表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/616

シルヴィオ拗ねる

日間ランキング一位になりました!


ありがとうございます!

「さあーて、昼寝昼寝ー」


 今日は気持ちがいいほどのいい天気。木製の窓を空けると気持ちのいい日射しが入ってくるはずだ。


 鼻歌を歌いながら階段を上り、自分の部屋の扉へと手をかける。


 キィッ


「すー……すー……」


 カビ○ンが俺のベッドを塞いでいる。アルフリートはベッドで昼寝をすることができない。


「何で俺のベッドでエリノラ姉さんが寝てるんだ。訳がわからない」


 どーしよかと思って、エリノラ姉さん覗く。すーすーと規則正しい寝息をたてて、眠っている。


 エリノラ姉さんは、弟である俺の目から見ても可愛い顔をしている姉だと思う。最近は可愛さが抜けてきて、ピシッとして凛々しさが出てきた。


 姿勢がいいのは剣をやっているおかげだろうか。


 たまにどっちが年上かわからなくなるほどの、ワガママをぶつけてくることもあるが、構ってほしいが故の行動なのだろう。実際は俺の方が精神的には年上なのだから子供みたいで可愛いものだ。


 さてさて、エリノラ姉さんを起こすための笛なんか持っていない。持っていて起こしたとしても、バトルをしかけられる定め。それは回避しなければならない。


 俺は自分の部屋なのに、手に汗を握られながら考える。


 お姫様だっこ……魔装しなくちゃ持てない。それに絶対起きる。


 自分の部屋に行ってくれないかなー。


 そうだ! エリノラ姉さんの部屋に転移させよう!


 自分でも名案を思いついたが故に頬を緩めてしまう。


 そういや……自分以外の人を転移させるのは初めてだな。フォークカブトはノーカウントだ。あれは昆虫だし。


 失敗して起こられるのも嫌なので、エリノラ姉さんの部屋に徒歩で向かう。


 ちなみに空き部屋と反対側の隣の部屋がシルヴィオ兄さんの部屋で、エリノラ姉さんの部屋はシルヴィオ兄さんの隣だ。


 エリノラ姉さんの部屋に入る。

 何らかの香りつけのものを使うのか、爽やかないい匂いがする。決してキツくはなく、仄かに香る柔らかい匂い。


 少し俺より大きめのベッドに、机や椅子。基本的に俺とシルヴィオ兄さんと変わらない部屋の構成だ。


 ちょっとカーペットが高そう気がする。俺のカーペットよりも断然とクッション性がある。


 後は、服が脱ぎ散らかって地面に落ちていたり、布団の上に下着があること以外は完璧。大丈夫。ポンチョみたいなダサい下着でも、アルフリート気にしないから、見ないふりするから。


 念のために、エリノラ姉さんの部屋のイメージを焼き付けておいて自分の部屋に転移する。


 転移して戻ってきたら起きている。ってこともなく。穏やかな寝顔をして眠っている。


「よーし、じゃあエリノラ姉さん。自分の部屋のベッドに転移させるよー?」


 エリノラ姉さんの肩に手を置いて、いつものように魔力を込める。


「……あん」


 魔力を込めた一瞬にエリノラ姉さんから、普段は聞いたことのない声が一瞬漏れてきた。


 やめてくださいよ。そんな悩ましげな声。


 六才の体なので、特に思うこともなく賢者の心でエリノラ姉さんを即座に転移させる。


 フッと、エリノラ姉さんが一瞬で消える。


 成功したか確認すると、エリノラ姉さんは無事に自分のベッドですやすやと変わらずに寝ている。


 どうやら成功のようだ。


 それにしても、やはり自分以外の人間の転移は魔力をより多く消費するようだ。相手の許可の有無にも関係はあるのかもしれない。今回は睡眠中の意識の無いときに転移させてもらったが、これは魔力の消費量はどうなのか他に前例が無いのでわからない。


 機会があれば、今度は起きている人を転移させてみたいと思う俺だった。




 ーーーーーー



 無事に自分の部屋で昼寝をすると、スッキリしたので、書斎でのんびりと本を読むことにした。


 書斎に入ると先客である、シルヴィオ兄さんがいた。


 しかし、今回は読書をしている訳ではなかった。


「一人で将棋でもしてるの?」


 詰め将棋かな? 渋くね?


「あー、アル。ちょうど良いところに。さっきまで父さんとやっていたんだけど、仕事が入っちゃってね」


「それで将棋が中断されたと」


「そう言うこと。よかったら僕と将棋しないかい? アルは強いんでしょ? リバーシでもいいけど」


「いいよ。ここに将棋があるし、これでいいよ」


 ぱちぱちと駒を並べ直して将棋を始める。


 今、この盤上の駒全て俺の言う通りに動く。その名の通り、俺の駒だ!


