第322話 バーベキュー大会2
何のかんのと言ってもさすがは女子。手際がいい。
斉藤さんたちが立ち働いていい匂いが漂い始めた。
「だいぶ焼けてきたからみんなお皿を持ってきてー」
俺を含めて男子4人がバーベキューコンロの前に並んで、皿の上に焼き立ての肉や野菜、それに魚介類を盛ってもらった。
浜田の皿を見たら、野菜はなくてそれっぽいのだけがのっかっていた。
俺は無難にドラゴンとヒドラ、牛のタン、それにカキとホタテ、パプリカとナスビとシイタケを皿に取ってもらった。かなり大きな皿だったけどいっぱいになってしまった。
女子たち3人も自分たちのお皿にそういったものを載せて各自の席に着いた。
各自のコップにジュース類を注いだところで、
「「カンパーイ!」」
みんな割り箸を用意してから小皿にタレを入れたり、レモンを搾ったりして食べ始めた。
斉藤さんは、ひと口ふた口食べたところで、席を立ってバーベキューコンロの後ろに立った。
斉藤さんを使うのは悪いので、俺が代わりに立とうと思ったら新館の方から人がやってきた。
みんなが見守る中、自動人形が俺たちにあいさつした。
「ここのお手伝いをするようアインに指示されてまいりました7号です」
7号ということは館の料理人だ。俺も実物は初めてだが、のっぺらぼうではなかったようで何よりだ。
「7号、ありがとう。
それじゃあ、バーベキューを見てくれるかい」
「はい」
「7号が見てくれるから斉藤さんは席についていればいいよ。
みんなはどんどん食べてくれよ」
「7号さんよろしくお願いします」「「よろしくお願いします」」
「はい。お任せください」
最初の皿に盛ったものがなくなった順にお皿を持って7号の前にいき、お皿に盛ってもらう。
俺は焼肉を中心に皿に入れてもらって、サソリのしっぽを半分もらって皿に入れてもらった。
焼いたサソリのしっぽは殻が赤くなって香ばしい良い匂いがする。見た感じはイセエビとは言えないがロブスターと言われればロブスターだ。
まずは素のままで白身の身を食べてみた。さっぱりしたうえにほんのり甘みがあるところはエビなんだが塩味が少し足りない。それで食卓塩を少し振ってみた。
今度は、まさにエビだ。しっぽの半分なのでかなり大きく食べ応えがある。
サソリを食べた後は順に焼肉を食べていった。
もちろんどれもおいしい。
俺の向かいに座ったタマちゃんはゆっくり食べている。
みんな最初のお皿のものを食べ終え2巡目の途中なので、そろそろみんなにフィオナを紹介しよう。
俺は立ち上がって、スピーチを始めた。
「えーと、みなさん」
みんなが箸を止めて俺に注目した。当たり前だけど緊張はしなかった。
「実は、わたくしは肩に妖精を付けているため『フィギュア男』と呼ばれています」
「「知ってるー!」」
ここでも『知ってる』だった。
それはいいけど。
「みんなはこの肩に止まっている妖精のことをフィギュアと思ってるからそれに付け込んでフィギュアに成りきってもらってたんだけど、実はホントの妖精でしたー」
「長谷川、ここの食べ物には中るようなものはなかったハズだぞ」
「夏休みの間、休まずダンジョンに潜っていたのか?」
「そういった幻覚とか妄想からの発言は実に興味深い」
「長谷川くん、バーベキューの準備で疲れてるのよ」
「誰も信じていないようだけど、それでは紹介しよう。
俺の相棒のひとりフィオナです」
俺の言葉に合わせてそれまでピクリとも動かなかったフィオナが肩から飛びあがり、みんな頭上を一周して俺の頭の上で宙に浮いた。
「ホントだったー!」「うわー」「「かわいいー」」
そのあとフィオナが俺の相棒となったいきさつを簡単に説明したのだが、フェアリーランドについて話すのは止めて1階層の茂みの中で弱っているフィオナを見つけて助けたという話にしておいた。
今まで6人の前で見せなかったのは、特に秋ヶ瀬ウォリアーズの3人にフィオナがおもちゃにされないように。などとは言えないので、本格的なダンジョン探索でもないのでうちで休ませていたと適当な話をでっちあげておいた。
「1階層に妖精がいたなんて、知らなかった」
「わたし、こんどは茂みの中専門で見て回る」
あまりそれは推奨できないが、ここで言うようなことではないので黙っておいた。
「いままで妖精が見つかったことなんて聞いたことないから、長谷川くん限定のイベントだったのよ。わたしたちじゃ無理」
「俺もそう思う。なんだか長谷川限定のイベントが多いような気がしていたんだ」
「だよね」
「俺もそう思う」
「だよね」
「そうだなー。誰しも子どものころは世界は自分を中心に回っていると思っていたが、そのうちそうじゃないと気付く。それが成長と言えばその通りだが、自分以外、しかもよく知った人間の周りで世界が回っているんじゃないかと気づくことってまれな体験ができたわけだ」
「浜田くんってよくわけわかんないこといつも言ってるけど、面白いよねー」
「いやー、それほどでも」
浜田、それほめられてないから。
それからフィオナは愛想よくひとりひとりの近くまで行ってふぃふぉふぃふぉ言葉であいさつしていた。
フィオナを囲んで、みんなドンドンお代わりをしていったが、そのうち箸の動きも鈍くなってきた。
そんな中で浜田だけは食べ続けていた。
浜田の向かいに座った中川さんも心配そうな顔をしている。
「浜田くん、無茶しない方がいいよ」
「一生食べられないような食材ばかり。ここで食べるのを止めるわけにはいかない」
「そのうちまた食べさせてやるから無茶はするな」
「長谷川、それは本当か!?」
「本当だから安心しろ」
「うぷっ!」
「食べ過ぎにもヒールが少しは効いたはずだから、ヒール」
浜田にヒールをかけてやった。
「どうだ? 少しは楽になったか?」
「かなり楽になった。すまん。
これが魔法というものか。どういった仕組みなのか見当もつかないが実に興味深い」
バーベキューコンロの方も火を落としたようで焼き上がっていた食材は皿に移され網の上には何も載っていない。
みんなおとなしくお腹が落ち着くのを待っていたら館の方から自動人形がひとり、台車を押してやってきた。見れば16号だ。
「デザートをお持ちしました。テーブルの上の皿などを片付けてよろしいですか?」
一同揃って「「お願いします」」と返事したので、7号と16号でテーブルの上を片付けていき、そのあとナイフとフォーク、そしてケーキと紅茶をみんなの前に置いた。
ケーキはスポンジ部分がかなり薄くてクリームとイチゴマシマシのショートケーキだった。
俺も含めてタマちゃん以外みんなお腹いっぱいに見えたのだが、ケーキは別腹だったようでみんなすぐに完食してしまった。
みんな食べ終わったところで、食器類は7号と16号が片付け、バーベキューセットやテーブル類はタマちゃんが収納することで後片付けを終えた。
バーベキュー大会を終えてみんなを1階層に送った俺は、みんなのお礼の言葉を受け、少し歩いてから専用個室に転移してカードリーダーに冒険者証をかざしていったんうちに戻った。
2階の自室で時間調整してから約束の時間に父さんを博多に迎えに行き、その日のお仕事は完了した。
次に父さんだか母さんを博多に送る時には、父さんのマンションまでついて行って直接転移できるようにしよう。




