷像。その完成度は確かに高いのだが、明らかに脱いだ時のウェスタよりも筋肉が割り増しされている。


 それは真っ先にローランドが気付いた事であった。


「ほーう? これがお前だと?」


 目を細めて訝し気な視線を送るローランド。しかしウェスタは何もやましい事は無いとばかりに胸を張る。


「お前の筋肉がこんなにあるわけが無いだろ!」


「おいちょっと何をする気だ……あああああああっ!? 俺の腹筋と胸筋が!?」


 ウェスタが悲鳴を上げて、やめろとばかりに雪を投げつける。


 それをもろに顔面にくらうローランド。


「てめえ、いきなり何しやがる」


「俺の氷像に手を出した報いだな。よかったじゃないかローランド。貴様今の方がいつもの二倍カッコいいぞ? はははははははっ……かぺ!?」


 大口を開けて笑っていたウェスタの口に雪玉が放り込まれる。


「き、さ、まー。やる気か?」


「かかって来いよクソ野郎!」


「捻り潰してやる脳筋野郎!」


 村の道端で激しい雪合戦が始まった。


 それを見ていた他の村人達がなんだなんだと興味を惹かれて集まる。


「おい、エルマン手を貸せ! あのクソ野郎をぶちのめすんだ!」


「え、え? 私ですか?」


「ラルド手を貸せ! あの筋肉達磨に目に物をみせてやるぞ!」


「はっ!? 俺?」


 ローランドとウェスタの応援要請の声を聞き、村人達が「俺達も混ぜろ!」「本気の雪合戦だな!」と次々とやってくる。


 そしてチームは二つへと別れて、コリアット村は戦地になるのであった。





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『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

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