表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/142

#66 踏み入った、氾濫した森 7

 砦に侵入してきた全員を殺さず無力化に成功したので後の扱いが楽になるよう格納領域にしまって残しておいた奴隷化の首輪を取り出し俺の手の中で脱力している女エルフから嵌めていく。

 そうしている内に眷属達が残りの三人も俺の前に連れてきてくれ順次奴隷化の首輪を嵌めていった。

 四人共に首輪をつけ終えると多少乱暴だが全員を庭の地面に寝かせ、つい最近ネイミから教わって覚えたばかりの回復魔術で応急処置をしてやり一息つくともう大分空が明るくなっていた。


 後は侵入者達が自然と目を覚ますまで待つつもりなので少し早いが朝食を食べておこう。

 ティータとティーエには退避してもらっているので侵入者の監視をバルバス達に任せ、城塞の中庭にある楔の元まで移動する。

 元の世界でよく食べたコンビニのサンドイッチと缶コーヒーをポイントで作り出し腹に納めて城門まで戻ってくるとバルバスが捕らえた犬顔の獣人がもう目を覚まし周りを睨みつけていた。

 近づいて行くと俺に視線を移してきて歯を剥き出しに威嚇してくる。

 目が覚めるまでもう少しかかると思っていだが、俺を睨むくらいの元気があるなら早速色々喋ってもらおう。

「主人として命じる。自殺は禁止だ。後俺の問いに黙秘せず、嘘、偽りなく答えろ。まずは名前を言え」

「・・・ヴォーガイだ」

 俺を睨む犬獣人の表情に苦痛が見て取れ、多少抵抗したようだがつぶやくように答える。

 嘘は言えないと思うが念のため看破眼で調べてみると確かに言った通りの名前をしていた。

 ついでに展開が早く確認していなかった能力も見通してみればレベルが22もあり、魔力の扱いには向かないが高い身体能力を生み出す犬獣人という種族アビリティにそれを補強するボルトンも持っていた戦士の身体という固有アビリティを持っている。

 使っていた槍に対応する槍術スキルがレベル6もあり体術や弓術のスキルも保持していて、ここに来てからのポイントの荒稼ぎで俺や眷属達の諸々のレベルが上がっていなかったらあれほど簡単には仕留められなかったかもしれないな。

「ヴォーガイだな。次は確認だが、お前達はこの砦から西にいる巨大な魔物の群れのさらにむこうで獣人やエルフにドワーフが集まって暮らしている集落の者で間違いないな?」

「・・・ああ、そうだ」

「やっぱりそうか。なら次は質問だ。どうやってこの砦を見つけた?偶然って訳じゃないんだろう?」

「ここまでは匂いを追ってきた」

 流石にその答えだけでは訳が分からないのでさらに詳しく問いただしてみるとどうやら俺の匂いを追跡してきたらしい。

 ヴォーガイの話を順に整理すると集落を調べに近づいたシャドウフレイム達は見つかっておらず、あの時念話で見た獣人はただ視線だけを察知したみたいだ。

 姿はないが見られた確信があったようで魔物が溢れている森の状況から集落の周囲を確認する事になり、捜索の輪を広げる内にあの大木の元で俺や護衛についてくれた眷属達の匂いを見つけたそうだ。

 それから集落の中でどう対応するか少し揉めたらしいが、足の速い少数精鋭での偵察が決まりこの砦まで追って来たみたいだ。

 日本でも警察犬を使っていたし匂いで追跡される可能性を完全に失念していたのは俺の失態で今後の課題だな。

「なるほどな。ここを見つけるまでの経緯はよく分かったが、なんで俺達にしかけてきた?待ち伏せされた上で失せろと言った俺の言葉を額面通りに取れなかったとしてもお前位の腕前なら力量の差を感じて勝てないと分かったはずだ。偵察に来ていて逃げられる可能性があるなら情報を持ち帰る方が重要だったんじゃないか?」

「確かにな。だがお前の纏う力感と話が出来る知能をみてこの森を支配している魔人だと確信した。ならたとえ勝機が低かろうとお前を倒せればこの森の状況は変わる。取り巻きの少ない絶好の機会を見逃せる訳ないだろう」

「ああ!そういう勘違いをしていたのか」

 恐らくこの獣人達は、俺が魔人という事であの万を超える群れの主だと思いこんだんだな。

 それなら勝機が低かろうと仕掛けてきたのも理解はできるし、話の持って行きようではあの集落と交流が持てるだけでなく丸ごと配下に出来る可能性もあるだろう。

「俺達が何を勘違いしたっていうんだ」

「それはまだ気絶している後ろの連中が目を覚ましたら話してやる。先にあの集落についてもっと話して貰うぞ」

 ヴォーガイが訝しがって尋ねてきたが疑問は棚上げさせ、俺からの質問を続けると露骨にヴォーガイは顔をしかめたが気にせずスルーした。

 俺の思った通り獣人やエルフにドワーフが一緒に暮らしているのはやはり異例だったようだが、原因は俺の予想とは違い森に魔物が溢れて協力して避難しているからじゃあないみたいだ。

 どうやら別の森から種族横断で協力し集団移住をしてきたようで、橋頭保として最初に作ったのがあの集落だったみたいだ。

 勿論種族ごとの新しい集落を作るつもりがあるようだが、その準備段階で魔物が森に溢れ退治に手を取られて作業はほとんど進んでいないそうだ。

 

 続けて集団移住してきた理由を聞こうとしたが、気絶していた残りの3人がほぼ同時に目を覚ました。

 全員ほんの数秒意識の焦点があっていないようだったが、まず自分達を囲む俺と眷属たちに気づき続いて首に奴隷化の首輪がはまっている事を理解したみたいだ。

 揃って憎々しげな眼差しを俺に向けてくるが女エルフがいま目を覚ました3人を代表するように口を開いた。

「なぜ魔人のお前が人種の私達を殺しもせず、しかも奴隷化の首輪を使って私達に何をさせるつもり?」

「俺が質問していたんだが、まあいいか。さきに奴隷化の首輪について教えてやると以前俺にしかけてきた奴隷商を返り討ちにして手に入れた物で、ヴォーガイにはもう言ったがこれを使ったのは自死を禁じ尋問をし易くするためだ。じゃ、今度は俺からの指示だ。今起きた3人とも順番に名乗ってくれ」

「・・・エルノアよ」

「・・・ナージュです」

「・・・ギャッベイ」

 ヴォーガイと同じように俺を睨みながら女エルフ、獣耳の女、猫獣人の順に答えた。

 これで侵入者は全員目を覚ましたし、ここからが交渉の正念場だな。

「エルノアにナージュとギャッベイだな。お前達の素性については先に起きたヴォーガイからもう既に大まかな所は聞いている。俺をどう認識しているのかもな。その上でだ、お前達俺と取引しないか?」

 ヴォーガイを含め侵入者4人共が驚愕の表情を浮かべそのまま固まった。


お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