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58 おっさん祈る

 

「へ~、じゃあ、ダンジョン攻略でこの街に来たのか」



 おっぱいの大きいお嬢さんはレイアと名乗った。


 俺も名乗ろうとしたのだが「おじさん」でいいわよね、と言われて軽く凹んだ。


 まあ、いいけどさ。


「おじさんは一人で飲んでるの? パーティーの仲間は?」


「ああ、今日はうちのたちはダンジョンに潜ってるんだ。今はちょうどダンジョンで野営中だろうな」


「ふ~ん、パーティーのランクは?」


「Cだ」


「じゃあ、今が一番大事なときね」


 レイアはそう言うと果実酒を一口飲んだ。


「そういうレイアは一人なのか? 当然パーティーの連中はこの街にいるんだろ?」


「ええ、でも私は臨時のメンバーなのよ。今回一緒に潜るみんなとは会ったばかりの関係ね」


 おいおいマジか。


 まず他の街から遠征に来てまで潜るダンジョンは最低でもAランクダンジョンというのが相場だ。


 時間と費用を掛けてまで余所よその街のBランク以下のダンジョンに潜ろうという奴はまずいない。


 Bランク以下のダンジョンは基本どこにでもあるし、入手できるものも似たり寄ったりなので、そこに潜ればいいからだ。


 そして、そんな高難易度ダンジョンに潜るパーティーに臨時で呼ばれるレベルの冒険者。


 当然、CとかBとかいうランクではないだろう。


 最低でもA。


 個人ランクがSランクの冒険者ということもあるだろう。


 気になるな。


 聞いてもいいのかな?


 でももっと気になることもあるしな。


 どうしようかな?


「ふふっ、おじさん、考えていることが顔に出るのね。私のことが気になる?」


 えっ?


 顔に出てた?


「いや、冒険者ランクのことも気になるが、もっと気になることがあってだな……」


 俺はそう言ってむき出しになっているレイアの胸元にちらっと視線を送った。


 俺としてはあのデカい胸のランクの方が気になる!

 

「ふふっ、私に対してそんな軽口を叩く男も久しぶりね」


 え゛っ。


 この、何かヤバイなの?


 闇ギルドの首領ドンの娘さんとか?


 下手したらさらわれて竜の谷に捨てられるとか?


「もう、別に取って食ったりはしないわよ」


 俺の百面相にレイアはうれしそうに笑みを浮かべるとグラスをぐいっとあおった。


 いや、おじさんとしては食われる分には是非食べていただきたいところではあるんですが。


 ただ、この歳でお恥ずかしいのですが初めてですので優しくして下さい。




 そんなたわいもない話をしていると、酒場に客の一団が入ってきた。


 その恰好から恐らくは冒険者なのだろう。


 しかし、レイアの姿に気付くと驚いたようになにやら仲間うちで話し始めた。


 何だろうか?


「あら、ちょっと騒がしくなってきたかしら」


 レイアは自分に向けられた視線に気づくと、グラスの残りを一気に飲み干した。


「おじさん、今日は楽しかったわ。また機会があればね」


 レイアはそう言って自分が飲んだ分のお金をカウンターに置くと席を立った。


「ああ、()()()()()()


 俺は万感の想いを込めてそう返した。


 冒険者は一期一会。


 今日酒を酌み交わした相手が明日死体となることなど日常茶飯事だ。


 俺は貴女あなたがどういう素性でどんな女性ひとなのかは知らないが。


 それでも。


 こうして杯を交わした者として。



 ――祈らせて欲しい



 願わくば貴女あなたに幸あらんことを。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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