#58 救援した、目的地の出城 3
オーガ達に気付かれる事無く上手く迂回出来たのでこのまま仕掛けようと思ったが、先程咆哮を上げたオーガがもう一度今度は小さく吼えた。
また何かの指示だろうが折角気づかれずに近づけたのだし、ここまで来ての下手な様子見は見つかる可能性を上げるだけだな。
(アデルファ、ガディ。オーガ達は何か動くつもりのようだが、このまま気づかれる前に突っ込むぞ)
(御意、では私は前に出て露払いをやります)
(それなら自分はリク様の背中を守ります)
俺が念話で返事をする前にアデルファは走るスピードを上げて前に出てくれ、ガディは俺の後ろへ回ってくれる。
2人に素早い対応に内心感謝し、あと30m程までに迫るとオーガを取り巻いていたゴブリンやオークが動きを見せる。
俺達に気づいたのかと思ったが城門へ向かうようなので、どうやらオーガが2度目に上げた咆哮は大半の取り巻きを城門へ加勢に行かせる指示だったようだ。
奇襲が成功しやすくなるのでオーガ達の取り巻きが減るのはありがたい。
前後を固めてくれる2名への指示は変更せず残りの距離を一気に詰め、恐らく足音でようやく俺達に気づいた最後尾のオーク数体へ向けてアデルファが戦斧を一閃した。
刃が通った場所にいた全てのオークを両断し返す一撃でも複数のオークを仕留めたアデルファは、進路上の敵を残らず仕留めながらほとんど速度も落とさず真っ直ぐオーガ達へ向けて突き進んで行く。
一応横から飛び込んでくる奴を警戒したけど取り巻きのゴブリンやオークはほとんど棒立ちで、アデルファが立ち止るのに続いて俺も足を止めるともうオーガ達は目の前だった。
ここからは乱戦になると思ったがオーガがまた短く咆哮し、混乱していた取り巻きのゴブリンやオークだけが全て城門方向へ移動を再開する。
恐らくアデルファの突撃を見て俺達へぶつけても大した戦果にはならないと判断し全員を増援へ回す判断をしたんだろう。
俺達にとっても邪魔な取り巻き達が去るのはありがたいので見送り、残った5体のオーガとしばしの睨み合いになった。
この時間を使ってオーガを順に観察し看破眼で探ってみる。
5体とも鎧は身に着けていないが人だと両手持ちサイズの石で出来たメイスを片手で持ち、その内4体は一本角のレベル21でオーガの種族アビリティである怪力と再生しか持っていないが、最後の1体は2本角のレベル26で種族アビリティの他にレベル2の戦鎚術と体術のスキルを持っていた。
(アデルファ、ガディ。2本角は俺が一対一で相手をする。残りの4体を半分ずつ受け持ってくれ)
(御意、その辺りが妥当な線ですね。受け持ちを片付けた後はお邪魔が入らないよう周囲を警戒します)
(自分もお任せください、リク様)
(じゃあ、俺達から仕掛けるぞ)
取り巻きもほとんど離れたし、そこで念話を切り駆け出した。
貰った神造魔体のおかげでレベルでは負けていても能力は勝っていると思うが、体格による圧力差を埋める為最初から魔力を刀と全身に全開で纏い2本角のオーガへ間合いを詰める。
この状態でどれ位力に差があるか確かめるため、俺の頭目掛けて振り下ろされるメイスへ俺も片手で刀を打ち込んだ。
メイスと刀が激突して拮抗し、2本角のオーガと俺の動きも止まる。
隙だらけの俺へ1本角のオーガご攻撃を仕掛けようとするが、続いてくれていたアデルファ、ガディがそいつ等に仕掛け俺から引き離してくれた。
その間も俺と2本角のオーガとの力比べは続いており、途中から双方両手持ちで競り合い体格差から体重を加えて押し込まれているが拮抗出来ている。
