#57 救援した、目的地の出城 2
前話に書き忘れていたシャドウフレイムの配置について加筆しました。
出城から出て来た守備兵たちが突撃陣形を組んで動き出す所まで見届け、取り決め通り俺達も城壁に添って動き出す。
ここから見える進路上にも飛び道具や魔術で城壁の守備兵たち争っているゴブリンやオークの残存集団が幾つか見えた。
まずはこいつ等を片付けて進むとしよう。
俺達はグリアを除いて皆精霊術か魔術が使えるので射程に入り次第干渉して減衰しない炎弾と岩石弾を一斉に撃ち込んで一つずつゴブリンやオークの集団を仕留めながら進んで行った。
そういえば俺達には弓のような遠距離の物理的攻撃手段がないので、この討伐が終わったら何か補強手段を考えたほうが良いかもしれないな。
魔物の集団を一つ潰すたびに応戦していた守備兵達から大声で礼を言われるが、手を振るだけで答えて先を急いだ。
城壁の端まで来たので角に沿うように曲がり視界が開けても、幾つかの似たようなゴブリンやオークの集団が城壁の上の守備兵達と争っていた。
俺達に気づき攻撃を仕掛けてくる個体もいたが構わず進み、魔術の射程に入り次第順番に一斉射撃で片付けていく。
礼を言われる前に戦っていた守備兵達へ手を振り次の城壁の端まで走った。
次の城壁の角を曲がり目に入った北門付近は、俺達が参戦する前の南門の状況によく似ていた。
飛び道具や魔術を使うゴブリンやオークが城壁上の守備兵と撃ち合っていて、体格のいいオークが城門へ突撃を繰り返し身軽なゴブリンがそれを支援している。
ここまでは南門の状況とほぼ同じだが城門から少し距離を置いた全体の見渡せる位置にオークより頭一つ以上大きな体躯の人型が少数陣取っていた。
筋骨隆々としている以外人とそれほど変わらない体形をしているが全員頭部に角が見え人相が明らかに人とは違うのでこいつも魔物だろう。
(魔物の集団の後方にいるあの大型のやつらがどんな種族か、誰か知ってるか?)
(多分オーガです。あの体躯通りの怪力と持久力だけではなく強力な再生能力も持っている厄介なやつらです)
(実際にやりあった事があるのか?)
(人間だった頃に何度も)
確認のため念話に答えてくれたアデルファへ視線を向けると力強く頷いてくれる。
その能力と位置取りからしてあのオーガ達がこの集団を率いていると見て間違いないだろう。
そうなると城門を攻撃しているゴブリンやオークだけじゃなくあのオーガ達も並行して潰す必要があるな。
南門から出撃した守備兵達ももうすぐここへ着くと思うが、二手に分かれた方が効率が良いだろう。
(よし、ポイントを使って全員の魔力を回復させるからアデルファとガディは俺に続いてくれ。ゴブリンやオークの群れを迂回して直接オーガ達を叩きに行く。)
((御意))
アデルファとガディがすぐさま重なるように気合の入った念話で答えてくれる。
(残りのみんなは守備兵との約束もあるし、俺達の陽動も兼ねて城門を攻めているゴブリンやオークを攻撃してくれ。指揮はアグリスに任せる。ただ無理する必要は無いからな、守備兵が到着したら適当な所で向こうへ任せて引いてもいい)
(まあ、さっきは先陣を切らせてもらいましたし、陽動はお任せを、リク様。ただ例えばですけど陽動の途中で城門付近の連中が全滅してもそれは仕方ないですよね?)
