魔王、物流を考える
初めて訪れた都市ブレアードは国境付近のキナ臭さなど無いかの様に落ち着いた雰囲気であり、強いて言えば商人たちが荷馬車を走らせる姿が目に着く。
(行先はベイグラッドの城か…… 戦があれば商人は潤うのは何処も同じだな)
先程助けた商隊の積み荷も恐らくは武器や食料などなのだろう。そんな事を考えつつ、街並みを眺めて歩いていると先行するゲオルグ殿が声を掛けてきた。
「魔王殿は既にお気づきであろうが、都市エベルに当家の間者をかなり送り込んでいてな…… 色々と報告は受けておる」
「あぁ、此方もミツキから報告を受けている。スカーレット」
「現状で私たちが把握しているミザリアの手の者は23名ですわ、おじ様」
どうやらその数は正鵠を射ていたらしく、一瞬だけ前を歩くゲオルグ殿の動きが止まり、隣を歩いていたクリストファが乾いた笑みを浮かべる。
「全て筒抜けといった感じですね…… これはまいった、笑うしかない」
「少し癪に障りますけど、鬼姫麾下の鬼人兵たちは優秀ですからね」
吸血姫も貴族の次男坊もお互いに笑顔で談笑するが、目が笑ってないので少々怖い。
「ふむ、という事は泳がせもらっているわけですな…… ともあれ、話を戻させて貰いましょう」
一度振り返った後、再度前を向いて歩を進めながらゲオルグ殿が続ける。
「要は都市エベルとミザリア領のブレア―ドまでの都市や町を繋ぐ道路の建設などを考えておりましてな…… まだ先の話で具体性を持つほどでもありませぬが」
「必要なモノを必要な場所へか……」
経済の基礎は需要と供給を繋ぐ物流にあるし、それ以前に需給の整合性を保つのは国々の発展に必要な事だ。極端な話、ある領地で飢饉が起こり大変な時に他領の余剰生産物を回す事もできるのだが、それには効率的な輸送手段が必要となってくる。
そして、効率的な輸送手段の確立は経済圏の形成と発展を促し、互いの依存度が増せば大きな諍いも忌避される傾向が出るだろう。
「ん、悪くは無いですけど…… 向こう側の ”トウドウ” に意見を求めて見ては?」
「餅は餅屋だな…… ゲオルグ殿、その話はリベルディアの件が片付いてからにしよう」
「然り、目の前の問題を何とかしてからですな…… 着きましたぞ」
言葉を交わしながら街路を歩いている内にブレア―ド城へと辿り着いたのだが…… 俺とスカーレットの視線が城門を護る衛兵の手にする武器に吸い寄せらせる。
「おじ様、あれは……」
「所謂、種子島だな」
衛兵達が手にするのは ”銃器” と言って差し支えない火縄銃であり、俺達の興味に気づいたレドリック少年が嬉しそうに語り出す。
「テラ大陸の物に比べれば玩具に過ぎませんけれど、東方諸国経由でもたらされた銃です。リベルディアの竜騎兵達がここ数年で主兵装に採用してます!まだ出回っている数が少なく、王国ではうちが数十丁持っているだけですけど…… 生産性さえ上がれば世界を変える逸品ですよ!!」
という事は相手方も命中精度が悪いとは言え、銃器で武装した飛兵なのか……
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