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二十七話:陽キャ美少女を気になり始めたキッカケを思い返してみた_01

 期末テストを週明けに控えた金曜の教室、昼休み――。


 普段は不真面目なクラスメイトも、必死に期末テストの勉強をしている。

 この高校は二年に進級する際、一年時の期末テストによって学力を判断されて、それに応じたクラスに振り分けられるので、今後の進路に影響するからだ。


 先日の裏アカの一件もあったことだし、テスト勉強に打ち込む前に、自分の中で色々と心の整理をしてみたのだが、かえって勉強に手につかなくなってしまった。


 とある決心だけは出来たのだが……そんな俺に、陽キャ美少女が声を掛ける。


「ねえヨッシー。期末テストの勉強はしなくて良いのかな~?」

「そういう二宮さんも、復習しておかなくて大丈夫?」

「う~ん。委員長から毎回貰ってた予習ノート見直しで、私は手一杯かな~」

「でもあのノート、テスト対策も兼ねられる程の代物だから、それで大丈夫かも」


 ただの雑談のように感じるかもしれないが、俺は少しだけ違和感を覚えた。


『引っ越しで離れるのだから、二年時の進級も関係ない』と考えられるし、実際に引っ越すのだから、二宮さんが期末テストを疎かにしても……違和感は……。


 当然俺は焦燥感を感じているが、よくよく注視すると、何だか二宮さんも普段の陽キャ美少女っぽさは控えめで落ち着きがない。


「ヨッシー! もしも、もしもの話なんだけどね! 例えばこの高校の女子から、好きだ好きだ好きだよ~! って連呼されたら、ヨッシーならどう反応する?」


「かなり慌てふためくだろうな。と同時に『罰ゲームで告白させられてる?』とか現実性の高そうな想定をしてみたり、どうにか落ち着こうとすると思う」


「えぇ~? なんでヨッシーって、そんなに自己評価が低いのかな?」

「正当評価では……? それなら委員長にも聞いてみる? おーい、委員長」


 俺の右隣の席に座っている委員長を呼んだが彼女は、クリア率一%を切っている難ステージを前に絶望したゲーマーのような表情になっていた。


「……何やら私に、質問したいことが有るみたいだけれど」

「話は聞いてたみたいだね。俺って告白したくなるような男子ではないよな?」


 二宮さんが食い入るような視線で、委員長を見つめ始める。

 委員長は十秒ほど考え込んで、何故か死地に飛び込むような気迫で答えた。


「吉屋くんを好きな女子がいるって、私は思うけれどね」

「ヨッシーのことが好きな女子? 誰それ!?」


 まだ昼食を楽しんでいる生徒もいるので多少は騒がしいとはいえ、人目がある。

 俺の机を取り囲むようにして、委員長と二宮さんはお互いに身を寄せた。


「あのね二宮さん。貴女だからこそ、分かるでしょう?」

「ぜ、全然分からないし! 竹内さん? ま……まさか委員長!?」


「いま私、口を滑らせちゃったと焦ったくらい、そのまま伝えたのだけれど……。もう埒が明かないから直接言ってあげるわ。耳を貸してちょうだい」


 委員長は二宮さんと身を寄せ合ったまま、彼女の耳元で何かを囁いた。

 すると二宮さんの頬が、どんどん朱色に染まっていく。


「……っ! へ、へぇ~っ! そ、そうなんだ~! それホントかな~!」

「ごめんなさい二宮さん。そういう反応せざるを得ないわよね」


 女子だけの内緒話が終わると同時に、再び三人での密談が始まった。


「そもそも二宮さんの心配は杞憂に過ぎないわ。もし私が吉屋くんに告白しても、空振りに終わるでしょう?」

「おおっ! そこのところ、どうなのかなヨッシー?」


「委員長には悪いけどそうだね。近々告白でもしようかな……とか、血迷ったこと考えたくなるような女子がいるから……」


 俺のその言葉に、二宮さんも委員長も、一瞬だけ時が止まったように固まった。

 僅かな硬直のあと、言葉を返してきたのは委員長だけだった。


「もう七月だと言うのに、誰かさんたちに春が来るのかしら。なんてね」

「……こ、この話は止めにしないか? 今の話は冗談の類とでも思ってくれ」


 何を莫迦正直に今後の予定を言っているんだ俺は。コミュ障ここに極まれりだ。

 現に二宮さんは『本気か冗談、どっち?』と訝しむ顔つきで黙り込んでいる。


 期末テストの勉強に手がつかなかったのは、裏アカの件も勿論あるが、心の中に渦巻いていた焦燥感の原因――その感情を最近ようやく認識できたからだ。


 委員長は『俺を好きな女子がいる』と先程言っていたが、引っ越し直前となった二宮さん以外のことを、悠長に考えている暇はない。


 俺は……一学期の終業式の日、二宮さんに告白すると決意していた。

第三章《彼氏彼女の間柄?》も、そろそろ終わりに近付いてきました。

引き続き、本作をお読み頂けましたら幸いです!

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