アグリスの返事は多少不満気だったが仮定の話に頷いてやると今度は気合に満ちた感じでお任せをと念話を返してきた。
グリアにティータやティーエからも同意の念話が返ってきたのでこの策でいくとしよう。
素早く地脈炉を起動しポイントを魔力へ変換しながら周りにいるみんなへ消耗した分を供給していく。
精霊達にも追加してやり最後に俺の魔力を満タンまで回復して
「行動開始だ」
号令をかけた。
アデルファとガディが頷いてくれるのを確かめて駆けだすと二人も俺の後ろに続いてくれる。
アグリスが出す指示で残りの仲間達も動き出すのを横目にオーガへの迂回ルートを三名で走り始めた。
ゴブリンやオークの注意を引かないよう気を付けそれでも全力で走りながら時折アグリス達へ視線を向ける。
どうやら騎乗戦闘はやらないようでアグリスはグリアとケルブを左右に従え、ラザとウォルトを直援の後衛に連れて突撃して行く。
ティータにティーエとガロには精霊術や魔術を使った後方支援をやらせるようだ。
城壁の守備兵達と撃ち合っているゴブリンやオークもこの突撃に気づき、半分ほどが目標をアグリス達へ変えて迎撃を始め壁役の個体が進路上へ配置を変える。
投石や魔術が襲い掛かるが精霊達にグリアは持ち前の防御力で当たっても効果はなく、アグリスは一応人を装うため避けたり大鎚で撃ち落としたりして目の前に迫ったゴブリンやオークの集団へ雪崩れ込んでいった。
グリアやケルブが牙や爪を振るうたびにゴブリンやオークが引き裂かれ、アグリスが大槌を一振りするごとに数体が吹き飛んでいく。
ラザが背中の土ライフルから放つ土の弾丸とウォルトが吐き出す水ブレスが、まだ動いている者と距離を置こうとする者を纏めて薙ぎ払いあっという間に1つ目の集団が壊滅した。
アグリス達はすぐさま城門への進路上にいる2つ目の集団へ突撃して行き、同じ手際でこれも瞬く間に潰していく。
最後の1体をアグリスの大槌が叩き潰し次の集団へ向かおうとしたその瞬間、戦況を眺めているだけだったオーガの一体が戦場の喧騒を塗りつぶす程の咆哮を上げた。
大気が震えるほどの音量が戦場に響き、ゴブリンやオークの集団に出城の守備兵達の動きが一瞬止まる。
俺にアデルファとガディはその咆哮に飲まれず移動を続け、恐らく様子を見るためだろうアグリス達は一旦足を止めた。
どうやらその考えは正しかったみたいで、あの咆哮は何かの指示だったんだろう余韻が収まらない内から魔物達が動きを変える。
城壁に上がっている守備兵達と撃ち合っていた遠距離型の集団が城門方向へと退却を始め、代わりにアグリス達の方へ門を攻撃していた屈強なオーク達が出て来た。
恐らく先程オーガの上げた咆哮はアグリス達を先に潰せという指示だったんだろう。
俺だったらこの陣形変更の隙をついて仕掛けるんだが、アグリス達はまだ立ち止まったままだ。
何か考えがあるんだろうと走りながら様子を見ていると、遠距離型の集団が城門付近の群れに合流するのに合わせるように一団となった集団の中心付近で風が渦を巻き始めた。
ティータにティーエとガロの魔力を感じるその渦を巻く風はたちまちその集団を飲みこむ竜巻へと成長し中にいる者を切り刻み巻き上げていく。
なるほど、アグリスはティータ達の竜巻が最も効果を発揮するようゴブリンやオークが合流するのを待ったんだな。
今回はウォルトが参加していないので南門の時より威力が落ちているようだが、それでもティーエ達の生み出した竜巻は十分な猛威を振るい魔物の群れをなぎ倒していく。
1分程で最大威力を発揮する時間が過ぎたみたいで竜巻は解け始め、アグリスはそれを待っていたようで突撃を再開した。
偶然だと思うがそれとタイミングを合わせるように俺達とは逆回りで南門を出撃した守備兵たちが城壁を回り込んで現れ、状況を瞬時に察したようで遅滞する事無くそのまま城門付近の群れ目掛けて突撃を始めた。
まあ、彼らを指揮する者が城壁の死角でタイミングを計っていた可能性はあるが、打ち合わせ通り城門付近での挟撃が始まりそうで、もうあちらの心配は必要なさそうだ。
丁度俺にアデルファとガディもオーガ達の後ろに出られたし戦闘を始めるとしよう。
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