14 エピローグ
「あなた達のこと、わたしはいつまでも忘れないわ」
目の前のお墓には里霧千代、恵子、琴乃の名が刻まれている。
わたしは三人のことを忘れない。
わたしが心から愛した、たった三人の人間を。
これからもきっと多くの出会いがあって、わたしはその度に愛するのかもしれない。
でもここに誓うのだ。
人として愛するのは、ここで安らかに眠る三人が最初で最後だと。
「千代、恵子、琴乃。また来るわね」
わたしはお墓の前から離れる。
「もういいのですか」
「ええ。お別れはとうの昔に済んでいるのだから」
今、わたしの目の前には柚結がいる。
数十年前に別れた頃から容姿はほとんど変わっていない。
柚結はあれから頑張って、すぐにわたしの血を目覚めさせていた。
妖狐もすぐに扱えるようになって、同時に人としての道からも外れていた。
最初は怒られたけれど、今では常にわたしと一緒にいてくれる。
柚結が狐憑きとして頂点に立った時のわたしの願い。
それはもちろん、ずっとわたしと一緒に過ごすということだった。
もちろん柚結だけじゃない。
マリアもレイも、キョウ、ショウ、チョウも一緒だった。
容姿が少しだけ恵子に似ているマリア。
相変わらずのレイ。
付き従う三匹の狐。
わたし達はこれからこの街を離れるのだ。
「これからどこに向かいますか」
「そうねえ……。まずは眠り姫を起こしに行きましょう」
わたしは弱くなったのだろうか。
百年前後をこの街で過ごしたことで、愛する人ばかりに囲まれて過ごしたことで、もう一人ではいられない身体になっていた。
でもそれでいいのだ。
人であっても、人でなくても。
一人はやっぱり寂しいのだから。
まずは誰もいないところを目指そう。
社会はますます発展し、わたし達にとっては更に生きにくくなっていた。
人のいないところでは、もしかしたらわたし達は弱っていくのかもしれない。
でもお互いを認識しあっている以上、私達の存在が消えることもないのだから。
愛する人外たちと、いつまでも怠惰な日々を送ろうと思う。
あとがき
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