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#38 スカウトした、トロスのスラム 3

 トロスの家をバルバスと出て住宅街を進み、以前訪れた三差路から今回はスラムの方へ足を向けた。

 進んで行くにつれ道の両側の建物が段々と荒れていき十字路に行き当たってどちらに行こうか考えて立ち止まると男が三人俺達に近づいてくる。

 全員薄ら笑いを浮かべているので強請り集りの類だろう。

「あんた等ついてるな。このまま奥まで進んでたら身ぐるみ剥がされて奴隷商に叩き売られる所だったぜ。まあ親切な俺達は何も知らないあんた等がそうならないよう声を掛けてやったんだ、当然謝礼を払ってくれるよな?」

 案の上男達が俺達の行く手を塞ぎ一人が集りの文句を謳う間に看破眼をこの三人に向けてみるが、全員レベル5でアビリティは無くスキルも習得していない。

 あの剣を使えばこいつ等でも多少はスケルトンやゾンビを狩れるだろうが、スラムの人間を不用意に威嚇しないよう普段着でここまで来たとはいえいきなり集ってくるような連中は使えないだろう。

「なあ、バルバス。幾らスラムっていっても、もう少しましな連中がいるよな?」

「わたしもそう思いますぞ。リク様の意向とは違うかもしれませんが今回任せる仕事は試しも含まれますからな、傭兵経験がある者を探してみてはいかがですか。」

 一理あると思ってバルバスへ頷くと男達を無視するように俺が振り返って問答したのが気に食わなかったようで男達は薄ら笑いを引っ込め一斉にナイフを抜いて俺達へ向けてきた。

「下手に出てりゃあ、つけ上がりやがって。さっさと有り金を全部おいて行け。」

 ナイフを向けてきた以上拳で黙らせてもいいんだろうが、他のスラムの住人も見ていだろうしもう少し穏便に済ませよう。

 後ろでバルバスの殺気が膨れ上がるが左手を上げて制しその手に魔力を纏う。

 徐に男の一人に近づくとナイフを左手で掴みそのまま握りつぶした。

 俺が何をやったか男達に全員にきちんと理解させるため左手を開いて粉々になったナイフの刀身を地面に捨てながら見せてやり、最初で最後の警告をしてやる。

「お前らみたいなチンピラに用はない。とっとと失せろ。どうしてもやるつもりなら相手になってやるが、お前達の体はナイフより頑丈か?」

 驚いていた男達はやっと俺達との実力差が分かったようで慌ててばらばらに逃げていく。

 その気配を追って周囲を探っていくとギルドでいつもすれ違う傭兵たちと遜色ない気配の持ち主を数人見つけ出せた。

「ざっと周囲の気配を探って何人か使えそうなのが居そうだけど、どうやって選んだらいいと思う?」

「そうですな。元傭兵がスラムで燻ぶっている主な理由は怪我の後遺症で満足に動けないか装備が破損し戦えなくなったのがほとんど思いますので、後者の中から義理堅い者を選んではいかがですかな。」

「武器を貸し出すんだから多少なりとも信頼できそうな奴にしようって事だな。後遺症の有無や嘘をつく奴かどうか位なら俺の看破眼で見ていれば分かるし、強い奴から順に会って話してみるか。気配探知はバルバスの方が上手いから一番強い気配がする所へ案内してくれるか?」

「御意、お任せください。」

 一礼したバルバスが歩き始めたので俺もその背中に続いた。


 帰りに迷わないよう道を覚えながらスラムの奥へ進んで行くと一軒の廃屋の前でバルバスが足を止めた。

 確かに大きめの気配がこの中にいるようなので壊れた廃屋の扉を俺が先に潜って声を掛ける。

「ここにいる一番強い奴と話がしたい。出てきてくれないか?」

 最初は無視されると思っていたが廃屋の中にある幾つかの気配の内、俺にもわかる一番大きな奴が奥から出てくるようだ。

 エントランスだっただろう場所で待っていると20代前半で細身だが筋肉質な男が出てくる。

 俺の前に来るまで看破眼で能力を調べてみるとレベル12で剣術レベル2のスキルを持っているが、何より身体能力を補強するアビリティ戦士の身体というのを持っていた。

 どうやら最初から使えそうな奴に当たったようだ。

「俺がここに住んでる者達のリーダーだ。何の話があるんだ。」

「話の先に自己紹介をさせて貰う。俺は魔物退治専門の傭兵をしているリクっていう。気配の大きさを頼りにあんたを見つけてここに来た。俺達の下で魔物退治を依頼したいんだが受ける気はあるか?」

「今の話だけじゃあ判断できない。もっと詳しい条件や相手をする魔物の種類を教えてくれ。」

「ああ、そうだな。お前に相手をして貰いたいのは俺達が狩場にしている場所の浅い部分に湧く低レベルのゾンビやスケルトンだ。他にも同じ場所でロックモールが出るがそれは無視していい。報酬額はお前が一日にどれ位仕留められるか見極めてから決めさせて貰おうと思ってる。」

 俺達との力量差が分かるのか男は緊張しながらも毅然として俺達と向き合っていたが、ゾンビやスケルトンと聞いて露骨に表情が歪んだ。

「声を掛けてくれたのは有り難いが、魔術が使えない俺じゃ不死系統の魔物は上手く狩れない。街中の傭兵ギルドで魔術師を捜した方が良いんじゃないか?」

「その事なら不死特効の武器を用意してあるから問題ない。まあ話だけじゃあ信じられないだろうから実際にその武器で魔物狩りをやってみてくれ。その結果で正式に契約するか決めるってのはどうだ?」

「分かった、そういう事なら取り敢えずやってみる。これから直ぐに狩り場は向かうのか?」

「いや、狩場まで歩いて半日かかるから明日の朝南門に来てくれ。あと話は変わるがこのスラムの顔役を誰か知ってるか?」

「一人世話になってる人がいるが、何でそんな事が知りたい?」

「それはお前の狩りが上手く行くようなら、他にも使えそうな奴を断続的にスラムから雇おうと思ってるからだ。スラムの人間を使うなら顔役に話を通しておかないと後々面倒なんだろう?引き合わせて貰えるか?」

「確かにそうだな。一応面会して貰えるか話してみる。ついてきてくれ。」

 顔役の事を聞いてから浮かべていた怪訝な表情を納め、男が廃屋を出たので俺とバルバスもその後に続いた。



お読み頂きありがとうございます。

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