 尖兵である歩兵を前へと進ませる。


 ちっ、自分で動かすとカッコ悪いな。将来魔力に反応して動く将棋とか作ってやる。


「成り上がる気かな?」


「歩兵はと になると強いんだよ?」


「確かに厄介だね。だから摘み取らないと」


 出る杭は打たれる。俺の歩兵が無惨に桂馬ことお馬さんに踏み潰される。


「あー! 俺の歩兵! 俺が大事に鍛えた歩兵がシルヴィオ兄さんに寝取られた!」


「アル、どこでそんな言葉覚えてきたんだい?」


 俺の言葉を聞くと、シルヴィオ兄さんは爽やかな顔で苦笑いをする。


 ちくしょう、やっぱイケメンは苦笑いも様になってるな。


 次々と俺の歩兵が桂馬に潰され、奪われていく。戦場を連想させるよ。


 しかし、それは囮! 歩兵で相手の陣地で成り上がると見せかけて、角で桂馬を奪うのが俺の目的!


「桂馬さんもーらいー」


「あ、いつの間にか射程範囲に入ってる」


 シルヴィオ兄さんは、慌てて桂馬を守るように他の駒を盾にさせるが、その隙に俺の飛車が縦横無尽にシルヴィオ兄さんの歩兵を奪い取る。


 略奪だー!歩兵の一兵足りとも逃がすなー!


「おっとと、危ない。そこの歩兵をとったら、そっちの角が出てくるから行かないよー」


「バレた?」


「俺が使った手だもんね」


「その変わりに桂馬は返して貰うよ?」


「あっ」


 俺の桂馬さんがシルヴィオ兄さんの角に

 奪われる。


 俺の足が! 馬が! なんて残酷な世界。奪い奪われていく、また奪い返す。なんて浅ましいこと。まるで人間のよう。


 その後も激しい奪い合い末に俺がシルヴィオ兄さんの王を、追い詰めることで勝利することができた。


「もう一度やる?」


「やだよ、シルヴィオ兄さん強いから疲れた」


「そうか。今回は勝てると思ったんだけどね」


 さすがシルヴィオ兄さん。エリノラ姉さんだったら絶対止めさせてくれないよ。



「アルー? ここにいるの?」


 噂をすればなんとやら、エリノラ姉さんのお出ましだ。


「いるけど何?」


 エリノラ姉さんからの用事は、ろくなことがなかったせいか、思わず身構えてしまう。


「何でそんなにビビってるの? 何もしないわよ」


「う、うん」


「久しぶりにリバーシしましょう! あれからあたし強くなったのよ?」


「えー? エリノラ姉さん何回もやらせてくるからやだー」


「いいじゃない。リベンジさせてよ」


「シルヴィオ兄さんを倒してからにして」


「今はアルの気分なのよ!」


 何やねんそれ? アルコールの気分?


 エリノラ姉さんは机の上にリバーシを広げると、椅子に俺を座らせようとする。


 それを俺は回避して、シルヴィオ兄さんの後ろに隠れる。


「ほら、アルやりましょう?」


「ほら、アル。エリノラ姉さんからご指名だよ?」


「シルヴィオ兄さんは如何ですか?」


「いらないわ」


「……いらない……」


 即答するエリノラ姉さん。ちょっとシルヴィオ兄さんの雰囲気が暗い。


「今なら、銀貨一枚それにリブラも付いてきますよ!」


「それでもいらないわ」


「……エリノラ姉さんひどい」


「……アルもエリノラ姉さんも二人とも酷いよ」


 いかん、シルヴィオ兄さんが小さくなっていく。


「いいからやるわよ」


 エリノラ姉さんがズカズカと俺の所に踏み込んでくる。


「ひっ!シルヴィオバリアー!」


「へ?」


 思わず俺はシルヴィオ兄さんを、処刑台へと送ってしまう。


 あー、ごめんよ! シルヴィオ! そんなつもりは無かったんだ!


 呆然とした表情で無防備な状態で押し出された、シルヴィオ兄さん。


「邪魔よ」


「痛ぃ!」


 しかし、赤子の手を捻るように、いともたやすく弾かれる。


「シルヴィオバリアーが!」


「……シルヴィオバリアーって何……なんなの」


 なすすべもなく、俺は椅子へと座らせられる。対面に位置する、エリノラ姉さんは満面の笑顔だ。


 どんだけ俺のこと好きなの。ブラコン? それとも俺の反応が面白いだけ?


 なんだかんだ、悩みながらも俺はエリノラ姉さんに勝利したせいで、十五回も連続でやらされた。




 そのあとは、シルヴィオ兄さんが拗ねてしまって機嫌をとるのが大変だった。


 シルヴィオバリアは暫く封印かもしれない。





誤字脱字があれば報告をお願いします。


こんな日常のリクエストお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのとした感じで読んでいて癒されます [気になる点] 最近更新されていないようなので残念です
[一言] なかなか酷い技に思えるけど、よくよく思い起こすと悪ふざけなんかで割とよくやったなって
[気になる点] 誤字、「カーペットが高そう気がする」になってます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