第320話 金の延べ棒拾い3
週が明けて月曜日。
今日はダンジョン庁長官から感謝状と記念品を受け取りに9時にサイタマダンジョンセンターの管理棟に行く用事がある。
シュレア屋敷で朝食を摂った俺は時間調整のため居間でコミックを読んでいたら、8時過ぎにアキナちゃんがやってきて2階に上がっていった。
みんなが勉強中にコミックを読んでいるのは背徳感があるようなないような。
背徳感など結局全くなかったようでコミックを読んでいたらすっかりそんなことは忘れてしまった。
タマちゃん入りのリュックを手にしてフィオナを肩に止まらせて約束の時間の10分前にダンジョンセンターの管理棟前に転移した俺は、自動ドアから建物の中に入ってそこからメールにあった電話番号に電話した。
3分ほど待っていたら奥のエレベーターホールから女性が駆けてきた。
前回同様紙の入館証をその女性が渡してくれて、それを持って改札を抜けてエレベーターに向かった。
そして前回同様センター長室に通されて、前回同様簡単な言葉と一緒に感謝状と記念品を受け取った。
前回と違ったのは賞状が大きくなって金色の桐のマークが付いたことくらいで記念品の入った箱の大きさも重さもあまり変わらなかった。
今回の記念品はダンジョン庁から送られてきたものなので、センター長も箱の中身は分からないそうだ。
うちに帰ってのお楽しみだな。
センター長室から出たところで女性に筒型の賞状ケースをもらったので賞状はケースに丸めて入れてリュックの中のタマちゃんに記念品と一緒に預かってもらった。
そのあと女性に送られてエレベーター1階まで下り、そこから俺は専用個室に跳んで武器を装備しシュレア側29階層の黄金街道に転移した。
時刻は9時半。昼まで2時間半。午後からは1時から5時少し前までビシバシ金の延べ棒を拾い集めてその日480本の金の延べ棒を手にした。重さにして9.6トン。
今までの金の延べ棒と合わせると2110本。重さにして42.2トン。えらいこっちゃ。
うちに帰った俺はまずタマちゃんに今日もらった賞状ケースの筒に入った感謝状と記念品を出してもらって居間に行き、台所で夕食の支度をしていた母さんを呼んた。
「このまえダンジョンで地震があったとき、人助けした関係でダンジョン庁の長官から感謝状と記念品をもらったんだ」
感謝状を賞状ケースの筒から取り出して軽く反対側に丸めてから母さんに渡した。
「一郎すごいわね。賞状もすごく立派。
記念品は何だったの?」
「俺もまだ見てないんだ。母さん開けてくれていいよ」
「いいの? それじゃあ開けるね」
「うわっ! 金の杯みたい。これは何かケースを買ってきて飾らないとね。賞状の額も買いに行かなくちゃいけないから明日探してみるね」
「うん」
「そういえば、ダンジョン庁の長官に直接渡してもらったの?」
「いや。ダンジョンセンターのセンター長が代わりに渡してくれたんだ」
「そうなんだ。ダンジョン庁長官って大臣待遇らしいから忙しいものね」
「そうなんだろうね」
「お父さんが帰ってきたら見せないといけないから、母さんが預かっておくけどいいわよね?」
「うん。
母さん、台所の方はいいの?」
「揚げ物は終わっているから大丈夫。お父さんは今日遅いそうだから先にお風呂に入ってちょうだい。お風呂は掃除してあるからお湯を入れるだけでいいから」
「はーい」
風呂場に行って湯舟に栓をしてから給湯器のスイッチを入れ2階に戻った。
風呂の沸く前に、ダンジョン庁の河村さんに金の延べ棒2110本を卸したいとメールしておいた。
5分後に河村さんから『□▽金属工業に確認してから、連絡差し上げます』と、返信があった。
さらにその10分後『先方の受け入れを確認しました。明日の朝8時30分に専用個室でお待ちしています』と、返信があった。
『それなら、専用個室から例の工場の入り口前に転移で行きましょう』
『了解しました』
そうこうしていたら『お風呂が沸きました』と給湯器が告げたので着替えを持って部屋を出たらフィオナがついてきた。
軽くお湯で体を流して風呂の中に入り肩まで浸かって「ふー、生き返る」をやったら、頭の上で座っていたフィオナが『ふゅー、ふぃふぃふぃふぉふー』とそれっぽくしゃべった。
今日のは聞きようによっては「ふー、生き返る」に聞こえたような気がしないでもない。
風呂から上がったらすぐに夕食になった。
今日の夕食はソウメンと天婦羅だった。夏はソーメンだな。
今日の天婦羅はエビ天をメインにした野菜の天婦羅だけど、野菜の天婦羅おいしいんだよなー。どれもおいしいけどカボチャの天婦羅が最高だ。あとは、ナスとレンコン。それにシイタケ。今日はオクラも揚げてあった。変わったところでゴーヤもあった。ゴーヤの天婦羅は初めてで母さんに言われるまで何だか分からなかった。わずかな苦みと衣のサクサク感が癖になるおいしさだった。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
ハチミツで汚れたフィオナの手と顔を拭いてやって2階に戻った俺は、今日はコミックではなくweb小説を読み始めた。これ面白いじゃないか。しかし何で主人公が坊主頭で走り回ってるんだ?(注1)
作家名は山田某。どこかで聞いたことがあったような?
