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二十二話:放課後に陽キャ美少女とラーメン屋ってデートなのだろうか_01

 最前列席になった俺と二宮さんだが、定期的に委員長から予習ノートを用意して貰えるようになり、抜き打ちの小テストにも動じなくなってきた。


 本日最後の山場、鬼怒川先生の英語授業を凌ぎ切った俺と二宮さんは、授業終了のチャイムと同時に、二人でビシッと勢いよく親指を立てる。


「ヨッシー! まるで自分の力ではないかのように、何故か授業が分かるね!」

「確実に俺たちの力ではなく予習ノートのお陰だけど、怖いものなしだな!」


 隣同士でお互いの健闘を称えていると、俺のお腹から「ぐぅぅう~」という少し恥ずかしい空腹サインが鳴った。


 俺は二宮さんから、いつもの『ログインボーナス』としてもらった一口チョコを頬張り、放課後どう過ごすかを考える。


「帰宅部とはいえ、毎度毎度すぐ家に帰るのもなあ。母さんに『衛司、もしかして友達に嫌われちゃったの?』とか心配されたりするからさ」


「二宮さんっていう恋人と仲良くしてるよ、って答えたらどうかな?」

「それは俺の母さん、絶対に冗談として受け取ってくれないからダメかな」


 俺が風邪で寝込んだ例の件で、二宮さんは俺の母さんに気に入られているのだ。

 そもそも俺の母さん、二宮さんを彼女と勘違いしたままだった気がする。


「ねえヨッシー。家にすぐ帰るつもりがなければ、駅前に行ってみたらどう?」

「駅前かあ。高校前のバス一本で行けるけど、何かイベントでもあるの?」

「ううん、食べ歩きでもどうかなって。さっき『ぐぅう~』って鳴ってたし」


 どうしてだろうか。女子にお腹の音を指摘されるのって、無性に恥ずかしいな。

 俺は鞄に教科書をしまいながら、照れ臭さを誤魔化す。


「よし、決めた。今日は駅前を散策して食べ歩きしてみよう」


 席から立ち上がる俺に、右隣で話を聞いていた委員長が声を掛ける。


「最寄駅から一駅ほど移動すれば、この高校の生徒が少なくなるからオススメよ」

「そういうのは、あまり気にしない方だけど」


「だって二宮さんと一緒に食べ歩きするなら、邪魔者は少ない方が良くない?」

「……二宮さんと?」


 当然のように同伴前提で話を進める委員長に、二宮さんも乗じてきた。


「ヨッシーさ。恋人……じゃないんだし、誰も咎めないんじゃないかな?」

「だとしても学生デート御用達みたいなエリアには行きづらい気がするぞ……」


「それは確かに~。だったら、ニンニクの香りただよう中華料理街とかは?」

「お、言ったな二宮さん? 適当にたこ焼き屋やアイスクリーム屋とかで済まそうと思ってたけど、一駅隣の超ニンニク背脂系ラーメン屋へ行くことに決めたよ」


 女子が行くには躊躇しそうなラーメン屋! しかもニンニク推し! 背脂!

 もはや女子力カンスト陽キャ美少女の二宮さんが行く確率ゼロの場所だ。


「ふむふむ。『頑固夜一徹』って背脂醤油系のラーメン屋だよね、知ってる~」

「えっ、知ってるの!?」


「お兄が一人で行くのが怖いからって、無理やり連れて行かれたんだけど、すごく美味しかったよ~! 兄妹揃ってリピーターになっちゃったくらい!」


 裏アカ情報だとコミュ力少な目らしいお兄さんか。人見知りなのかな?

 お兄さんは本当にコミュ力が無さそうで、勝手に親近感を覚えてしまいそうだ。


「じゃあ二人で行ってらっしゃい。私はその手のラーメンは遠慮するわね」


 委員長が流れるように伝え終わると、二宮さんも俺に催促してきた。


「さすがに女子一人でニンニク背脂系ラーメン屋に行くの恥ずかしいから、ついてきてほしいな~……チラッ」

「チラッて口に出して言う人、初めて見た……」


 それがまた可愛いのが、二宮さんのズルいところだと思う。


 教室に残っているクラスメイトたちに「陽キャ美少女の言動に付き合うモブA」と思われている内に、俺は二宮さんと一緒に教室を後にした。




 午後五時前後、ラーメン屋『頑固夜一徹』店内――。


 この時間だとサラリーマンでごった返している訳でもないので、割と客は少なくガラガラという印象だ。

 俺と二宮さんは、誰も座っていない奥手側のカウンター席に腰を下ろす。


 空いている時間帯だからか、強面の店長自ら注文を聞きにやってきた。


「ん、久しぶりだな……。ネギ多め背脂少なめ注文の嬢ちゃん……」

「わお、一ヶ月くらい経ってるのに覚えてくれてる!」

「まあ……俺もこの道長いからねえ……」


 頑固夜一徹という店名でも納得がいく異様に鋭い眼光の店長が、俺の肩に手を乗せて、訳知り顔で呟いてくる。


「だから初見の客でも一目見れば、ある程度のことは分かっちまうのさ……」

「マジですか? 例えば俺なら、何が分かりますか?」


「フッ……。嬢ちゃんから告白されたらOKしそうな顔をしているな……」

「俺は、そんな……」

 高望みしません――と答えたかったが、あまりにも鋭い眼光に臆してしまった。


「ヨッシー、店長の発言ホントかな!?」


 二宮さんが物凄い勢いで食いついてきたが、「そこまで間違ってないし、絶妙に反応に困る精度の発言だ」と言う訳にもいかず、頬が赤くなる感覚に襲われた。

この続きは今日か明日に投稿します。陽キャヒロインあたふた甘々の予定。

※先日、初めてレビューを書いて頂けました! 誠にありがとうございます!

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