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#63 踏み入った、氾濫した森 4

 目的地であるこの大木についた時点でもう深夜近くになっているし俺も含めて眷属達も暗視が出来るので火は焚かず、労う意味を込めて眷属達の嗜好品になっている食料と水を格納領域から出してみんなへ分けていく。

 移動中にドグラの背中でも飲み食いしていたが俺の分も出してみんなで一緒に遅い夕食を取る。

 食事の後は眠る必要のない眷属達の勧めで俺は仮眠を取らせて貰った。


(頭、起きてもらえますかね)

 ドグラからの念話で一気に覚醒し目を開けると当りはまだ暗い。

(待ってたシャドウフレイム達が戻って来たんで、次の指示をたのんます)

 大木にもたれて眠っていた俺の前で頭を下げているドグラの後ろには、確かに送り出したシャドウフレイム達がそろって戻っていた。

「報告ご苦労、ドグラ。早速シャドウフレイム達に調べた事を見せてもらうから、周囲の警戒を続けてくれ」

(へい、お任せを)

 力強く頷いて俺の前を離れるドグラに変わって前に出て来たシャドウフレイム達が指示通りに念話を送り始めてくれたのでゆっくり目を閉じた。


 瞬きするほどの間真っ暗だった視界に段々と夕暮れ時の森の風景が浮かんでくる。

 そんな景色の中央には幾つもの簡易テントと簡素な土づくりの平屋が幾つも集まって出来た集落があり、俺からだとエルフやドワーフに猫系と犬系の顔した獣人に見える住人達が夕食の準備をしているんだろうその中を行き交っている。

 どうやら散開して捜索を行ったシャドウフレイム達の一体がこの集落を見つけたようで念話を使い集合を掛けた仲間が集まるのを待って四方から集落の中を探ろうと同時に近づいて行ったみたいだがその時点で異変があったようだ。

 他より僅かに前へ出ていたシャドウフレイムの一体がある程度近づいた瞬間、いきなり獣人の一人が自分の方を振り返ったみたいだ。

 発見されない事を第一とした俺の指示通り見つかった可能性を考慮してシャドウフレイム達は皆その集落周辺から即時一斉に引き上げたそうだ。

 その後も尾行を警戒し追跡して来る者がいないか十分確認しながらここまで戻ってきたとシャドウフレイム達の意思が伝わって来た所で念話の報告は終わった。


 今の映像からあの集落の住人にどう対応するか色々考えたいしシャドウフレイム達も十分警戒してくれたようだが、追跡される可能性が少しでもある以上まずはここを離れるのが最優先だな。

(みんな。すぐにここから引き揚げて砦へ戻る。ドグラ、俺とシャドウフレイム達を背中に乗せてくれ。)

(へい、頭。どうぞ)

 目を開けると同時に飛ばした念話での指示にドグラはすぐ反応して俺の前まで戻って来てくれる。

 俺とシャドウフレイム達がその背に飛び乗っている間に周囲を別々に警戒してくれていたグリアに飛び乗ったガディも傍まで来てくれ並んで出発した。

 一応追跡を警戒してドグラとグリアには全力でトップスピードまで加速してもらい、進路上の魔物の群れは跳ね飛ばして目視と気配探知スキルで追って来る奴がいないか確かめる。

 しばらく全速を維持してもらい後ろを警戒したが特段何もないようなので無理なく維持できる程度までスピードを下げてもらい魔物の群れは避けて東へ進んでいった。


 さて、砦へ戻るまで半日近くあるしシャドウフレイム達が見つけてくれてあの集落について考えを纏めておこう。

 簡素なテントと土魔術で簡単に作れる程度の平屋しかなかったところを見ると一時的な避難場所か恒久的な集落をこれから作るかは別にして移動してきたばかりなんだろう。

 合わせて魔物が溢れている森の状況を考えると散らばって暮らしていたエルフにドワーフや獣人達が自衛や避難のためあそこに集まって集落を作ったと考えるのが無難と思う。

 そうすると俺が擬人化してあの集落を訪ねるなら、今すぐより魔物の溢れる森を鎮めて残りがいないか掃討中という名目で偶然を装って接触するのが一番好感を持って接してもらえる筈だ。

 占有領域下に置いた砦は問題の群れを挟みあの集落の反対側にあるので住人と遭遇する事は無いと思うが、眷属達にはもし鉢合わせしても手を出さないよう話しておこう。

 そういえばあの問題の群れについてグライエンさんへ話しておく必要もあるか。

 ただ証言だけだと信憑性を問われると思うので物証として回収してある魔石位はみせよう。

 その場で買い取りたいと言われるかもしれないし手に入れた魔石をきちんと数え整理が終わったら俺が出城へ出向くとしよう。


 そう考えを整理し終わった後も特に問題いなく移動出来て昼前には砦へ戻ってこれた。

 昼食後は食事を用意してくれたティータとティーエを捉まえてテーブルとイスが残っている砦の1室で魔石の整理を手伝って貰う。

 この森に足を踏み入れて倒した魔物から回収し格納領域に納めていた分を全てテーブルの上に出し、小山のようになった魔石を種類別に分けながら数えていった。

 テーブルの上が大体片付いた頃今日一緒に魔物狩りに出ていたというダルクにギャルドとバルバスが顔を出してくれる。

 両肩や左右の前腕に石の砲身を生み出し地面から吸い上げた土で作った砲弾をそこからマシンガンのようにばら撒くダルクと、土魔術で魔物達の足元を操作し下から石の槍衾で串刺しにしていくギャルドの殲滅速度が速く出番がなかったと教えてくれるバルバスは残念そうだが嬉しそうにも見えた。

 俺も偵察の首尾を話す事にして昨日の朝、砦で別れてからの事を順に話していく。

 ついでに獣人達への対応についても、もし見つけても手出し無用で襲い掛かられた場合でも自衛に留めて撤退するよう指示をした。

 部屋にいたみんなは一様に頷いてくれ、倒した魔物から得たこの2日分の魔石を預かっていたというバルバスがそれらテーブルに出し、今の話をダルクにギャルドと手分けして他の眷属達へ伝えに行ってくれた。

 新たに500個以上の魔石が追加された訳だが、狩った魔物の正確な数を教えて俺達の戦力の底をグライエンさんに推定されたくはないし、問題の群れの信憑性を担保する位なら俺が眷属達と一緒に狩った分を見せれば十分だろう。

 今貰った魔石の大半は楔に捧げてポイントにすればいいが、鑑定眼で見えた換金率が他より格段に高いオーガの魔石だけは格納領域に残しておこう。

 ティータとティーエにもそう指示し何とか夕方までに魔石の整理を終えることが出来た。



お読み頂きありがとうございます。


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