035:引っこ抜け! シケテール草!
冒険者と言えばクエストだろう。
サンとパーティを組んだ俺はさっそくクエストを受けてみることにした。
「目標地域はこの辺りね」
というわけで俺たちはネラレッドの森からさらに南にやって来た。
見渡す限りが緑のカーペットみたいな広い草原だ。
俺たちが受けたクエストはEランクの薬草採取クエスト。
ギルドの伝統のようなモノで、新入り冒険者が最初に受けるクエストらしい。
「クラウドさんならもっと高難易度のクエストを受けていただいても問題ないと思いますけど、ギルドの伝統なので」
「大丈夫ですよ。次はもっと楽しそうなクエストをご用意しておきますから」
「あっ! そういえばAランクのクエストが入っていたような気がしますね。確保しとかないと♪」
などなど……カトレアさんの言ってたことが不安でしかないのだが、今は目の前のクエストに集中しよう。
このクエストは一人でも問題ない簡単なクエストだ。
でも今回はせっかくなのでパーティとしてクエストを受けた。
なので今はサンと一緒だ。
「今回のターゲットはシケテール草よ。水分をたくさん吸うから乾燥剤として使われる薬草ね。この辺りにはわりとどこにでも生えてるからすぐ見つかると思うわ」
サンが依頼書を見ながら説明してくれる。
乾燥剤が薬草に含まれるのかはスルーしておくか。
少なくともこの世界では薬草なのだろう。
「詳しいのか?」
「ママの手伝いで薬草の調合なんかもやってたから。薬草には詳しい方よ」
その表情はどこか誇らしげだった。
「へぇ、なるほどな。そのシケテール草ってどんな見た目なんだ?」
「小さな風船みたいな水色っぽい葉っぱよ。見ればすぐわかると思う。たしか向こうに群生地帯があったと思うわ」
サンは草原のさらに南を指さす。
「だったらそこから見てみるか。案内たのむよ」
「うん、まかせて! 今日は私が役にたって見せるからね!」
気合十分なサンについて緑の大地を進んだ。
所々、草木が踏みしめられて道のようになっている。
薬草採取は良くあるクエストの1つで比較的に安全でもあるため、その採取スポットであるこの草原は人の行き来も盛んなようだ。
「おっ」
しばらく歩くと分かりやすく水色の草が生えまくっていた。
周囲の水分を吸っているのか、たしかに風船のように膨らんでいる。
「わかりやすいな」
「でしょ?」
クエストのクリア条件は「シケテール草の納品」だけで、クリアのための数の指定はない。
最低でも1つは持ち帰ればクリアになる。
だが一方で最大数には制限がある。
これは乱獲によって環境を破壊しないための配慮だろう。
納品クエストは基本的に「持って返った分だけ買い取る」というスタイルらしい。
できるだけたくさん持って返った方が金になるワケだ。
あとはボーナス条件があったりする。
それを満たしていれば追加で報酬がもらえるし実績としても加算される。
「このクエストのボーナス条件は『高品質な納品物を10本以上納品すること』ね」
「なんか難しそうだな」
「そうでもないわよ。シケテール草の『高品質条件』は傷がない事だけ。葉に傷があると水漏れが起きたりするから困るの」
「なるほどね」
「でもちゃんとした手順を踏んで採取すれば大丈夫よ。私に任せて!」
今日はサンが心強い。
森でのポンコツっぷりとは大違いである。
「さぁ、たくさん稼ぐわよ!」
サンが気合十分な様子で腕をまくった。
高ランクのクエストを達成したばかりのサンだが、魔術具関係でビア様に色々と支払う必要があったらしく報奨金はのほとんどは手元に残らなかったらしい。
そして残りも先日の俺とのディナーなどで消し飛んだというワケだ。
事情を知っていればもう少し注文を控えたのだが、すっかり大金が舞い込んだものだと思い込んでいたので遠慮なく楽しませてもらった。
その分、俺もがんばろう。
「それで傷けないように採取するにはどうしたら良いんだ?」
まずは手順を教えてもらう。
やるからにはボーナスまでクリアしたくなるのはゲーマーの性質というものだろうな。
「まずは脱水ね!」
「脱水?」
「シケテール草は膨らんでいる時の扱いが一番危険なのよ。水分を吸って膨張した状態だとすごく破損しやすくなっちゃうの。だから採取する時にはちゃんとしぼって脱水しておく。そうしないとすぐに品質が下がっちゃうのよね。初心者が良く落ちる罠って感じよ!」
たしかに引っこ抜いて持って帰るだけなら誰にでもできるだろうな。
水分を吸った状態だとそれなりの重さになるだろうが、ギルドでみた屈強な冒険者たちなら何も問題ないだろうし。
そうやっていきなり引っこ抜こうとすると『品質』が下がるわけだ。
「こうやって絞るだけだから簡単よ。クモルもやってみて。たくさん生えてるから失敗しても大丈夫だし!」
サンはしゃがむと近くにあったシケテール草を掴んでゆっくりと押しつぶす。
――ギュウウウ。
水分を失ったシケテール草は、サッカーボールくらいの大きさから手の平サイズにまで小さくなった。
「なるほど」
確かに簡単そうだ。
俺もマネしてやってみると、その表面は思ったよりも柔らかかった。
――ギュウウウ。
本当に風船みたいで割れそうな感触だな。
だが水分が抜けるとだんだんしっかりとした硬さになってくる。
ゆっくりと水を抜いていき、しわしわで硬くなったら引き抜く。
「こうか?」
「うん、良い感じね。初めてにしては上出来よ。さすがクモル」
俺の記念すべき初採取品をサンが褒めてくれる。
問題なく高品質の品になったようだ。
「たしかに簡単だ……けど、意外と時間がかかるな」
「そうなの、これが厄介なのよ。いっきに水分を抜くことが出来れば良いんだけど、脱水するまでが一番破損しやすいから……ママなら水の魔法で一瞬で脱水しちゃうんだけど、私にはそんなの使えないし」
こうして1本1本を手作業でやっていては確かに日が暮れそうだ。
目標である10本には足りるだろうが、それだけだと二人分の稼ぎとしてはあまり良くない金額で終わってしまう。
サンの魔術か俺のスキルを使って上手く効率化できれば良いのだが……。
「ふむ……」
乾燥させるなら熱なんかが有効そうだが、着火するための用意なんてしてきていない。
そもそもこれだけ薬草に詳しいサンも火なんて用意してこなかったのなら、多分その方法には何か問題があるのだろう。
シケテール草は熱に弱かったりするのかもしれない。
他には、元の世界でなら脱水には風や遠心力、それに振動なんかも使われていた気がする。
「……振動か」
そうか。
良い事を思いついたも知れないぞ?
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