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こぼれ話その1:無双◯ターズで見たやつ

ご無沙汰しております…


◇◇◇



 ――そんな感じに設定説明の多い鍛冶屋での約二週間をミサキ達は過ごしたわけだが、勿論その間も彼女達は学院で学生生活をエンジョイしているわけで、そちらでも大小様々な出来事があった。代表的なものをいくつか掻い摘んで記そう。





「……ところで、リオネーラのやってる準備運動は――」


 ――例えばある朝、日課の走り込みの前にミサキが前々からの疑問を呟いた時の話。


「――動きに決まった順番があるようだけど、あれは誰が考えたもので、どのくらいの人が知っているの?」

「ん? ええと、あたしは両親に習っただけなのよね。村の人達がやってるのは見た事あるけど、ここでは同じ動きをしてる人は見かけないから多分ウェルチ村のオリジナルよ、これ」


 勤勉で良い子のリオネーラは運動の前の準備運動もちゃんと習慣付けている。朝の走り込みの前も脚を伸ばしたり身体をひねったり、という風に。する動作はそう多くはないものの毎日同じ動きをしていたので、前世で言うところのラジオ体操みたいに広く知られた決まった型があるのかとミサキは地味に疑問に思っていたのだ。

 あくまで「地味に」程度だったのはリオネーラの言った通り他の生徒達がやっているのを見た事が無かったから。前世で言うところの体育教師であるボッツもウォーミングアップの大切さは説くものの特にやり方を教える訳でもなく自由にやらせるし、そもそも戦いが常に隣にある世界では準備運動も手早く終わらせてしまうだろうからラジオ体操のような研究し尽くされた型がある可能性は低く、ハッキリ言って優先度の低い疑問だった。

 このタイミングで聞いたのも特に理由があった訳ではなくなんとなくである。ただ、流されるまま同じ準備運動をしていたのでいつかは聞いてみたいな、とは思っていたが。ちなみにミサキが同じ運動をするという事は当然エミュリトスも同じ運動をしているという事でもあり。


「わたしももう完璧に順番覚えちゃいましたよ。筋肉はつかないでしょうけど健康的な気はしますよね、この準備運動」

「あら、ドワーフにそう言われるって事はなかなかなのかしら、これ。あたし的にはもうちょっと改良の余地がありそうなんだけど。……という訳でミサキ、何か良い案ない?」


「えっ……なんで私?」

「なんでって……ミサキの事だからほとんど予想ついてたんじゃない? あたしの答えに。だから急いでは聞かなかった。それでも結局聞いたってコトはどこかに引っかかりを感じてたんでしょ? あたしはそれが知りたいのよ」


 周囲に誰もいないのを確認し、距離を詰めつつリオネーラは言う。

 そう、ミサキが地味な疑問を抱いたのは前世で国民全員に広く知られたラジオ体操を知っていたから。状況を見れば答えは明らかなのにそれでも聞かずにはいられなかったのは前世知識のせいなのだ。リオネーラもそうではないかと察している。その上で知りたがってもいる。どうやらこの準備運動を改良したいという気持ちは本物のようだ。

 であれば、ミサキがその気持ちに応えない理由はない。


「……私のいた所では、非常に知名度の高い10分近く行う体操があった」

「長いわね……知名度が高いってコトは効果も保証されてるのよね? いや、それとも万人向けに最適化されてるのかしら? 何にせよ見てみたいわ」

「……わかった、参考になるかはわからないけど」

「大丈夫、あたしは本気よ。友達の案だからって贔屓はしないでちゃんと判断するわ。困ったら筋肉にうるさいエミュリトスに相談するしね」


 エミュリトスに判断を委ねれば全てミサキを尊重しそうだが、あくまで相談であればその可能性は多分少しくらいは低くなる。扱い方を心得つつあるリオネーラであった。


「……じゃあ……まずは背伸びの運動から――」


 そうして、二人に注目されながらミサキはラジオ体操を開始する。この世界にはまだラジオはないので名称を聞かれたら国民保険体操と答えるべきかな、とか最初のうちはそんな事を考えながら体操をしていたのだが……


(……なんか微妙に緊張するな……)


 無駄に度胸だけはあるミサキは基本的に人前で何かを披露する時も物怖じはしない。それがラジオ体操という一切恥じる事のない真面目な動きなら尚更……なのだが、今回は親友二人が極めて本気マジな目付きで、目を皿にしてミサキの一挙手一投足に注目しているのだ。隅から隅まで見られているのだ。流石のミサキも緊張し、プレッシャーを感じ、時には恥じらいすら感じつつあった。

 日頃何かとミサキに振り回されている二人が無意識のうちにやり返していた瞬間である。まぁ無意識なので気づいてないけど。


 ともあれ、そんなこんなでミサキはラジオ体操を第2まで通しでやり遂げた。

「……終わり」とミサキは告げるも、リオネーラの表情は少し固い。


「ふむ……結構複雑ね。それぞれの動きが自然に繋がっているから覚えられないとは言わないけど……」


 彼女はそこで濁したが、「けど」の後に続くであろう言葉はおそらく「覚えられない人も出てきそう」といった類の言葉だと思われる。ミサキはそう解釈した。実際、彼女とて一回で覚えた訳ではないのだから。

 そして同時に、覚える一助となっていたものの存在を伝え忘れていた事を思い出す。


「……これは本来は音楽と一緒に体を動かす体操。だから音楽があれば覚えやすい」

「あ、そうなの? 確かにそれなら覚えやすいのかしら? もぅ、そういう事は早く言ってよね」

「ごめん」


 これは完全にミサキの落ち度である。なので……


「じゃ、その音楽を口ずさみながらもう一回やってくれない?」

「………」


 なので、こんなハードなリクエストをされても拒否権はないのだ、彼女の信念的に。やられたらやり返すのが信条ならば、やらかした時にはやり返されなければ筋が通らないのだから。

 という事で――


「……ちゃーちゃーちゃらっちゃっちゃ――……」


 流石のミサキも緊張し、プレッシャーを感じ、時には恥じらいすら感じる第二ラウンドが始まった。

 勿論、やってる内容も見てる人も大真面目ではあるのだが。




 ――そして再びやり遂げた後。


「うん、音楽があるだけでかなり覚えやすくなるわね。とても良いと思うわ、さっかも言ったけどそれぞれの動きが繋がっていて完成度がとても高いし。あたし達の体操の改良にも使えそう」

「……それは良かった」

「だからミサキ、今度ウェルチ村に来た時に皆の前でもやってくれない?」

「………………」


 第三ラウンドまで予告されてしまったミサキの明日はどっちだ。




「……リオネーラも一緒にやって」


 道連れにする方向だった。


小説とは何も関係ないですけど今日から芳文社のまんがタイムきらら等のコミックスがセールしてるそうですよ、やったね!

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