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#70 踏み入った、氾濫した森 11

 怯えと恨みがましさが同居したような視線を俺や眷属達へ向けてくるエルフにドワーフや獣人といった集落の住人達が順番に転移していく。

 ティータとティーエが楔を操作し1回で10人ずつ位を砦へ送り出し暫く二人でピストン輸送を続けてくれていると、戻ってきたティーエやティータに合わせてネイミやバルバスら招集した眷属達が一緒にこちらへやってきた。

 突然現れた眷属達に案の定、集落の住人達が驚いてパニックになり掛けるが慌ててティータやティーエが鎮めに入る。

「心配いりません。この方たちは皆リク様の眷属です」

「大丈夫ですよ。今来たみなさんは無為に力を振るう乱暴な方達ではありません」

 続けてヴォーガイ達も対応を始めるが、住人を驚かせた当事者たちは気にした風もなく俺の傍までやってきた。

「みんなを連れてきたわよ、リク。それと指示通りにアグリスとアデルファへ向こうの楔の守備をちゃんと頼んで来たから」

「ご苦労様、ネイミ。他のみんなもすぐ呼び出しに答えてくれて、ありがと。それでこっちに来てもらった理由をネイミから聞いてるか?」

「件の群れとの再戦だと聞いておりますぞ。腕が鳴りますな」

 答えてくれたバルバスだけじゃなくダルクやギャルドも気合の入った様子で頷いてくれる。

「概ねそれで合ってるが追加がある。確かめたい事があってこの集落の戦士達へも戦闘参加を呼び掛けた。今は返答待ちだな」

 ネイミを含めて皆もう一で頷いてくれるが、程なく武装に身を固めたエルフにドワーフや獣人といった戦士達が集落から出てきた。

 その一団は住人の避難を監督していたザイオに合流し持って来ていた鎧を何人かで着せるとそのザイオを先頭に俺の傍までやってきた。

「待たせたの。リク殿の提案通り儂らも戦闘に参加させてもらうぞ」

 そう答えてくるザイオの姿は先程までのとは一変し、首や関節までかっちりガードを固めている金属製の全身鎧に身を包み身の丈を超える戦鎚を片手で軽々持ち上げフェイスガードを上げて俺を見上げてくる。

 その後ろに控えるヘムレオンも恐らく何かの革製の鎧に身を包み矢筒と弓を背負っていた。

 その他のドワーフやエルフの戦士達も似たような格好をしており、獣人達はヴォーガイやギャッベイの物に近い鎧を身に纏い各々自由な武器を持っていた。

「分かった。当てにさせてもらう。早速だがここの安全確保のためにも打って出るべきだと思うんだが異論はあるか?」

「当然じゃな、異論などない」

「なら次は具体的な作戦だけど、さっき手を組んだばかりの俺達とザイオ達で緻密な連携を取るなんて無理だろうから大まかな方針だけ決めておこう。まずそっちにいる耳の良い連中の先導で魔物の群れの先頭へ接敵しよう。そこからは俺達が広範囲の遠距離攻撃で頭数を減らしていくから、どうしても出てくるだろう取りこぼした奴らをザイオ達で仕留めていってくれ。そうして出来るなら魔物の群れを殲滅したいが俺達が消耗するまで、最低でも避難と家財の持ち出しが済むまではその場で戦闘を続け時間を稼ぐ。それからは遅滞戦闘を継続しながら楔の元まで後退し、回復魔術で即座に戦闘へ復帰出来ない程の傷を負った者や極度に疲労した者から転移で撤退していこう。最後は約束通りに俺達が受け持つつもりだ。ここまでで何かあるか?」

「いや、妥当な所じゃな。異存はない」

 その後集落の戦士たちは不服そうだったが全体の指揮権は俺にあると取り決め、最低限の連携の確認と非難する住民や楔の警備担当を決めて行った。

「後は戦況へ応じて柔軟に対応していこう。最後に少し試して欲しい事があるんだ」

 そこで一旦言葉を切って体を溶岩体から精霊石体へ換装する。

 いきなり事でザイオ達は皆面食らっているが、この精霊石体というのはウォルトと契約した時手に入れ保留にしていた因子をここ最近荒稼ぎしたポイントで有効化して得た新しい換装魔体だ。

 玉虫色のように光の加減で体色が変化して見え、鋭角的で細身なロボットのような外見をしている。

 その細身に似合わない力が出せ魔力や感覚が特に高いんだが、その反面細身の通りに生命力や体力に敏捷はやや低い。

 集落の戦士たちは皆一様に固まっているがすぐにザイオから問いかけてきた。

「リク殿・・・か?」

「ああ、俺は変身して異なる能力を持つ体を使い分けられるんだ。それでこの体にはちょっと面白い力があってな。ザイオ達の中で精霊術が使える奴は消耗しない程度で術を試してくれないか?」

 俺の提案にザイオやヘムレオンを含め集落の戦士たちは大なり小なり訝しがるが、それでも渋々といった感じで得意の精霊術を試してくれた。

 ヘムレオンを見た通りエルフの戦士は皆精霊術が使えるようで大半が風や水の術を試しているが、火や土に植物といった術で試している者もいる。

 またザイオを見て分かったようにドワーフの戦士達も大半が精霊術を扱えるようで半分ほどが土の術を試しており、もう半分は金属の精霊術を自分の武具へ使ってみている。

 最初はほぼ全員意味が分からないという表情をしていたが、1分と経たずにその表情が劇的に変化した。

「どうやら普段と何か変わった所があるみたいだな」

「その通りじゃ、正直驚いておる。どういう訳かいつもより負担が少なく、それでいてより強力に術が発動しおる。先程の話からするとこれは何かリク殿の力のせいか?」

「そうだ、この体には周囲の精霊の働きを強化する力があるみたいなんだ」

 この精霊干渉領域とでも言うべきものは、因子を有効化してすぐに精霊石体のステータスチェックをしている時にそこへ付随しているのを見つけた。

 ティーエとティータに手伝ってもらい確かめた所だと精霊石体になっている俺を中心に500m程の範囲で精霊の働きに干渉出来るようだ。

 あと思った通り眷属や配下が使役している精霊以外にもきちんと影響を及ぼせるようだ。

 今はまだこの力に不慣れで精霊の働きを強める事しか出来ないが、いずれは精霊の働きを逆に弱めたり敵味方で効果を選別出来るようになると思う。

「それで試してみた感じはどうだ?すぐに実戦で使えそうか?」

「無用な心配じゃな、リク殿。精霊術は儂らドワーフやヘムレオン達エルフにとっては手足のようなもの。確かに驚きはしたが、変化の程を確認した以上は戦闘で使うような大雑把な術の制御でしくじったりはせん」

 ザイオの答えに異論がないかヘムレオンやその後ろの戦士達へ視線をめぐらすと皆一様に頷いた。

「そういう事なら問題ないな。俺の方から事前に話しておく事はこれで終わりだ。ザイオ達に何もないなら戦場を楔から出来るだけ離したいしすぐに打って出よう」

「了解じゃ。儂らから特に話しておかねばならん事はない。すぐに打って出るのも賛成じゃし、一暴れしてみせようぞ」

 そう答えてくれたザイオの目配せで獣耳の戦士が数名先頭に立ち楔の警備に当たるダルクや避難を行うティーエとティータを残して出発した。


お読み頂きありがとうございます。

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