表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/79

二十四話:休日に陽キャ美少女と服選びしている最中、事件が起こった_01

 休日。それは学生にとって、甘美な響きを持つ言葉ではないだろうか。


 少し前までは俺も、休日を喜ぶ一般的な感性を持つ学生だったが、事情は変わり夏休みに二宮さんが引っ越すとなると、そのタイムリミットを意識してしまう。


 自室のベッドで寝っ転がっている俺に、母さんがやってきた。


「衛司。そろそろ夏になることだし、このお金で服を買い足してきなさい」


 そう言われて一万円を渡され、俺に休日のミッションが与えられた。


 馬鹿の一つ覚えみたいに、また黒色系統の服と適当なGパンを購入してきたら、今度こそ母さんに呆れ果てられるだろうな。


 どうしたものかと悩んでいると、二宮さんからRINEメッセージが届いた。


『おはようヨッシー! 今日って暇~?』

『暇、ではないかも。夏用の服を買おうと思っててさ』

『そうなんだ! なら今日のお昼、一緒にショッピングモールを散策しようよ~』


 さらりと二宮さんから、渡りに船な提案がされた。

 ファッションセンスの良い二宮さんに、服選びをお願いできそうな雰囲気だ。


『俺の服選びとか退屈じゃないか? それでも良ければ頼む』

『いやいや、超楽しそう! 今写真撮ったり色々しててね。午後一時くらい集合でお願いできるかな?』


『全然構わないぞ。軽く昼飯を食べてから、モールに向かうよ』

『了解♪ じゃあ午後一時ね! 楽しみに待ってる~!』


 あっさり約束が交わされたが、二宮さん写真を撮っているのか。

 もしかして読者モデルの仕事直後に駆けつける感じだったりするのかな。


 どちらにせよ忙しそうなのに、俺の用事に付き合ってくれて嬉しいと感じた。




 午後一時、市内最大のショッピングモール待ち合わせエリア――。

 スマホを片耳に当てながら、誰かと通話中らしき二宮さんを発見した。


 暖色の半袖ニットに、うっすら透ける素材のフレアスカートというシンプルな組み合わせの服装をしている。

 しかし二宮さん自身のスペックが良すぎるせいで、相当可愛らしく見える。


 先日の予告通り散髪してセミロングへ戻したようだが、後ろ髪の上半分をアップにして、サイドの編み込みで二宮さんらしく女子力高めにアレンジされた、ハーフアップの髪型になっていた。


「待ってたよヨッシー! たった十分くらいだけどw」


 通話先の相手に一言断ってスマホを切った二宮さんは、俺に駆け寄ってくる。

 この人混みで軟派男に声掛けされていないのが不思議なくらい可愛い。


「その髪型、新しい休日お出かけ仕様かな。さすが現役読者モデル、俺が来る前にナンパされてなかったのが疑問に思えるほど可愛くて似合ってる」


「やった! 可愛いって褒めてくれると頑張った甲斐あるよ~! あとプチ情報、友達と笑いながら通話していると、ナンパされにくいのです」


「……俺は今、別次元すぎる生活の知恵を知った気がする」


 白色無地Tシャツに適当なGパン姿の冴えない俺は、格の違いに呆然とした。

 まさしく規格外の陽キャ美少女二宮さんはニコニコ顔で、俺に宣言する。


「本日はヨッシーの夏服選びに、全力を尽くすことを誓います!」

「ありがとう二宮さん! これほど心強いアドバイザーは居ないよ!」


 こうして男女の友情ここに極まれり、という固い結束力を発揮し、ショッピングモールをまわって服選びすることになった。




 さて――。

 俺の服選びだが、開始直後に難局が訪れた。


「彼氏さんですか!? カッコイイですね! バンドでボーカルしてそうですね!! はい、夏服選びですね、かしこまりました! 何かご希望はありますかー!?」


 カリスマ店員を絵に描いたような人に捕まってしまい、荒れ狂う濁流のように、接客セリフを畳みかけられてしまったのだ。


 コミュ障の俺は、完全に頭が真っ白になり、何も返事が思い浮かばない。


 二宮さんは二宮さんで、TシャツGパン野郎の俺を、彼氏だと勘違いされたのが恥ずかしいのか、あっという間に頬を紅潮させた。


「た……確かに声も好きだけど、か、彼氏とかでは! 二人で自由に店内を見せてもらえると、ありがたいのですが!」

「すみません! ごゆっくりどうぞーっ! 何か有ればお呼び下さいーっ!」


 RINEの話の流れでショッピングモールを選んだが、コミュ障の俺にとって、ここは処刑場か拷問所めいた場所かもしれない。


「し、死ぬ……」


 思わず本音が漏れたが、二宮さんも真っ赤な顔のまま呟いた。


「わ、私も心臓がバクバクしすぎて死んじゃうかと……」

「俺がバンドのボーカル担当って、お世辞にしても外れすぎてるよな」

「そうかな? 前髪長めだし髪を振り乱しながらMV(ミュージックビデオ)で歌ってそうだよ?」


 二宮さんは即興で口パクしながらMVに映るバンドマンのモノマネをする。

 またそれが見事にそれっぽいので、服選びの最中なのに笑ってしまった。


「ははは、確かにそんな感じで映ってるイメージがあるかも。そろそろ俺も、髪を切らないといけないな。視力がさらに下がったら困るし」

「メガネ男子のヨッシー……うん、アリだね! 後で伊達メガネも探してみる?」


 いくら二宮さんのコミュ力が高いとはいえ、何だか自分に少しだけ自信が湧いてきそうになってきた。


 恐るべし、コミュ力カンストの二宮さん。褒めスキルも高いとは。

この続きは今日か明日に投稿します。後半はさらに赤面続きです。

続きの内容は『事件は(中略)試着室で起きてるんだ!』という予定。

じわじわブックマーク登録5,000件に接近中です。お読み頂き嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 二宮さんにつられてるのかなんだかんだで陽キャ敵行動を取れるようになってきていますねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