十一話目:風邪がうつったようだが、陽キャ美少女がお見舞いに来た_03
「それに二宮さんは、自分だけが楽しいみたいに言ってるけど、俺も楽しいんだ」
「そ、そうなの?」
「俺って二宮さんみたいに自分から楽しく話ができるタイプじゃないだろ? でも二宮さんに話し掛けられるのは迷惑じゃないんだ。むしろ楽しいと思ってる」
あまり俺の方から心情を吐露したことがないので、充分この発言でも気恥ずかしいが、俺の言葉を聞いた二宮さんが、再び俯いて小さく肩を震わせる。
「……ふふ、えへへ」
「えっと……二宮さん?」
「私と話すのが楽しい、かぁ~。ヨッシーってさ……」
「お、おう」
「とびっきりの変人だぞ☆ ふふっ、ふへへ♪」
「に……二宮さんが壊れた!」
俯くのを止めた二宮さんは、何がそんなに嬉しいのか緩み切った顔をしていた。
「そりゃ壊れますとも! ヨッシーに破壊力のあること言われたんですから!」
「よ、よく分からんが、二宮さんの思い違いが解消されたんなら良かった」
二宮さんから暗い表情が見られなくなったのを確認できた俺は、ベッドに腰かけて話すのを止めて氷枕に頭を乗せ、布団を首元まで被った。
「今日はお粥作ってくれたり色々ありがと。二宮さんみたいに明日までに治すよ」
「うん! 絶対に明日は学校に来るんだぞ~! はい、指切りげんまん~」
二宮さんから手を差し伸べられたので、俺は布団から右手を出して小指を結ぶ。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます。指切った!」
懐かしい指切りげんまんをして、俺は再び布団に右腕を突っ込んだ。
「よし。それじゃあ俺は、よく寝てよく汗かいて風邪を治すことにするよ」
「そうだね~! だって指切りげんまんの『拳万』って、握り拳で一万回殴るって意味があるとかないとか」
「し、知らなかった……。『げんまん』ってそんな凶悪な意味だったのか……」
子供の頃によく行った指切りげんまんのほぼ全文に、バイオレンスな意味が込められていたと知り呆然とする俺を見て、二宮さんがおかしそうに笑った。
「あははっ。もし明日来れなくても、ヨッシーを一万回も殴ったりしませんよw」
「おっ? も……ということは、一回くらいは軽くグーで殴るのかな」
「もし明日ヨッシーが来なかったら、寂しいな~って一万回思うだけですね~」
茶化されてると思ったが二宮さんの瞳を見るに、どうやら本気で言ったらしい。
俺のクラスカーストが今より高いか、二宮さんがクラスカースト最上位の陽キャ美少女でさえなければ、異性として意識してしまって、ドキリとさせられていたかもしれない。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、帰り支度を済ませた二宮さんが呟く。
「お粥で身体ポカポカの内に寝てください~。さっそく寂しいですけど、今日のところはお暇しますね」
なんてことを笑顔で俺に伝えてから、二宮さんは母さんに見送られていった。
今度は二宮さんを見送った母さんが騒々しく、俺の部屋に入ってくる。
「姫子ちゃんって言うのよね? 初めて姿を見た時、かなり垢抜けていて凄く可愛い分、派手に遊んでるかもと思っちゃったけど、炊事も出来て気配り上手なんて最高じゃない! 絶対彼女と別れたらいけないからね。母さん、あの子との仲だったら応援するから!」
「……彼女じゃないぞ。母さんがそう思いたくなるのは分かるけど違うからな」
俺は母さんの誤解を解く気力は湧かず、布団を頭まで被ってやり過ごした。
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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
いつもの男子のお母さんみたいな人とだったら、
嫁姑問題は起きなさそうと思った!
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来訪から数時間後、だいぶ身体が楽になったので裏アカを閲覧した。
「二宮さん、さっそく母さんの心を掴んでたみたいだからな。きっと二宮さんならどんな姑さんが相手でも、持ち前のコミュ力で嫁姑問題なんて起こさないだろう」
今日は二宮さんの寂しがり屋な一面が見れたが、いつも以上に可愛かった……等と振り返っていると、頬が熱くなってきた。
まだ風邪気味だと思った俺は再び布団を被った。
第一章、終了です。第二章から主人公への包囲網がさらに狭まります。
明日更新の次話は幕間として、ヒロインの日常話を投稿予定です。
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