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#59 救援した、目的地の出城 4

 俺やアデルファにガディも大した怪我なくオーガ達を仕留め終え、北門付近へ視線を移す。

 戦況は最後に意識して見た城門付近での挟撃状態から仲間達に守備兵と魔物が入り乱れての乱戦へ移行したようだ。

 守備兵側が優勢に見えるが魔物の数もまだまだ残っている。

 俺達の目標は仕留めたし増援に向かうべきだろうが、三名全員で向かうと俺達だけで倒したオーガの素材を横取りされる可能性がある。

 誰かがここに残ってオーガの死体が素材に変わるのを待ち回収するべきだな。

俺達の消耗度にそれほど違いはないようだから、誰が残るかはジャンケンで決めるとしよう。オーガの死体を持って集まるようアデルファとガディへ念話を送った。


 俺も含めた3名での厳正なジャンケンの結果、居残りは俺に決まり、まだ乱戦の続いている城門付近へ気力を漲らせてアデルファとガディは走っていった。

 チョキを出したさっきの俺が少し恨めしいが、まあ決まった事に文句を言ってもしようがないので気配探知で周囲を警戒しながら城門の戦況のも注意を払う。

 3分と掛からずアデルファとガディは戦場に到着し彼らの参戦が契機となったようで乱戦だった戦況が魔物の掃討の段階へ移っていく。

 ここでようやくオーガの死体が全て素材に変わり、残った角と魔石を格納庫に納め戦闘の終了には間に合わないと思うが俺も戦場へ向けて走り出した。


 城門付近へ着くと案の定戦闘は終わっていて守備兵達が指揮者の号令の元に戦場の片付けと戦闘の初期に倒したゴブリンやオークから変わった魔石の回収を始めていた。

 俺達が下手に戦闘の後処理に手を出しても返って邪魔になりそうなので一か所に固まって出城側が話を出来るようになるまで待つべきだな。

 念話でみんなに招集をかけ戦場だった場所の端で待つ間一つ気付いたので途中で指示を変更する。

(アグリス、悪いがグリアに乗って一緒に輸送隊の見張り役へ戦闘の終了を伝えてきてくれ。輸送隊の本隊へ早く連絡がつけば今日中に物資を出城へ運び込めるかもしれないからな)

(御意、すぐにひとっ走り行ってきますよ)

(グリアも頼むぞ)

(へい頭、お任せを)

 並んで俺の方へ歩いていたグリアにアグリスが飛び乗り、方向転換したグリアは城壁に添って南へ向けて走っていった。

 アグリス達を見送って集まってくれたみんなと一団になって戦場の後始末の様子を見ていると北門が開き10名程の集団が出てきて俺達の方へ向かって来る。

 先頭にはあのグライエンさんの姿が見えるので恐らく何か話に来たんだろう。

 近づいて来たグライエンさんの方から話かけてきた。

「遠目に見てもしやと思ったがやはりリク殿だったか。助勢感謝する」

「感謝は受け取りますが、恩には感じなくていいですよ。俺達もギラン商会から引き受けた魔物討伐の依頼を果たしただけですから」

「そう言ってくれると助かる。では早速下世話になるが戦利品の分配のため各々の戦果を確定したい。リク殿の意見を言ってくれ」

 確かにグライエンさんの言う通り後で揉めないよう戦果の確定は重要だな。

 あれだけの数の魔物を倒してかなりのポイントを得たので俺達としては十分だが、ギラン商会の傭兵でもあるのであまり消極的なのは不味い。

 俺達が着くまでの戦況は分からないがそれ以降だと南門の群れはほとんど俺達で仕留めたし、城壁沿いに移動中もそこそこの数を掃討した。

 北門の群れもオーガを含めて半分は俺達が倒したと主張出来ると思うが、素材の回収は任せてある訳だしその分は差し引くべきだな。

「俺達としては参戦してから倒された全ての魔物の半数とオーガは全て俺達の戦果だと主張します。」

 俺が話し終えるとグライエンさんは驚きの表情を浮かべた。

「ご不満ですか?」

「いや逆だ。リク殿達が見せてくれた働きなら4分の3を主張されても仕方ないと儂は思っておった。オーガの事は当たり前として本当に倒した数の認定は2分の1でよいのか?」

「ええ、面倒な戦場の後始末と魔石の回収は全部そちらにお任せですから」

「分かった。そなたらがそれでいいと言うなら、儂らに異存はないし傭兵たちも文句は言うまい。今の話を書面で残しておきたい。傭兵側の代表にも引き合わせる故、出城の中までついてまいれ」

 書面に残しておくのは俺も賛成なのでグライエンさんに頷き全員で先導に従った。

 出城へ歩く途中どうして傭兵の話が出たのか聞いてみると確かに全体の指揮権はグライエンさんにあるそうだが戦果の認定に関しては傭兵ギルドが代表して異議を申し立てる権利を認めているそうだ。

