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魔王、やられた事はやり返す

再度、上空に転移ゲートが開き、主攻を担う人狼兵に向けて数十本の矢が降り注ぐ。先ほどと違い、警戒があったために人狼兵は両腕を交差させて急所を護りその攻撃を凌ぐ。


「ぎゃんッ!」

「ぐぅッ!」

「ぐぁッ……」


「ちッ、負傷の酷い者を後衛に下がらせろッ!」


幸い、頑強な人狼兵に致命傷を負った者はいないようだが、このままだと命に関わるような重傷を負い、地に伏している者も少なく無い。


その同族の姿を見たヴィレダが切れた。


「…………… 八つ裂きにしてやる」


彼女は静かな殺気を漲らせるが、今の状況ではどうしようもない。


「落ち着けヴィレダ、もう少しだけ凌いでくれ」


そう言い放ち、俺は少し後方のスカーレットの下に移動する。


「スカレ、アレを前面に出すぞッ!」

「おじ様!? 恐らく相手は遠見の魔法を併用しています!いい的になりますわよッ!!」


「だからだよ」

「ッ!」


スカーレットが此方の意図に気付いてくれる。


「分かりました、エルミア、“雷霆”を使います」

「こ、この状況でやるんですか!?狙われちゃいますぅ!」


「それでいいのです、行きますよ」


戦場から縁遠い青銅のエルフ達がスカーレット麾下の吸血鬼達に指示を出して、蒸気エンジンを搭載した小型の駆動機械“雷霆”を最前線へと押し出していく。


その光景を部屋の鏡越しに遠見の魔法で聖女ミリアと魔女ディアナは見ていた。


「ディアナ、あれは何でしょうか?」


「何かよくわからいけど、破城槌のようにも見えるわね……ここで出してくる以上は何か意味があるのでしょう……あの者達を潰します」


彼女は三度、転移ゲートを開き、そこに兵士達が構えた弓から矢を放つ……


俺は最大限、転移ゲートの兆候を掴むために意識を集中していた。本来、そんな事をしなくても次元回廊を開く都合上、転移ゲートの出現は多少の余裕を持って分かるのだが……


多分、何かしら転移魔法と相性の良い概念装を持った術者なのだろう。

しかし、自軍の動きで相手の攻撃を誘えば転移ゲートの位置を誘導できる。


「ッ、スカレ!」

「はい、おじ様ッ!」


スカーレットの掌に彼女の魔法により、風が寄り集まってできた巨大な風弾が形成される。スカーレットが扱える最大の炸裂系魔法エクス・エアバレット・バースト、それは直ぐに発動できるように密かに準備されていた魔法だ。


その巨大な風弾を上空に開いた転移ゲートに向けて放つ。


ゲートから射出される数十本の矢は風弾に弾き飛ばされ、逆に風弾が転移ゲートの向こう側へと飛び込んだ。


「なッ!?」


ディアナは驚愕の表情をする。

奇妙な機械を運ぶ連中を潰すはずが、転移ゲートから風弾が飛び出してくる。


それはディアナも知る強力な風の炸裂魔法だ。


「しまッ」


彼女が全てを言い切る間もなく、転移ゲートから送られた風弾は炸裂し、風の刃を撒き散らす。


「ぐあァ!」

「かはッ」

「うぐぅッ!」


転移ゲート周辺にいた王国軍弓兵は壊滅的な被害を受けることになった。


そのほとんどが致命傷を負う中で、ディアナはミリアの“緩衝”の概念を備えた柔らかい結界によって護られている。


「ッ、ありがとう……命拾いしたわ」

「……いえ、咄嗟に護れたのは貴女だけでした……」


室内の惨状を見て悔いる様に聖女は呟く。


「まだ助かる命もあるわ、誰かッ!救護兵をッ!」

城塞内にディアナの声が響いた。


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