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37 おっさん条件を提示する

 皆様からいただきましたブックマーク・評価といった反応レスポンスのおかげで前向きに書くことができています。

 ありがとうございます。

 

「「「「鋼の戦線を辞めた!?」」」」



 ケインの口から出てきた話は俺でさえ予想もしなかったものだった。


「いったいどうしてだ?」


「まあ、それは俺にもいろいろあるさ。でだ。そのうえで、いちAランクパーティーのリーダーとして、これから報告書やその他の事務手続きをお前に頼みたいと思ってな」


 ケインは『鋼の戦線』の創設者であり前クランマスターである先代に拾われ、ずっと『鋼の戦線』に所属していた。

 そのため、自分で裸一貫諸々をしたことはなかったはずだ。

 そうなると、報告書だけの話に留まるものではない。


 しかし、あくまでも『華乙女団』の事務職である俺が他のパーティーのために活動してもいいものだろうか。


 今回のように一回こっきり報告書を作ってやったというのとは訳が違う。


 俺はそう思ってアンジェに視線を向けた。


「おじさん、助けてあげてよ」


 アンジェは俺が視線を向けた意図を理解したのか直ぐにそう言った。


「しかし、いいのか? 勿論、ケインを手伝ったからといってこっちの仕事を疎かにする気は全くないが」



 労働契約では通常、従業員に副業は認められていない。


 俗に職務専念義務とか精力分散避止義務などと呼ばれている。


 要は、本業に専念してしっかり仕事をしやがれ、ということになっている。


「おじさんができるっていうなら信じるよ。もともとボクたちが払う給料も安いしちょっと悪いな~と思ってたんだ。それに昔のとはいえ、やっぱり仲間は大事にして欲しいからね」


 アンジェはそう言ってケインに視線を向けた。


「……わかった。じゃあ、俺と『華乙女団』との労働契約書は副業関係のところを後で変更の手続きをしておこう。で、ケイン。俺が頼みを受けるには条件がある。それを飲んでくれるのであれば受けよう」


「おうっ、で、条件って何だ? 金か? まあ、独立したばかりであれだが多少なら何とかするぜ?」


「いや、金はまあ、相場でもらえればいい。条件というのはな……」



 俺が提示した条件は3つ。


 まずは俺が事務手続をするのに便宜を図ること。


 忙しいとかめんどくさいと言って、勝手にしろ、協力しないというのはナシだ。


 次に報告書作成のための聞き取りで酒場を利用する場合、俺の飲食代はケインが持つこと。



 ――そして最後の1つ



「わかった。先輩冒険者として嬢ちゃんたちに助言や指導をすればいいんだな」


「ああ、残念ながら事務職に過ぎない俺には戦闘やクエストのノウハウ、細かい問題点なんかでは役に立たない。ベテランのケインたちに助けてもらえるならうちも助かる」


 俺がケインに頼んだのは、アンジェたち『華乙女団』のみんなに対して先輩冒険者として助言や指導をして欲しいというものだ。


 同じクランでもない限り、先輩冒険者の教えを受けることができる機会というのはなかなかない。


 冒険者ギルドでは、たまに引退した元冒険者による講習を受けることができるが、やはり現役バリバリの上位冒険者のものはやはり違うと思う。


 ケインのパーティーは近接戦闘職のケインの他にも中衛、後衛のメンバーがいるため、それらのメンバーたちからもアンジェたちに助言や指導をしてもらえることになった。


 この前は冒険者ギルドからの指名依頼を受けることになった。


 今後このパーティー(華乙女団)はどんどんいろいろなことに挑戦していくことになるだろう。


 しかし、それには俺だけでは流石に力不足だ。


 使えるものはどんどん使っていけばいい。


 まずは目指せBランクパーティーだ!

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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