某殺し屋JK四コマ漫画1巻の表紙みたいな
やや短いです
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仕事のやり方は簡単。一人がリストに目を通しながら順番にタイトルと冊数を伝え、もう一人が書架を見て確認するだけ。
そう、あくまでその程度の最終確認だけなのでディアンは本来二人組(×2)での作業を想定していた。三人組が出来てしまうのは想定外。とはいえ人数が多くても別に何も困りはしない。ローテーション形式で一人ずつ休憩を取れば済む話だ。
「センパイセンパイ、肩車してください! 代わりにわたしが最上段をチェックするので!」
「え……まあ、いいけど……休まないの?」
「肩車してもらえれば休んでるようなものです!」
休憩する番になったエミュリトスがなんかよくわからない事を嬉々として言ってきた。
理屈はまるで理解できないが、本人が望むならそれを叶えてやるべきだろう。踏み台を引っ張ってこようとしていたミサキは大人しく屈み、背中を向ける。
「……どうぞ」
「では失礼して……ほっ、よいしょっ」
「う……」
「せ、センパイ? どうしました?」
「……見た目より重い」
「し、しつれーな! デリカシーがないですよセンパイ!」
「……ごめん……」
体力の無さを自覚しているミサキが簡単にOKしたのはエミュリトスが小柄だからに他ならない。勝算の有無は一応ちゃんと考える子なのである。
しかし予想していたより重かった。失礼かもとは思ったが、立ち上がれるか怪しかったので素直に予想外の事態である事だけは伝えておこうと思ったのだ。
「今から立ってみるけど……リオネーラ、もし危なかったら支えて欲しい」
「はいはい、見といてあげるわよ」
「ありがとう……」
「一応エミュリトスをフォローしとくとね、ドワーフは小柄だけど筋肉がつきやすい体質なのよ。人間より遥かに密度の高い筋肉を持つと言われているわ」
要するに前世の感覚で見た目相応の幼女の体重を想定していたミサキの計算ミスである。それだけ筋肉質でありながら前世の幼女と変わらない見た目のドワーフの女性がある意味ズルいとも言えるが。
「なるほど……よっ、と…!」
「……ん、よし、ちゃんと立てたわね」
立った立った、ミサキが立った。
「……思ったより大丈夫そう」
「ちゃんと沢山食べて運動してるからね。あたしも心配だったけど、少しは育ってるってコトでしょ」
「良かった」
「うわー、いい眺めですねぇー。センパイの髪の毛もいい感触ですねぇ~」
「……あまり触らないで、恥ずかしい」
グラウンドで裸になろうとしたらしい奴が何を言っているんだ、とリオネーラはツッコミそうになったが耐えた。
それにエミュリトスがミサキの髪を触りたがる気持ちもわからないでもない。他では見ない、軽くウェーブした漆黒の髪。柔らかそうにも見え、艶やかで滑りが良さそうにも見える、その手触りに興味が無いと言えば嘘になる。
(……………)
ミサキが本気で嫌がっているのであれば勿論触らないが、恥ずかしいと言いつつも表情には出ていないので判断が難しい。触りたいと言えば案外普通に触らせてくれるのではないだろうか……?
(……いやいや、何考えてんのよあたし。アホなコト考えてる暇あったら働かないと)
リオネーラは感情的になりやすい性格でこそあるが、感情的にならない限りは常識人である。こんな奇妙な好奇心に振り回されるほど子供ではなかった。
「……ほらほら、仕事するわよ。読み上げるからチェックしていってね」
「はーい、お任せを!」
テンションアゲアゲで返事するエミュリトスの下でミサキはこのフォーメーションの非効率さについて考えかけたがやっぱりやめた。




