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二十八話:いつもの男子を気になり始めたキッカケを思い返してみた_02

 期末テスト期間も終わり、全教科の答案も返却された終業式前日――。


 何度考え直しても、やっぱりヨッシーに告白する決意は全く揺らがなかった。


 テスト期間中は立ち寄らなかった校舎裏のベンチで今日は、お昼のたまごマヨぱんを食べてから、ヨッシーと雑談の真っ最中だ。

 委員長も居るけど、校舎裏の野良猫たちをスマホで動画撮影している。


 私は全教科の答案用紙を持ち寄って、いつものノリでヨッシーに絡んだ。


「ふっふっふ。中間テストの合計点では私の僅差で勝ちだったっけ?」

「確かそうだね、俺が負けてたはず。……といっても学年トップの委員長と違い、どんぐりの背比べって感じではあった気がする」


「あはは、中の中って感じだったもんね~。でも期末テストはお互いどうだろ? ここは一つ賭けをしようよ~。合計点で負けた方が隠し事を一つ白状するとか!」


 ヨッシーの性格なら、絶対この面倒臭い提案にも乗ってくれるはず。

 このくらいの予想が外れるくらいなら、それこそ告白することを諦めても良い。


「それは別に良いけど……二宮さん、何だか凄い自信だね?」

「いやあ、委員長の予習ノートには助けられたからね~。私は勝つ自信があるし、負けたら負けたで、ヨッシーに一つ伝えても良いことがあるんだ~」


 予想通りヨッシーは提案に乗ってくれたし、合計点も私が勝ってるはず。

 ベンチに座ったまま答案用紙を見せ合いっこして、お互いに点数を確かめる。


「やっぱり委員長の予習ノートの効果は凄いな。俺たち二人とも、中の上レベルの点数を取れちゃってるね。そんなに勉強した訳じゃないんだけどな」

「委員長、恐るべしだよね~。全教科、平均点を上回るなんて私の人生初だもん。え~っと、合計点は……」


 暗算で合計点を考えるのは難しいと思っていたところに、野良猫を撮影し終えた委員長が、ベンチの上に広げられた答案用紙を一瞥した。


「二宮さんの勝ちね。本当に僅差、一点差で二宮さんが勝ってるわ」

「え……マジか、委員長。ぱっと見で暗算したの? 神業すぎないか?」

「ぱっと見と言うほどではないけど、何秒かあれば頭の中でね」


 委員長の早業にヨッシーが唖然としてるけど、私は全く違う理由で茫然となる。


 チャイム五分前に誤答に気付けたからこそ、ギリギリ一点差で勝ったんだ。

『告白相手を隠さず白状してね』とか言おうって回転させていた思考も停止した。

 私から告白したら成功する――そんな前触れのように感じてしまったからだ。


 落ち着くんだ私。それはただの自分の願望に過ぎないはずだから。


「一点差で俺の負けか……。終業式の後まで、隠し事は保留ってのはダメかな?」

「……うん。保留だね、良い……んだけど、あれ? 終業式の後??」

「ほら……その、二宮さん、終業式の日って放課後まで残ってくれるよね?」


 ヨッシーからそう質問された瞬間「もしかして、私に告白してくれる?」という願望により近しい希望が、私の胸の奥でくすぶり始めてしまった。


「もちろんヨッシーと一緒に放課後は残るつもり~。すぐ帰ったりしないから」


 嬉しい予感に決意が鈍ってしまう。違うぞ私。私から告白しないと後がないよ!

 様子を見ていた委員長が、最後の最後にこんなことを口にした。


「ねえ二宮さん。私も明日の放課後は、どこか一人で時間潰ししておくから、何か報告したいことがあったら、RINEで連絡してちょうだい」


 私は『慰めて貰うために呼んじゃうかも』と思いつつ、黙って笑みを返した。



 こうして帰宅した私は、テストの合計点でもし負けてたら、あの場で言うつもりだった隠し事を、十中八九ヨッシーに知られていなさそうな裏アカで呟いた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 夏休みになったら家族全員で海外に行くから、

 音信不通気味になるかもしれない~。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二十八話、終了です。次話は告白回になります。

お互いとも片想いだと思ったままの二人は、果たしてどうなるのでしょうか。

恐らく次回更新は、明日~三日後あたりになると思います。

引き続き、本作をお読み頂けましたら幸いです!

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