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サイタマダンジョン  作者: 山口遊子


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第317話 何が何やら。ダンジョン管理庁管理局企画課8


 ミアたちを連れて隣街の本屋で本を買った翌日。

 いつものようにミアたちとシュレア屋敷で朝食を食べ、デザートのプリンアラモードを食べていたら、ミアがコミックリストを俺に渡した。

 渡されたリストを見たら今回はそれほど多くはなかった。


 昼食を終えた俺は昨日同様黄金街道に転移して金の延べ棒を昼食時間まで拾い歩いた。予想通り通路の先は見えていない。


 午前中手に入れた金の延べ棒は全部で310本。重さにして6.2トン。1グラム1万円として620億円。

 やり過ぎのような気がしてきたけれど、だからどうなるわけでもないので金の延べ棒集めは続けますよ。

 これまでの金の延べ棒と午前中の金の延べ棒を足すと、520本+310本=830本=16.6トン=1660億円。

 まだ現金化したわけじゃないけれど俺の収益、インフレってレベルじゃないぞ。

 それで思い出したんだけど、シュレア側の28階層の宝石の壁。あれもタマちゃんに言って切り取ってもらえれば回収できる。あれも買い取ってもらえれば相当な金額になりそうだ。一体俺ってどうなっちゃうんだろう?


 ミアたちと昼食を食べた俺は午後からはミアたちと居間で円盤を見たりして過ごしてから専用個室に転移した。

 防刃ジャケットの内ポケットに入れていたスマホがすぐに震えたので取り出して見たら、河村さんからメールが届いていた。

 メールには金の延べ棒の引き取り方法について説明されていた。

 それによると、俺の都合の良い日に金の保管倉庫に案内するのでそこに卸してほしいということだった。

『明日の8時以降ならいつでもいいです。いまのところ20キロの金の延べ棒が830本、16.6トンあります』と返事をしたらすぐに『明日午前8時に専用個室に迎えに行きます』と返ってきた。

 ということだったので、この日は専用個室の武器ロッカーにクロちゃんを返しただけで金の延べ棒は卸さずうちに帰った。



 夕食を食べて2階に上がりスマホで昨日の金の延べ棒の買い取り額を確認したところ115億円ちょうどだった。

 ということは1グラム当たり1万1500円だったことになる。

 累計買い取り額は1027億0926万円+115億円=1142億0926万円となっていた。


 そのあと、ミアに渡されたコミックリストを見ながらスマホでコミックを注文していった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 一郎の16.6トンの金の延べ棒を一度に買い取ってもらいたい意向を知った河村課員は、ダンジョンセンター本部と交渉し、ダンジョンセンターと取引のある大手非鉄金属会社の□▽金属に引き取ってもらう段取りをつけ□▽金属のさいたま工場内の倉庫への現地渡しということで話を付けた。それらについて河村課員が小林企画課長と山本課長補佐に報告している。


「しかし、純金16.6トンか。どうやって集めたのか想像もできないが、それだけの量をどこかに置いているということか」

「これまでもリュックに入りきらない量のアイテムが長谷川さんのリュックの中からどんどん出てきてたことと、彼がリュックの中に入れているスライムがすごい量のモンスターを吸収していることを考え合わせると、おそらくそのスライムがそういったアイテムを体内に貯えているのではないでしょうか?」

「なるほど。謎は深まるばかりだがわれわれがとやかく言う筋合いでもないしこれについても口外無用ということになるな」

「「はい」」


「それで、16.6トンの純金の買い取り価格はいくらになる?」

「昨日の買い取り価格で計算すると1909億円になります」

「それだけ一度に支払ってダンジョンセンターの現金は大丈夫なのかな?」

「はい。□▽金属で重さと品位が確定次第代金がダンジョンセンターに振り込まれ、それをもって長谷川さんの口座に買い取り代金が振り込まれますから問題はありません」

「そうか。しかし、□▽金属でもいくらでも買い取れるってもんじゃないだろう?」

「100トンまでは買い取れるとのことです」

「100トンとなると1兆円超えだな」

「そうなります」

「どういった場所で長谷川くんが金の延べ棒を集めているのか分からないが、相手は長谷川くんだし、純金100トンくらい簡単に集めそうだな。

 長谷川くんの今までの累計総額に今回の1900億を加えれば3000億だ。あと70トン金を集めてくれば1兆円プレーヤーか」

「さすがにこの夏休み中に達成することはないでしょうが、今年中には達成するかもしれません。

 課長。SSSランクの次のランクを考えておいた方がいいんじゃないですか?」

「そうだなー。Sを増やしてしまうとSSSS、なんだか毛虫みたいだし見た目も悪い。

 よし! 次は路線を変えてEXランクにするか。SSSランクのイメージカラーで黒を使ったから今度は冒険者証のカード素材を透明にしよう。地震も収まってきたし、新ランク創設は前回同様冒険者増のなにがしかの起爆剤になるかもしれないから意匠など早めに決めてしまって発表しよう」

