四才になりました
暑い夏、寒い冬を乗り越えて春になりました。
ちなみに俺の誕生日は四月七日。
そう、つまり四才だ!ここら辺の年齢は気を使うだけに年をとることによって、自由度が増してくるからいいよね。大人になると年をとるにつれて、憂鬱な気分になるかもしれないけど。
ちなみにエルナ母さんはついに三十歳となった。正直あの見た目じゃ、十八歳って言われても信じてしまうくらい綺麗なんだけど。
ノルド父さんは三十二歳。全く変わっていません。いつも通り。短いんだけど本当なんだもん。何かあったかと言われたら、『魔法学校に通いたいか?』とか言ってきたくらい。勿論断った。なぜにそんなところへ行く必要があるのか。そんなもの馬にでも食わせておけい!俺はまだまだ子供ライフを満喫するんだ。
エリノラ姉さんは十才。最近身長も伸びてきた気がする。あと剣一筋になりすぎて頭が固くなり、頑固になってきたかも。勉強でもしたらどうかな?
シルヴィオ兄さんは七才。相変わらず本を読み、剣術を習う生活を続けている。シルヴィオ兄さんは将来、頭を使う仕事をしたいらしい。内政官とか参謀とかかな?
最近のブームは山菜採りだそうで、夕食によく山菜があがってくる。一度も食べられないものは持ってきていないのがすごい。
俺の変化と言うと身体的には、背が伸びたり、走りやすくなったりしたかな。後は相変わらずに魔力がぐんぐん延び続けていて嬉しい限りだ。多分今はキロ単位での転移もできるはず。そんな遠いところまで行ったことはないのだけれども。その場所をイメージできないと転移できないからね。なので最低一回はめんどくさい遠い王都に行かなければならない。後、魚輸送のために海にも。
さて、話は変わるが今日は何とノルド父さんが村に連れていってくれる。
そうなんだ。川とか平原とかに行って遊んだりはしているけど、村の方へは行ったことがなかった。気になりはしたけど、貴族では子供が四歳になったら、領主である父と領民の村を見回るっていうものがある。だから行かなかった。
ここら辺の領主だけの軽いしきたりみたいなものらしいけどね。
なので今日はノルド父さんと二人で村の見回りだ。
「いってらっしゃーい」
「じゃあ行こっか」
エルナ母さんに見送られて屋敷を出て、村へと通る一本道を使って村に向かう。この道は整備されているので歩きやすいし、広い。馬車が一台は通れる程の道幅は確保してるみたいだ。
ノルド父さんと二人で外出って初めてかもしれない。
今一本道を歩いているけど周囲は山、山、畑、畑。大変すばらしい田舎道だ。たくさんの緑がまるでカーペットのようだ。
歩くとほのかに青々しい草木の匂いや、土のような匂いが仄かにする。そして、呼吸をするたびに綺麗な空気が俺の鼻にスッと入り込んでくる。
美味しい空気だ。これだけでご飯三杯はいけそうだ。米はここには無いけど。
米と言えば、もしかしたら東の大陸にあるかもしれない。『ダンフリーの冒険記』の中にお米があったみたいなことが書かれていた。最もダンフリーはよくわからなかったらしいけど。ダンフリー、君は愚かだよ。すごく愚かだ。なぜなら、君は最大の冒険を放棄してしまったんだよ。お米という冒険を!
「アル、もうすぐ村が見えるよ」
おっと危ない少しトリップしていた。
一番に目についたのは多くの麦畑。
そして目を遠くに向けると、昔の民家のような家がちらほら並んでいる。ここだけに固まっているのではなく、あちこちにも民家が並んでいる。
一体どういう家の建て方してるの?
そんなに人口が多く無いからバラバラに建てているのかな?
