広場にて
今回少し短いです。
その変わり次は増量させます。
ノルド父さんと一旦別れて、俺は広場で売っているものを見に行った。
ファンタジーなこの世界で美味しいもの使えるものを探す。米とかあれば大変すばらしいことなんだけどね。さっき見かけた色鮮やかなキノコは大丈夫なのだろうか?
あとは、食堂に行って一般食も食べてみたい。この世界の一般人はどんな料理を食べているのか。卵を食べるみたいだけど、オムライス、米ないや。だし巻き卵とかあるんじゃないかな? 無かったら専用のフライパンを誰かに作らせないと。
思いっきり和食とか出てたらマジでバルトロ締め上げる。
まずは近くの野菜を並べているお兄さんの所へ向かった。
「お、僕交換かな? それとも買うかい?」
今日の全財産はエルナ母さんに貰った銀貨二枚とバルトロから貰った銅貨十枚である。地方の村では十分すぎる小遣いだ。
「んー、買うよ」
麻の布のようなザラザラした布の上に並べられているのは野菜。
えんどう豆に、ほうれん草に、ニンジン、ジャガイモ、ドライフルーツか。ふむふむいいね。
「お兄さんこれ全部でいくら?」
「お? うちはドライフルーツがこの木の箱一杯で銅貨二枚、えんどう豆は 賊貨五枚 、ほうれん草が一つで 賊貨二枚、ニンジンが二つで 賊貨五枚、ジャガイモが五つで銅貨一枚で、えーと全部でーー」
「銅貨四枚と賊貨二枚だね? 」
「お? おう、多分それくらいだよ。僕、算術が得意なのかい?」
「んー、まあそれなりにはできるかな?」
「その年で算術ができたら、将来は有望そうだね」
微笑みながら、野菜のお兄さんは布に野菜を包んでいく。
「自分で包む物を持ってこないとお金をとられちゃうから、次からは何か入れるものをもっておいでよ。今回はサービスだよ」
「わかった! ありがとう」
お兄さんの野菜と交換で、ポケットから取り出した銅貨四枚、賊貨二枚を渡す。
ちなみにこの世界の貨幣はこんな感じである。
黒金貨一千万円
白金貨百万円
大金貨十万円
金貨一万円
銀貨千円
銅貨百円
賊貨十円
十進法のようだ。昔みたいに二円とか二十円とか二千円とか中途半端な値段の硬貨が無くて良かったよ。増えるとややこしいし。
そして広場から少し離れた所で俺は今買ったものを空間魔法で収納する。
これは空間魔法の一つであって、最近転移以外他にも出来ることはないのか?と考えて試行錯誤してできたものだ。他にも小さい範囲ではあるけど空間を歪ませて物を潰したり、空間を切断したり、少しなら重力をかけることもできる。
この収納の魔法は、亜空間の中で自由に出し入れが可能な能力。
亜空間に入れておくと、時間が存在しない空間らしく食べ物を入れておいたりしても腐ったりしない。これでいつでもどこでも食材を出せるようになった。
商人は喉から手が出るほど欲しい魔法だろうなぁ。
亜空間に入れる時は、空間をゲートみたいなイメージで開いて入れるだけなので簡単なのだが、思い通りに取り出すのが難しい。しっかり入れた物をイメージしないと取り出すことができないので、何を入れたかちゃんと覚えておかないといけない。同じ物が複数ある場合は、一つさえイメージすればどれくらい残っているか把握出来るのが救いだった。
その後も、色々な食べ物や、遊びに使えそうな木材や素材をたくさん買い込んだ。
全部覚えてるかな? 未来の猫型ロボットみたいに物を取り出すのに慌てることがないようにしっかりメモして覚えておかないと。
しばらくすると、ノルド父さんが広場に戻ってきた。
村長との会議は終わったそうだ。
「何をしてたんだい?」
「何が売っているかあちこち見て回ってた。虹色のキノコとかすごく怪しかった。」
「アハハ、あれは大人になればわかるよ」
あ、なるほどそっち系の物でしたか。売っていたお姉さんに聞いても「何だろうね?」とか子供扱いしてはぐらかされたんだよな。
「ノルド父さん、少しご飯食べていこう」
「んー、そうだね。せっかくだし村の料理でも食べていこうか」
ちなみにこの世界、肉体労働がキツい農民なんかはよく間食をしたりして四食とか食べることもあるそうだ。
一回の食事のカロリーが低いからそうなってしまうこともあるそうだけど、貧しい地域では1日栄養の少ない二食で肉体労働をしていて、よく倒れてしまう人もいるらしい。
最近はうちの家族全員が三食食べるようになっている。やっぱり、朝、昼、夜に食べるのがいいんだよ。
絵でスプーンとフォーク、ビールのような絵が描かれている看板の食堂へと入る。
絵は文字が読めなくても、誰にでも情報が伝わるからすごいよね。
「いらっしゃーい!あ、領主様!」
店に入ると、声をかけてくれたのは恰幅のいいエプロンをつけたオバチャン。
「やあ、セリアさん。調子はどうだい?」
「やあねえ、領主様んとこのスパゲッティのお陰で客も増えて大助かりさ。だけど最近塩も減ってきてねー」
あー、少しだけど茹でるのに塩使うしねー。幸いうちの近くの仲のいい村で塩がよくとれるから安くは手に入るけど、もともと塩は高価だからねー。
「んー、それを考えたのはアルだからねー。この子この子」
「この子がアルフリート様かい?」
「そうだよ」
「すごいねー。何か新しい料理はないのかい?」
自分で考えなよ。一応料理人でしょ。でもまあ、親から言われたことや当たり前なことを引き継いでいると自然と頭が固くなって気付かなくなるし、仕方ないのかもしれないね。
例を挙げれば、小学校の頃の出席を取るのに男子から始まって、次女子って言うのに全然疑問を感じなかったよ。後、結婚したら基本男子の姓になるのが当たり前っていう風潮とか。
「うーん、あるにはあるけど道具が無かったり、ソースが無かったりしてねー」
「あるのかい? 道具? 道具ならあたいがローガンに作らせてあげるよ?」
「本当!?」
「任せなよ。あの偏屈オヤジにあたいが言っておくからさ。その変わりあたいに直ぐに教えておくれよ」
「うんわかった!その時応用の考えも教えるね」
商談が終わったらご飯ご飯。
「アルは料理人になりたいの?」
ノルド父さんが苦笑いをしながら俺に尋ねる。
「いや、料理はただの趣味だよ?料理人はバルトロがいるから十分だよ」
「アハハ、そうなんだ……わからない」
結果から言うと和食はなかった。
メニューはスープや、煮物、スパゲッティだった。これは残念。確かに種類が少ないや。増やしてあげないと。
こういう遊び。日常どうよ?みたいな提案があれば参考にするかもしれません。




