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序幕話:俺と委員長しか知らない。陽キャ美少女が引っ越し予定だとは_02

 二宮さんが引っ越すという衝撃的な呟きを見てしまった翌日早朝――。


 俺は委員長からのRINE通話コールで、ゆっくりと目を覚ます。


「もしもし、吉屋くん? 昨日の夜、二宮さんの裏アカを見たのだけれど……」

「あっ……委員長も見たんだ。白山ナリサとして、何か相談は来なかった?」


 委員長はなろう作家・白山ナリサとして、匿名で二宮さんとコンタクトを取れる間柄なので、一縷の望みを賭けて訊いてみた。


「こちらから質問してみたけど『先生と言えど住所関係はプライバシーです☆』と返されてしまったわ」

「さすがにオフ会する訳でもないし、匿名の先生に住所先は言わないか……」


「それにしても、リアルで知り合いの吉屋くんや私にも教えてくれないなんてね。二宮さんの性格からして引越しするなら、すぐ教えてくれそうなのに……」


 確かに委員長の言う通り、二宮さんは裏アカでしか言及していない。

 あれだけ賑やかさをこよなく愛する二宮さんが、事実を隠すということは……。


「やっぱり近々、どこか遠くに引っ越しちゃうんじゃないのか?」

「……っ」


 スマホ越しでも、委員長が息をのむ様子が伝わってきた。


「しんみりさせたくないからと、引越し直前まで伏せるつもりなら辻褄が合うぞ」

「それならもう、遠慮は要らないわね……」


「委員長……?」

「吉屋くん、今日からもっと二宮さんとの距離を詰めていきなさい。光陰矢の如しだって貴方も昨日言ってたわ。すれ違いしてる場合じゃなくなったの」


「……!」


 これまで感じたことがない程の委員長の気迫に、今度は俺が息をのまされる。


 ただ漫然と、でも楽しい高校生活が続くと思っていたが、間違っていた。

 委員長との通話も終わり、高校の制服に着替えながら俺は、決意を固めた。


「二宮さんが引っ越してしまうんだ。コミュ障とか言ってられないよな」




 委員長との通話から数時間後、朝の教室――。

 俺の隣の席になった二宮さんが、教室に入ってきた俺を見て手を振る。


「ヨッシーおはよう! ほら、特等席が空いてますぜ~」

「おはよう二宮さん。隣同士で話しやすいし特等席だよなホント」


 そう言い席に座って二宮さんの方を向くと、少しだけ頬が赤らんでいた。


「なんか今日のヨッシー、いつになくストレートだね?」

「うーん、自分がコミュ障だと言い訳してる場合じゃなくなった……みたいな? あと、最前列の俺たちの席なんだけど、授業中に指名されやすい特等席でもある」


「……えっ!? 昨日はやけに当てられるなーって思ってたけど、そんな罠が!?」


 俺から説明を聞かされた二宮さんは、愕然とした様子で目を見開く。

 視力が良いのに最前列を希望したので、てっきり想定済みかと思っていた。


「うぅ……! 授業で指名されても良いように、予習に時間を割かないといけないとなると、貴重な休み時間も費やさなければ~……!」


 頭を抱える二宮さんに、黒髪ロングの美人が救いの手が差し伸べる。

 中学時代に三年連続学年トップの才媛、委員長も教室にやって来たのだ。


「私のノートを貸してあげるわ。自分で言うのも何だけど、この前の中間テストで学年トップだったし、分かりやすい予習ノートになっているはずよ」

「「い、委員長……!」」


 学力平均レベルの俺と二宮さんは、彼女の神対応に声をシンクロさせる。


「昨夜パパッとまとめた急造品だけど、二人で自由に使ってくれて良いからね」

「「女神かな?」」


「そうね、恋の女神です。なんてね」

「え?」「委員長、最高!」


 ここで俺と二宮さんの声が分かれて、委員長はガクリと落胆の表情を見せた。

 委員長に声を掛けようとしたが、二宮さんが笑顔で俺にノートを広げる。


「見てこれ凄いよヨッシー! 先生が質問してきそうな難問箇所リストとかも書いてある! これはチート武器だね! 授業で無双できそう!」

「……本当だ。今後一週間は、この予習ノートだけで凌げるんじゃないのか」


 感謝を伝えるべく委員長の美顔を見てみると、僅かだが目にくまが出来ていた。

 黙って頭を下げると、委員長は徹夜明けだろうに微笑んでくれるのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 夏休みに入ってから、引っ越しするっぽい!

 それまで特等席を満喫しなくちゃね!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「一学期を終えてからの引っ越し、か……。時期としては適切だな」

 今の時代、スマホさえあれば何処に行こうと、通話くらい出来るだろう。

 とはいえ二宮さんが教室から居なくなった光景は……あまり想像したくない。

 隣の席で満面の笑みだった二宮さんを思い返すと、何故か俺の心臓は高鳴った。

序幕話、終了です。

ヒロインへの意識が強まったところで、次話から本格的に第三章開始です。

主人公と一緒に過ごしたい系甘えたがり陽キャヒロインに対して、

第三章では主人公も積極的に動き出すので、本章から甘々展開が続く予定です。

※ブクマ登録ご評価ご感想のお力添えで、10万文字近くまで来れました!

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