そういえばクロちゃんを手に入れたサイタマダンジョン1階層の池の名まえと同じだ!
あの山田池の本人かどうかわからないが、俺の勘が本人と告げている。
そうやって時間を潰していたら8時ごろ父さんが帰ってきた。
母さんに呼ばれたので1階に下りて、感謝状と記念品について俺から父さんに説明することになった。
「ホントに一郎はよくやってるな。父さんはうれしいぞ」
人助けが親孝行になったようだ。
次回なんかあったら親孝行のつもりで頑張れる。
父さんがその後風呂に入ったので俺は2階に戻って、web小説の続きを読んだ。やっぱり作家は山田池の山田某のような気がする。
翌日。
いつものようにシュレア屋敷で朝食を食べた俺は時間調整をして8時25分に専用個室に転移した。
部屋には河村さんが待っていてくれたので、お互いに朝のあいさつをした。
「それじゃあ、行きましょう」
「はい」
俺の格好はいつも変わらず冒険者スタイルで、背中にはタマちゃんの入っているリュックを背負って右肩の上にはフィオナが座っている。
河村さんの格好はビジネスウーマンスタイルだ。
河村さんが俺の手を取ったところで□▽金属工業の工場の門の脇に転移した。
河村さんが門衛の人にあいさつしたら、門衛の人がどこかに電話してそれから前回の倉庫まで案内された。
倉庫前には副工場長さんがいて、俺たちが到着したらすぐにシャッターを上げてくれた。
「さっそく置いていきます」
倉庫の中に入って木の台の上に順に金の延べ棒を50本ずつタマちゃんが置いていった。
置いていったといってもほぼ一瞬で作業が終わった。
副工場長さんは一瞬で金が現れたことにも驚いたようだが、その量にも驚いていた。
河村さんも驚いていた。
何に勝ったわけでもないが、ちょっとだけ勝った気持ちがしてしまった。
「よろしくお願いしまーす」とか言ったらふたりとも再起動してくれた。
そのあと副工場長さんに見送られて工場の門を出たところで、
「河村さん。どこに送っていけばいいですか?」
「今日もダンジョン庁の車で来ていますから、長谷川さんの専用個室でお願いします」
「了解です」
河村さんが俺の手を取ったところで専用個室に転移した。
「河村さん、今日もありがとうございました」
「いえ、仕事ですから。お聞きしたいことがあるんですがよろしいですか?」
「何でしょうか?」
「長谷川さんの今日の金の延べ棒なんですが、前回から増えた物なんですよね?」
「もちろんです」
「前回からまだ5日しか経ってませんけど、1日当たり8トンということでしょうか?」
「そうですねー。朝から晩まで集めれば1日当たり10トンは集められます」
「集めるんですか?」
「はい」
「分かりました。ありがとうございます」
河村さんが専用個室から出ていったところで、俺はロッカーからクロちゃんを取り出して装備した。
腕時計を見たら、時刻は8時50分。
その日は午前午後合わせて525本の金の延べ棒を集めたのだが、依然としてまっすぐ続く黄金街道の先は見えなかった。
うちに帰ったら、昨日の賞状が額縁に入って居間に飾られて、金の杯は、ガラスのケースの中に入って飾り棚の上に置かれたいた。
いいけど。
翌日。
この日はシュレア屋敷で朝食を摂った後少し休憩して金の延べ棒集めを始めた。
午前午後合わせて、550本の金の延べ棒を集めてしまった。
昨日と合わせて1075本。重さにして21.5トン。
うちに帰って累計買い取り額をスマホで確かめたところ、4979億6000万円増えて8073億1926万円になっていた。
今回は1グラム当たり11800円だったようだ。ありがたやー。
今タマちゃんに預けている1075本、21.5トン分の金の延べ棒を売ったら1兆超えてしまうぞ。どうしよう?
それから3日間同じように金の延べ棒集めをして3日間合計で1585本手に入れた。
それまでの1075本を加えて2660本、重さにして53.2トン。俺って一体全体これからどうなってしまうのだろう?
明日は父さんを博多に送って、それから秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と鶴田たち3人を招いてのバーベキュー大会だ。
楽しみだなー。
注1:坊主頭で走り回る主人公
『真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?』
現在、大人の事情で「なろう」からは撤去しています。




