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#55 戦地へ向かった、輸送隊 3

 グリアとガディを送り出した後は気絶させた重装備の連中へ土を魔術で固めた手枷や足枷を嵌めて拘束し、村を襲ってきた賊の首領格を落とし穴から出して傷の手当てをしてやる。

 アデルファとアグリスには逃げた馬を集めさせているとグリアとガディに先導され馬に乗ったザイデルさん達がやって来た。

「呼び立ててすみません、ザイデルさん。どうしても判断を仰ぎたい事があったんで」

「大まかな事情は聴いてる。賊の増援がいたそうだな。そこに枷を嵌めて転がしてる連中がそうか?」

「ええ、村を襲おうとした奴らの一人から証言を取りましたし、問答無用で俺に仕掛けてきましたから」

「だったら間違いないな。そうなると俺を呼んだのは後始末についてかな?」

「その通りです。ギラン商会の流儀を知らないんで指示をくれますか?」

「任せてくれ。ただリク殿達も引き続き手をかしてくれよ?」

「勿論手伝わせてもらいますよ」

「助かる。まずは掃討を始めてからの詳しい経緯を教えてくれ」

「分かりました」

 返事に続いて賊へ警告を出した所から順を追って話していく。

 最初の50人をほぼ生け捕りにした辺りまで話が進むとザイデルさん多少呆れた表情に変わり連れてきた護衛は驚きを顔に浮かべている。

 一人には自決されたが残りを生け捕りにし馬も大体抑えたと話し終えるとザイデルさんや護衛達は先程それぞれが浮かべていた呆れや驚きの表情を深めていた。

「実際賊達は転がっていたし、話通りみたいだな。流石に会頭が自ら招いた傭兵だけあって、大した腕前だ。じゃあ捕らえた連中の処分だが、さっき言ってたみたいに俺達の流儀でいいのか?」

「ええ、盗賊の始末はザイデルさん達の方が慣れてるでしょう?」

「確かにな。ならさっさと済まそう」

 俺へ1つ頷くとザイデルさんは連れてきていた護衛達にエクトールさんへの報告と賊を犯罪奴隷として回収する支援の要請をギラン商会まで戻って伝えるよう命じる。

 一礼し馬を飛ばしてアルデスタへ向かって行く護衛達を見送ってサイデルさんの指示で俺達も作業を始めた。


 話しをしている内にアグリスとアデルファが全て集めてくれた賊達の馬の背に元の持ち主だった賊達を拘束したまま乗せて野営をしている農村へ引き上げる。

 ティータとティーエが精霊術で縛り上げている最初に生け捕りにした賊達にも土を固めた手枷足枷を嵌め直し、村人の無用に怖がらせないよう出入り口付近へ双方纏めておいた。

 俺達が最初の見張りを引き受け、そのついでにこの襲撃の事情を追い立てた首領格や重武装の連中へ問いただしてみたが、どうやら大元の指示はあの自害した奴から出ていたようだ。

 首領格はさっき聞いた以上の事情は何も知らずただ金でアルデスタのごろつきを集めただけのようで、他の重武装した連中は自害した奴から金を貰いや装備をあてがわれていた傭兵だったみたいで依頼を受けて色々な非合法活動をしていたそうだ。

