十三話目:体力テスト実施を知った陽キャ美少女がやる気に満ちている_02
「じゃあ私とヨッシーは、廊下のモップがけをします!」
「俺と二宮さんは廊下担当? なら竹内さんと委員長は教室掃除を頼んで良い?」
「OK! 手伝ってくれるだけでありがたい! それじゃさっそく掃除開始!」
こうして四人で二階に上がり、俺と二宮さんの朝練(兼掃除)は始まった。
バケツの水にモップを浸しながら、俺たちは二人きりの廊下で準備を進める。
「こんなに朝早くからヨッシーと一緒って、何だか新鮮でワクワクする~」
「久しぶりに自転車を使って登校したよ。俺は既に体力枯渇って感じだ……」
「まあまあ、そう言わずに~。それじゃあヨーイドン!」
「えっ。競争するのか!」
二宮さんは結構な前傾姿勢で、やや埃っぽい廊下をモップがけしていく。
さすがに女子より足が遅いというのは恥ずかしいので、俺も水を含んだモップを廊下に押し当てて全力で駆けて行く。
割と埃っぽい廊下のモップがけなので、二宮さんは筋力的にバテてきたのか、ペースが徐々に落ち始め、何とか俺でも廊下の端へ到着する前に追い抜けた。
「ぜぇ……はぁっ……ぜぇ、はぁ……。こっ、これはかなりしんどい……」
「さあヨッシー。シャトルランの要領で来た道を逆戻りだ! レッツゴー!」
「え、ちょ、嘘だろ!」
シャトルランを意識してか、二宮さんは先程よりも速くモップを掛ける。
どうやら先程の二宮さんの走りは、全力疾走ではなかったようだ。
「はぁっ、はぁ、ヨッシー、私についてきて!」
「うぅおぉっ……! 朝練初日からハードだ……!」
何とか元の位置まで走り抜けて、置いてあるバケツの水でモップを綺麗にする。
そして再びペースを上げて二宮さんと廊下を走って、必死にモップを掛けた。
本来のシャトルランより廊下は距離が長いので、掃除が終わる頃には、俺も二宮さんも汗だくとなり、何だかんだで初日から結構な運動量となった。
「モップ掛けお疲れさま~。水道で手も洗ったことだし、これはどうかな?」
「……リンゴ?」
手荷物から丸いリンゴを渡された俺は、二宮さんに可愛らしく微笑まれる。
「握力が七十キロくらいあれば、リンゴって握りつぶせるみたいだよ~」
「待って、さすがに俺には無理だと思うぞ。まあ握力テストと思ってやるかな」
ダメ元でリンゴに力を加えてみるも、ミシリと音が鳴るだけで終わった。
これは仕方ないよなあ……と思いつつリンゴを返そうとしたが、いつの間にやら二宮さんの手には、鋭利なナイフが握られていた。
「うわぁっ! ナイフ!? 俺にリンゴが割れなかったからってそんな!?」
「ヨッシー……w これ、果物ナイフw 普通にリンゴを切って食べるだけ~」
「あ、ああっ! そりゃそうだよな!」
盛大に勘違いしてしまったので、自分でも分かるくらい頬が紅潮していく。
まな板も無い状態で器用にリンゴを切り分けた二宮さんは、手荷物から使い捨て素材の皿を用意して並べてくれた。
「リンゴみたいに赤くなってるヨッシーに、あーんしてあげよう」
「はい、謹んでお受けします……」
「おや? あーん攻撃に動じないとは~」
既に果物ナイフで動揺しまくる醜態を晒した俺に、恥ずかしさは無かった。
普通に美味しいので二宮さんが口に運んでくるリンゴを食べていると、教室掃除担当の委員長と竹内さんも、俺たちが居る廊下へとやって来た。