 まあ傭兵にとっては戦果が報酬に直結するんだから不服があった時に異議を認めないと士気に関わるからだろう。

 続いて今日の防衛戦までの戦況を聞いてみると、快進撃とはいかないがそこそこの戦果を挙げる事は出来ているそうだ。

 具体的には斥候役だろう森から出てくるようになった50から100程の群れを幾つも巡回に出た部隊が潰し、戦力が劣る場合は前にも聞いた通りこの出城へ自分達を囮に誘い出し殲滅していたみたいだ。

 ついでに今日の経緯を聞いてみると定期の巡回に出た部隊が、オーガを先頭に森から出てくる今しがた潰した集団を見つけ取り決め通り出城へ誘引して防衛戦になったそうだ。

 そんな話をしているうちに北門を潜り城塞の中に招かれて一階になる大部屋に案内される。

 中には5人程が書類仕事をしていてこの人たちはグライエンさんの部下の書記官と傭兵ギルドから派遣されている傭兵の調整員兼戦闘の記録員で、この大部屋は傭兵ギルドの臨時出張所として使われているそうだ。

 なるほど、傭兵たちの意見も汲んださっきの戦闘についてのそれぞれの戦果を文章にして残すなら確かに丁度いい場所だな。

 俺達にこの部屋の事を説明してくれたグライエンさんが今度は部屋にいた人達に俺達を紹介してくれ続いて本題の文書作成の話に移ってくれる。

 グライエンさんの予想通り俺の出した提案は受け入れられ、残り半分の討伐実績は出兵数に比例してグライエンさんの伯爵家側が5分の3を、残り5分の2を傭兵ギルドの責任で参加している傭兵へ割り振る事で話がついた。

 俺にもこの割振り案への了承を求められたので承諾し、書類の制作が始まった所でアグリスから念話が飛んできた。

(リク様、今どこにいるんですか?)

(出城の城塞の中に入って戦功認定の公文書を作ってもらってる。もう少しで出来上がるがそっち連絡は済んだのか?)

(ええ、見張りに残った連中を見つけて魔物の掃討成功を教えてやり、輸送隊へ連絡に走らせましたよ)

(そうか、ご苦労様。一応輸送隊の護衛も引き受けた依頼の範疇だから護衛に復帰しよう。公文書が出来上がったら南門へ向かうからそこで合流しよう)

(御意、先に南門へ向かってます)

 アグリスとの念話を終えもう暫く待つと先程合意した話の書かれた同じ内容の3枚の書類を臨時出張所の人達が書き上げてくれる。

 その3枚共に俺とグライエンさんに傭兵ギルドの責任者がサインし、それぞれが1枚ずつ所持する事になった。

 守備兵の再編や物資の補充でまだ話があるというグライエンさんに傭兵ギルドの責任者に輸送隊の護衛に戻ると事を告げて傭兵ギルドの臨時出張所となっている大部屋を出た。

 その時グライエンさんから部下を借りて南門へ案内してもらい、先に着いて待っていてくれたアグリスとグリアに合流する。

 グライエンさん部下ともそこで別れ、魔石を回収している守備兵達を横目に出城を離れた。


 救援のため急いで駆け抜けた街道を今度はゆっくり南下し、見張りと殿に残った連中と別れた場所も過ぎて暫く進むと前方に輸送隊が見えてくる。

 向こうも俺達に気づいたようで先頭にいた騎馬の数騎が駆け出し、近づいてきて顔が見えてくるとその中に厳しめの表情をしたサイデルさんの姿もあった。

「打ち漏らしの魔物が流れて来たのかと警戒して出て来たんが、リク殿達だったか。全員無事なようで何よりだ」

「ありがとうございます。出城に集ってた奴らの排除が終わったので迎えに来ました。サイデルさん達の方も被害はありませんでしたか?」

「ああ、輸送隊にも被害は出ていない。別働隊のような連中がいなくて助かった。それでくどいようだが確認させてくれ、魔物の掃討は完了しているんだな?」

 俺が頷くとサイデルさんホッとしたような表情に変わり、一旦足を止めていた輸送隊へ移動再開の合図を送った。

 輸送隊が合流して来るまで戦闘の推移を話し、サイデルさんと並んで追いついた輸送隊の先頭に立って街道を進んで行った。

 一応警戒は怠らなかったが特に何もなく夕方ごろ周辺の片付けが終わっていた南門を潜れて輸送隊は出城の中に入れた。

 追加物資の到着に守備兵の士気も上がったようだが荷解きは明日からという事になり、城塞に大きな空き部屋が今は無いそうなので俺達も中庭にテントを張ってこの日は休んだ。



お読み頂きありがとうございます。

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