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サイタマダンジョン  作者: 山口遊子


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第167話 ゴールデンウイーク7、雨。メモ帳


 ゴールデンウィーク3日目。

 

 タマちゃんはリュックの中、フィオナは俺の右肩の上。俺は朝早くに家を出て半地下要塞前に転移した。


 いつもと違って暗い。

 見上げた空は晴れ間はどこにもなく曇っていた。

 今のところ大雨が降りそうなほど雲は厚くないようだが、小雨くらいは降りそうだ。


 俺はひさしの下に、頭が3分の1ほど出るように釘を打ち付けていった。

 その釘の頭にブルーシートの端に並んでいる丸い孔の空いた金具を引っ掛けて垂らしてやった。

 そしたらブルーシートが長すぎたため、反対側の孔も釘に引っ掛けて長さを半分にした。それでも少し長かったが、許容範囲内だ。

 窓の次は入り口。

 こっちも同じように垂らしたのだが、こちら側の幅はあまりないのでだいぶ余ってしまったので横方向に3分の1たたむ感じに折ってやった。

 それでもベターザンナッシング。

 入り口のブルーシートをかき分けて半地下要塞の中に入ったら、中は薄暗くて青かった。

 外からの見てくれも悪かったが、中からの見てくれはもっと悪かった。


 雨が中に入ってくることはこれでほとんどなくなったと思うが、やはりちゃんとした窓があった方がいい。


 ブルーシートの貼り付け作業は20分ほどで終わったので朝食をとることにした。

 ブルーシートで青く薄暗くなった部屋の中で食事は何を食べてもおいしそうに見えないので、カンテラをテーブルの上に置いて点灯した。


 コンロでお湯を沸かしてコップに紅茶を淹れ、皿に出したサンドイッチと調理パンを食べたのだが、紅茶も調理パンも青みがかった微妙な色だった。


 朝食を食べ終えた俺はタマちゃんに片付けを頼んだ。

 俺の方は20リットルのポリタンクの中の『治癒の水』が残り少なくなったので、バケツと漏斗を一緒に持ってブルーシートの扉をかき分けて外に出たら、ポツリポツリと雨が降り始めていた。