「カードを透明にしてしまうとICチップなどが見えてしまいますがよろしいですか?」

「そこがまたカッコいいところだろ? 別名スケルトンカードだな。アハハハ。

 そういうことで山本くん、準備は任せたよ」

「それではその線で進めます。

 それはそうと、ダンジョンから金の延べ棒が出たとなると大ニュースになりますがその辺どう対応します?」

「出たといっても長谷川くんしか到達できない階層だろ?」

「そうですが」

「へたに発表してしまうと金相場に影響が出るんじゃないか? あれって国際商品だろ?」

「確かに」

「今回は内々で処理しよう。ダンジョンセンターへもそのように伝えておいてくれたまえ」

「承知しました」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 いつでもダンジョンに潜れるよう防具を着込んだ俺は、いつものようにシュレア屋敷で朝食を摂って、少し時間調整をしてから専用個室に転移した。

 河村さんとの約束の5分前に部屋に転移したのだが、河村さんは部屋の中で待っていてくれた。

「おはようございます」

「おはようございます。管理棟の玄関前に車を待たせています」

「分かりました。それじゃあ近くまで転移で跳んでいきましょう」


 カウンターの中から出てきた河村さんが俺の手を取ったところで管理棟の玄関横に転移した。

 人に見られたかもしれないが、問題ないだろう。

 黒塗りの大型セダンが玄関前に停めてあり、その車に乗るように言われた。

 運転手らしき人にドアを開けてもらい俺は後部座席の右側に座り、タマちゃん入りのリュックは足元に置いた。河村さんは俺の左側に座った。

 


 運転手さんが運転席に着いて後部座席の俺たちがシートベルトをしたことを確かめたところで車は音も振動もなく走り始めた。

 氷川のロンドちゃんとこの車はもとより目的が違う自動車だから比較しても仕方ないが、プロの運転手さんの運転だと振動に備えて身構える必要がないし、大音量のアニメソングに聴覚をいじめられることはないことを知った。


「30分ほどで目的地に到着する予定です」と、運転手さんが前を向いたまま説明してくれた。


 車に乗ってしばらくして河村さんが俺に聞いてきた。

「長谷川さん。答えたくなければ答えていただく必要はないんですが、いくつか質問してもよろしいでしょうか?」

「答えられることなら」

「今現在長谷川さんは何階層まで潜っていらっしゃるんですか?」


 階層云々ということもあるのだろうが、やはり金の出所でどころは知りたいよな。

「何階層かというと正直なところよくわからない階層なんですが、河村さんを以前連れて行った太陽の見える階層から数えて、2階層くらい下の階層を探索しています。」

「ゲートキーパーをたおしたということですか?」

「ゲートキーパーのいない階層もあったんですが、一応それラシイモンスターはたおしています」

「なるほど」


「その階層に金の延べ棒が5本入った宝箱が一定間隔で置かれた通路があってそこを歩いていくだけで大量の金の延べ棒が手に入ったわけです。その通路なんですが、まだまだ続いているようです」

「ありがとうございます。一般冒険者では到達できない領域なんでしょうね」

「そうですねー。26階層で渦のある方向を知る手段がないとあそこを突破すること自体難しいでしょうから。

 そういえば壁1面が宝石で出来た部屋のある階層があったんですが、宝石って買い取ってもらえますか?」

「壁一面が宝石ですか?」

「はい。4面ある壁の1面だけですが全部宝石なんです。切り取ってくるのは簡単なんですが、買い取ってもらえないようではただの石なので切り取る必要もないですから」

「宝石が壁? 壁が宝石? 想像しづらいんですが、宝石が板状ということですか?」

「そうなんだと思います」

「サンプルのようなものがありますか?」

「いえ。取っていません」

「宝石といっても種類も豊富ですが種類は分かりますか?」

「おそらく、トパーズ、サファイア、エメラルド、ルビー、オパール、ダイヤモンド。各々壁一面がその宝石でした」

「そんなに」

「一面そっくり切り出せば2、30トンにはなりそうです。

 ダイヤモンドなんかトン単位で売りに出たらとんでもないことになりますよね?」

「ダイヤモンドに限らず宝石市場が大暴落しかねませんね」

「それじゃあ、大口では買い取ってもらえないということですね」

「数カラットの宝石が数十個なら買い取りできると思いますが、1トンの塊りは引き取れないと思います。一応センターに聞いてみましょうか?」

「そこまではいいです。どう考えても無理そうですから」


「話は変わりますが、サイタマダンジョンをベースにしていてこのまえSランクに昇進した氷川涼子って知ってますか?」

「もちろんです。先日の地震のときおふたりで負傷者の救護をしていただきありがとうございました。そろそろと思いますがおふたりにはダンジョン庁長官から感謝状と記念品が贈られると思います」

「どこかに行くことになるんですか?」

「ダンジョンセンターで受け取れると思います。それはそうと、氷川さんがどうされました?」

「本人は今現役で冒険者していますが、人に教えることに興味があるようで、将来的に冒険者に対するより高度な訓練機関のようなものができたら彼女がそこの教官に最適じゃないかと思って」

「もしそういうことになるようならお声掛けします」

「お願いします」


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