「父さんここでは、何を育てているの?」
「麦、大麦、ライ麦、豆、野菜などを育てているよ。後は鶏や羊、牛何かも少しいるよ」
「へー」
「あ! 領主様だ!」
「おー、本当だ」
ノルド父さんから、この村について聞いていると、農作業をしている村の人達が次々と声をかけてくる。
「領主様が教えてくれたスパゲッティとやらのお陰で、皆活気付いてますよ」
「本当だ。女房も美味い美味いってバクバク食べてましたよ」
ガハハッと男二人は声を揃えて笑う。とても明るい表情をしていて、飢えてるとかそういうことがうちの村では無さそうなので安心した。
「それは良かった。実はそれを考えたのはうちの息子アルフリートなんだよ」
ノルド父さんが俺をツイっと男二人の前に持ってくる。
「この子がですか?」
「そうだよ」
そう言い放つノルド父さんの表情は少し誇らしげだ。
「アルフリート様だっけか?何歳だ?」
「四歳だよ」
「すごく落ち着いてますね」
「うちのガキとはえらい違いだ。しっかりしてるな」
ウリウリと、口調の悪いおっさんが俺の頬をつついてくる。
こら一応領主の息子だぞ。失礼だろう。
「アハハ、僕もそう思うよ。多分すごく変わった子だよ」
ノルド父さん。今まで俺をそんな風に認識していたの。俺はいたって普通の子供だよ?
「じゃあ、そろそろ次に行くね」
「はい、また来てください」
「アルフリート様も男なら領主様みたいに強くなれよ?」
最後におっさんが俺の頭に手を置いて言ってくる。何だこのおっさん馴れ馴れしいぞ。これが田舎のノリなのか。なら俺も答えてやらないとな。
「おっさんも女房の尻に敷かれてても頑張れよ」
俺が返事を返してやると、おっさんは大きく目を見開いて口を魚のようにパクパクとした。
「うう、アイツ何で俺が女房の尻に敷かれてるって知ってんだよ。どうせ俺はナタリーに勝てないんだ」
「おいおい、そう落ち込むなよ」
「うるせえ! 新婚のお前には俺の気持ちがわからねぇよ」
「アハハ、アルフリート様本当に四才?」
歩き出した俺達の後ろからは、おっさんの悲しげな声と、それを宥める若者の声が聞こえていた。
やっぱりああいうタイプのおっさんは女房の尻に敷かれるのが定番だよね。
ーーーーー
ノルド父さんについていき、そのまま村の中心部へ。
今はお昼前。広場では村人達がそれぞれ自分の家で収穫した野菜や麦。森で収穫した木の実やキノコを持ち寄ったりして物々交換をしている。
ふむふむ、梨に栗にキノコにえ?それ何の実? 食べれるの? あのキノコなんてすごい
色鮮やかだけど大丈夫なのか?
狩人らしい弓を持った人は、兎やら鹿などを背負って歩いている。なるほど、あー言う感じで肉を切り分けて交換すると。
「へー、広場に集まって物々交換をするくらいには余裕があるんだね」
「そうだね。余裕がなくてもしなくちゃ生きていけないけれども、ここまで大きいと村人達が豊かだということだね」
「へー。じゃあ父さんがすごいじゃん」
「そんなことはないよ。元々コリアット村は自然が豊かだからね。後、田舎の端で小さい村だから納める物も少ないし」
「なるほどー」
「これはこれは、ノルド様、それとアルフリート様ですかな?」
広場を歩いていると、中年くらいの年をしたおじさんがやってきた。少し上等そうな服を着ているから村長さんかな?
「はい」
「大きく育ってくれて何よりです。アルフリート様どうですか村の様子は?」
「皆元気そうでいいね」
俺がそう答えると嬉しそうに村長は笑顔になる。
「その通りです。ノルド様はどうですか?」
「今年は去年よりも豊かになっているね。村人達の顔を見ればわかるよ」
「そうなのです。前回は豊作でしたので。餓死者もなく、余裕をもって冬を乗り越えれたです。色々報告もあります。良かったら我が家に来ませんか?」
「そうだね。最近の様子を聞いておこうかな」
「父さん、ここらへんをうろついていい?」
「いいけど、あんまり遠くに行っては駄目だよ?」
「はーい」