 まだ小雨だったので急いで桟橋まで行ってポリタンクに『治癒の水』を汲んでいたら雨脚がだんだん強くなってきた。

 ポリタンクが満杯になったところで半地下要塞前に転移し、ブルーシートをかき分けて中に入った。


 風はほとんどないようで横雨ではないけど、ブルーシートが間に合ってよかった。ホントにギリギリだった。


 半地下要塞の壁と周りの土の間に水が浸透するのは避けたいが、軒が出ているし、ブルーシートもかけてあるので、たぶん大丈夫だろう。


 一安心した俺はリュックを背負って館の書斎に転移した。時計を見たら時刻は7時45分。

 やってきたものの、ここの外も雨のようだし何もすることはない。


 それでも俺はタマちゃんに預けていた銀の指輪を指にはめて呼び鈴を鳴らしアインを呼んだ。


『マスター、お食事はいかがしますか?』

 ここで食べても良かったのか。失念していた。

「悪い、食べてきたからいらない。

 そういえば、アインはこの館を建てるのを手伝ったと言ってたよな?」

『はい』

「今でも大工仕事できるのか?」

『わたし自身は細かい作業はできませんが、大工のできる者がいますので、その者に大工仕事をさせることができます』

「窓の取り付けなんかもできるかな?」

『もちろん可能です』

「ここにガラスとかあるのか?」

『はい。倉庫に貯えもありますし、製造も可能です』

「倉庫に製造?」

『工場で製造したものを倉庫に貯えています』

「そんな場所あったっけ?」


 そういえば倉庫みたいな建物があったけど扉が開かなかったから中を見なかったんだ。

 あそこだな。

「思い出した。別棟に成っていた倉庫みたいな建物だな」

『その建物だと思います。

 ご案内しましょうか?』

「雨も降ってるし別にいいや。

 その工場で、板ガラスとか、シャンデリアとか作ってるんだ」

『そういった建物関係の物品から、厨房用品、武器、工具、この館内の物品は全て工場で生産できます』

「材料はどうなっているんだ?」

『工場の地下が資材の備蓄倉庫に成っています』

 何だかこの屋敷って何でもできる要塞だな。

「工場では機械が動くんだろ?」

『はい。前のマスターは自動機械と呼んでいました』

「その機械が勝手に動くわけではないだろ? その機械の動力はどうなっているんだ?」

『機械は動力石で動いています』

「そんなものがあるんだ。

 それも備蓄倉庫にあるんだな」

『はい』

「備蓄が足りなくなったらどうするんだ?」

『その時は採集班が採集してきます』

 なるほど。


 のっぺらぼうってここの連中のことを勝手に呼んでたけど、ちょっと失礼だよな。


「アイン、お前たちのことを前の主人はなんて呼んでたんだ?」

『総称という意味でしょうか?』

「そうそう」

『前のマスターはわたしたちのことを自動人形と呼んでいました』

 なるほど。


「大工仕事のできる自動人形は出張して大工仕事できるかな?」

『出張というのはこの館外ということでしょうか?』

「うん。そういうこと」

『あまり長時間は無理ですが可能です』

「長時間が無理とは?」

『30日以上の連続稼働は想定されていませんので、稼働時間が30日を超えた場合、動作不良を起こし、やがて停止します』

「30日も働かなくていいから大丈夫だ。

 俺が現場に連れて行って、ここに連れて帰ってやるから実働はおそらく数時間じゃないか?」

『それでしたら何も問題ありません。

 さっそく作業させましょうか?』

「雨が止んだらでいい」

『了解しました』


 後ろを振り返って窓の外を見たら雨脚はまた強くなっていた。

 降る時はけっこう降る。


 部屋の外では自動人形たちが窓拭きはしてないと思うが朝の掃除をしているようだ。

「アイン、ここに俺の寝室ってあるのかな?」

『はい。

 そちらの扉を開けていただくとマスターの私室になります』


 この部屋の中の扉はふたつとも最初開かなかったんだよな。


 俺が会議室の反対側の扉のノブに手を添えたら今度は簡単に扉が開いた。

 銀の指輪の効力なのか、アインがカギを開けてくれていたのか。


 俺のプライベートルームは2方向に窓のある角部屋で、部屋の隅に大型のベッド。

 ベッドには真っ白なシーツがかかっていた。

 試しに上から手で押してみたらふかふかだった。


 部屋の真ん中には小型のテーブルと椅子。

 片側の壁にクローゼットの物と思われる横開きの扉が設けられていた。

 さっぱりした部屋というより殺風景な部屋だった。


 横開きの扉を開けたところ、思った通りその先はクローゼットで、上着やズボン、シャツなどの衣装がハンガーに吊ってあった。

 前の主人の衣装だ。

 どう見ても人間の衣装なので、前の主人は人間型だったことが分かる。

 アインたちも顔の造作はないが人間型なんだから、予想通りと言えば予想通り。


それにしてもできてから150年以上は経っていると思われる衣装が新品同様に吊り下がっているのは驚きだ。こういった物も自動人形たちのメンテナンス対象なのかもしれない。


 ひとつ上着を取り出してみたところ、かなり豪華な意匠がほどこされていた。

 だが、かなりデカい。

 俺が着たらブカブカだろう。

 前のあるじは俺よりかなり大きな体格だったようだ。


「ところでアイン、前の主人の名まえはなんて言うんだ?」

『本当の名まえは分かりません。わたしたちはただマスターと呼んでいました。

 マスターの部下の方たちはマスターのことを『陛下』と呼んでいました』


 陛下ということは、国王とか皇帝だよな。


 小型のテーブルの上にはメモ帳のようなものが置いてあった。

 鑑定したところ、予想通り『メモ帳』だった。

 手に取ってパラパラとめくってみたが、あの黄ばんだ紙と同じような文字が記されていた。従ってわずかに読める部分もあるが意味はまったく分からない。


 最初のページ。

『わが名は……。

 ……哀れな……。……われはこの……。

 ここは……ない……。

 われは……作り出し、この館……。

 そして……作り出した。

 われはわが……を続け、幾多の……行なったが、いまだ……』


 それから、全く読めないページが続いて、

『……立った』

 次のページは殴り書きで、何かが書かれ、大きくバツ印がその言葉の上に書かれていた。


 また読めないページが続き、

『この……この先……。

 あす最後の……、全てを……、……自由に……命じる……』


 そして最後のページ。

『……ついにわが……開けた。

 われは……この地を去り、われの……に……』


 このメモ帳は、この館の前の主人が実験か何か成功して元の世界に戻ったことを記した日記ではないだろうか?

 どういった経緯で前の主人がこの地にやってきたのか分からないが、地下にあったあの金色の球体を作りあげてそしてこの地を去り元の世界に帰還した。


 ロマンだなー。


 他人事だからロマンで済ませられるが、本人からすれば苦難の連続だったに違いない。帰還できたようでめでたいことだ。


 あの金色の球体は今は動かせないし、前の主人が行ったきりである以上、片道運航なのはまず間違いない。

 俺には転移があると言っても実際本当の意味で世界をまたぐ転移ができるのかというと、確信はない。 


 このメモが読めたところで何がどう変わるわけでもないのだろうが、この鑑定指輪、レベルアップしてくれたらストレスぐっと減るのに。



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