 その上そいつが依頼も持って来ていたようで、そいつしか依頼人への連絡手段をしらないらしい。

 看破眼で話をしている奴を見ていたが恐らく嘘は言っていない。

 こうなると今回の襲撃の裏事情は分からずじまいで終わりそうだが、自決した奴の身元から何か辿れるかもしれないし俺の不注意が招いた事だからしかたないだろう。

 事情聴取をしながら生け捕りにした連中を3時間程見張っているとザイデルさんの部下達が交替に来てくれ俺達はテントへ引き上げて眠った。


「リク様。起きて頂けますか?」

目を開けると聞こえた声の通りティーエがいたので体を起こした。

「何かあったのか?」

「ザイデルさんの部下の方が来ていて、今日の予定を話し合いたいそうです」

「分かった。ちょっと行って話してくる」

「では、朝食の用意をしておくので、お話が終わったら食べに来て下さい」

「了解」

 もしもに備えて鎧姿で寝ていたのでティーエを伴いすぐにテントを出て、傍で待っていてくれたザイデルさんの部下の後をついて行く。

 案内された先ではザイデルさん達も朝食を取っていた。

「よく来てくれた、リク殿。朝食がまだなら一緒にどうだ」

 麦粥のような物を食べていたようで俺にも椀を勧めてくれるが手で遮った。

「朝食は仲間が用意してくれているので、今回は遠慮します」

「そうか、残念だがそういう事ならしようがない。ならさっさと話を済ませよう座ってくれ」

 勧めに従ってザイデルさんの近くに座ると早速話を切り出してきた

「さてリク殿を呼んだのは今日の行程について相談があったからだ。俺達は予定通りにここを出発し今日の野営予定地まで進みたいと思ってる。リク殿達には悪いがここに残って生け捕りにした連中を監視し、今日中にここへ来る筈の商会からの増援へ連中を引き渡して俺達を追って来て欲しい。君等が捕獲してくれた連中の馬を残していくからそれを使ってなるべく早く追いついてきてくれ。アルデスタから戻ってくる筈の俺の部下に先導をさせれば迷う事も無い筈だ」

「馬、ですか。俺達はあんまり扱った事無いんですけど」

「それは悪いが商会からの増援が来るまでの間にでも練習してくれ。まあ馬の方に高度な調教がされてるみたいだから、並足位はすぐだと思うぞ」

「分かりました。引き受けますよ」

「助かる。輸送隊の警備は俺達が責任を持つから心配しないでくれ」

 ザイデルさんへ1つ頷くとそれで話し合いは終わり立ち上がってその場を辞した。


 ティータとティーエが作ってくれていた朝食を食べ終わった頃、ザイデルさんから出発準備と声が掛かり俺達も野営道具を片付け格納庫へ仕舞って行く。

 生け捕りにした連中の見張りをザイデルさん部下から引き継ぎ、出発していくザイデルさん達を見送った。

 それから助言に従いガディやグリアとアグリスへ見張りを任せ、馬に乗った事の無かった俺にティータとティーエはアデルファに乗馬を習った。

 ドグラやグリアに乗った経験が役に立ったのか単に馬が良く調教されていたのかは分からないが、俺達は割とすぐ馬に乗れるようにはなった。

 まあ、それでも練習と慣れは必要だと思うのでアデルファには見張りへ戻ってもらいティータとティーエを連れて街道を馬で行き来し練習ているとアルデスタの方から土煙が近づいてくる。

 多少警戒したがやっぱりギラン商会からの増援で15人程の一団を昨日見たザイデルさんの部下が先導していた。

 向こうも俺達に気づいたようで行き足をゆるめ合流してくれ一緒に昨晩野営をした村へ向かう。

 商会の警備部へ所属しているという増援の人達へ生け捕りにした連中と俺達が使わない馬を引き渡し、自決した奴の死体も渡して身元の調査を依頼すると快諾してくれた。

 ギラン商会と取引のある奴隷商の従業員という者も同行していたようで、そいつが自身の格納庫から取り出す奴隷化の首輪が賊達へ嵌められるのを見届け、昼夜兼行で駆けてくれたザイデルさんの部下には悪かったが俺達は輸送隊を出発した。

 練習のおかげで全速とはいかないが昨日の輸送隊よりは大分早く馬を駆けさせられ、徹夜をしただろうザイデルさんの部下を労って昼食後の休みを多めにとる。

 午後からも順調に馬を飛ばして街道を進め丁度日が落ちた頃、今日の野営予定になっているという村が見えてきた。

 その村に入ると輸送隊は昨日と同じように広場で円陣を組んで野営を始めており、追いついて来た俺達を歓迎して迎え入れてくれる。

 準備してくれていた夕食を振舞ってくれ夜警の順番を明け方に変えてもらい先に休ませてもらった。


 3日目から5日目も問題なく街道を北上でき近くにある農村の広場で野営させてもらったが、その村の様子が少しおかしかった。

 村人を誰も見かけなかったのでザイデルさんへ理由を知っているか聞いてみると魔物の襲撃を誘引しないようアルデスタへ一時避難を命じられたらしい。

 確かに自我のない魔物は人間へ問答無用で襲い掛かるので、避難は必要だろうし魔物の溢れる地域で人気が無くなれれば討伐隊の籠る出城へ誘引しやすくなるだろう。

 ザイデルさんの説明に納得して無人の村で休んだ。


 6日目も順調に北上出来て聞いた予定では今日の昼前に目的地の出城へ着ける筈だったが予定外の場所で輸送隊が急停止した。

 話しに聞いた通りならもう目的地の出城が見えているはずなので先頭まで停止した理由を聞きに向かったら、その光景が広がっていた。



お読み頂きありがとうございます。


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