魔力を纏えば筋力でも負けていないようなので次はどれ位技量に差があるか確かめておこう。
競り合いが続いている刀とメイスの接点をずらしながら力も少し抜き刀の上を滑らせてメイスをいなし、地面へ空振りさせて2本角のオーガの側面へ回り込み無防備な脇腹へ全力で拳を打ち込む。
スキルのレベルが示す通り技量は俺が大分上のようで、肋骨を砕き内臓を潰す手応えがあり普通のゴブリンやオークならこれで倒せるはずだが、念のためバックステップで距離を取った。
2本角のオーガは片手をメイスから離し拳を打ち込んだ個所を押さえてのたうっているが命に別状はないようで俺に強烈な憎悪を込めた視線を向けてくる。
本来なら追いうちをかけるべきなんだが再生力の見極める様子見を兼ねてアデルファとガディの戦況を確認しよう。
気配探知で2本角のオーガの様子を把握しながら近くから2つ聞こえる戦闘音を頼りにまず片方へ視線を向けるとアデルファが向き合うオーガを圧倒していて足元には首を切られた1本角のオーガの死体も見える。
もう片方の戦闘音へ視線を移せばガディも2匹の1本角のオーガと正面からやり合っていてこちらも優勢に戦闘を進めているようだ。
そこまで確かめた所で気配探知に反応があり、2本角のオーガへ視線を戻すと憤怒の表情を浮かべてゆっくり立ち上がってきた。
この短時間で普通なら致死に近い重傷から立てるまで回復をはかれるオーガの体力と再生能力は中々の物のようで、先程の拳以上の一撃を撃ち込まないと仕留められないようだ。
立ち上がる動作の途中急に沈み込み今度は2本角のオーガの方から俺に飛び掛かってきてメイスを撃ち込んでくる。
十分に警戒していたしメイスの軌道は読めるので前に出て確実に回避しすれ違いざまに胴薙ぎの一閃を放った。
確実に2本角のオーガの腹部を捉えたがバットでタイヤを叩いたような始めての手応えが返ってきて、完全にすれ違いすぐさま向き合ったオーガの腹部の傷は皮と肉が切れ内臓にも多少届いているようだがもう治癒が始まった。
ただ倒すだけなら連続して拳打を打ち込めばそれでいけそうだがこの2本角のオーガ以上の魔物がまだ森に潜んでいる可能性が十分あるし、そいつと当たるのも視野に入る以上あの手応えに慣れるためこいつは刀で仕留めよう。
能力差をなるべく正確に測るため温存していた炎を全力で刀に纏わせ俺の方から切り掛かった。
まだ腹の傷の治りきっていない2本角のオーガが振り下ろしてくるメイスと正面から打ち合い今度は石作りのそれを一刀で切断してやった。
切り飛ばされるとは思ってなかったんだろうメイスを振り抜いた所で2本角のオーガの動き一瞬が止まり伸びきった腕を返す刃で切り上げた。
またゴムを叩くような手応えが伝わってくるが、今度はきちんと刃を立てる事を意識しこちらも一刀で肘から少し先の辺りを切り飛ばす。
2本角のオーガが絶叫を上げ無事な方の拳を振り上げ打ち込んでくるが俺も片手に風を纏い拳撃を放つ。
双方の拳が正面から激突し、威力の増加と拳の防御に纏っていた風を吹き飛ばされるが向こうの拳は砕いてやった。
再び絶叫を上げ無防備に痛がる2本角のオーガの膝へローキックを放ち膝を破壊する。
支えを失い前のめりに倒れ込んでくる首を横薙ぎに刀を切り上げ一撃で頭を落とした。
流石に首がくっつく事は無いと思うがバックステップで距離を取り他の二人の様子を見れば、アデルファもう2匹のオーガを片付け終えていて周囲を警戒しておりガディも丁度2匹目の心臓を貫いて戦闘が終わった所だった。
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