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39 そのころの古巣7

 ブックマーク・評価をいただいた皆様ありがとうございます。


「ダニー、頼んだぞ!」


「お任せくだせぇ、ボス」


 クランハウスを出発するダニーにクランマスターであるガルムはそう発破をかけた。

 

 この日は、冒険者ギルドの采配でこの街に所属する4パーティー合同での討伐、いわゆるレイド実行日だ。


 ダニーたちはクランハウスを出ると、冒険者ギルドに指定された集合場所へと向かう。


 そこで冒険者ギルドが用意した馬車に意気揚々と乗り込むと馬車は街の城門から目的地に向けて出発した。


 目的地は『北の森』で発見されたグリーンキャタピラーの群生地だ。


 その中心には『女王蛾クイーン』が控えており、周囲を『しびれファレーナ』が固めているという。


 Sランククラン『鋼の戦線』に所属するダニー率いるパーティーは、『鋼の戦線』では最もランクの低いBランクのパーティーである。


 しかし、Aランク昇格直前のBランクということもありその実力については問題ないとされていた。


 今回の討伐隊に参加する他のパーティーは全てAランクのパーティーだ。


 その中でも主戦力となるのは調査隊にも加わっていた主に女性で構成されているAランクパーティーだろう。

 リーダーの女性は『アマゾネス』の二つ名で呼ばれ、最早本名を誰に聞いても知らないと言われるほど二つ名が浸透している女傑だ。


 この4パーティーはそれぞれ『北の森』の入口に到着すると準備を整え、森の中へと入っていく。


 調査時とは異なり、既に森の中での目的地はわかっている。


 先頭は、調査隊に参加していた『アマゾネス』パーティーだ。


 目的地への誘導、案内も兼ねている。


 その次をダニー率いる『鋼の戦線』の面々が進む。


 目的地の近くまで来るとアマゾネスが身振りでレイドメンバーに指示を出した。


 予め決められていた『マヒ予防薬』と『幻覚予防薬』を飲めという指示だ。


 今回の討伐。


 グリーンキャタピラーは単独であれば高ランク冒険者パーティーからすれば駆除するのに何の問題もないレベルだ。


 問題となるのは『女王蛾クイーン』と『しびれファレーナ』の状態異常攻撃である。


女王蛾クイーン』は幻覚作用のある鱗粉により敵に幻を見せるなどの混乱状態を引き起こし、主に同士討ちを誘う。


 一方で『しびれファレーナ』はマヒ毒を含む鱗粉により敵の動きを止め、動けなくなった敵を配下のグリーンキャタピラーが物量で押しつぶすという戦法だ。


 ただ、『女王蛾クイーン』『しびれファレーナ』も大きな蛾の魔物ではあるが、純粋な戦闘力は高くない。


 そのため状態異常にさえ気を付けることができればそこまで討伐は難しくないとされている。


「準備さえしておけば今回は楽勝だな」


「ああ、早く終わらせて酒場で一杯やりたいぜ」


 今回のレイドに参加する冒険者の面々は戦闘前だというのにそんな軽口を叩いていた。


 準備万端で臨みさえすれば問題がないはずのこのレイド。


 誰もが当然の様に必要となる準備をしているつもりだった。


 そのためこの場の誰もが今回のレイドで苦労することになるなど夢にも思っていなかった。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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