#139 後始末した、王都 11
ジェルマン商会を潰すと決めた以上は迅速に行動を開始しよう。
今やっているそこの手下達への尋問は、重要な点についてはもう聞き出したし後はジアトルの部下達に任せて内容の報告は目新しい事を喋った奴がいた場合だけにしてもらった。
俺としてはその間に準備をして炎山の仲間達とジアトルにその部下数名と先行して王都へ向かいたかったんだが、これはジアトルに難色を示された。
その理由が配下の鉱夫達を置いていけないという至極真っ当な言い分で俺も獣人やドワーフ達の事があるんで断り辛く、俺の方が折れてこの場にいる全員で王都へ向かう事となった。
加えて鉱山事務の書類なんかも持ち返りたいそうで、これも譲歩して容認したんだが変わりに昼過ぎにはここ出発する事をジアトルに確約させた。
それに俺もこの時間を利用し、楔を隠して設置するため制圧用に開けた抜け穴を塞いでくるという名目で坑道へ入った。
同じように坑道封鎖の手伝いという名目でついて来てもらったザイオに絶対に掘り返されない壁をいくつか見立ててもらい、運よくその一つに干渉地があったんで魔術で穴を開けて隠し部屋を作った。
そこに新しい楔を打ち込み、機能確認を兼ねてロックガーディアンの一体を連れて戻ってくる。
そのガーディアンにはここの楔の警備を頼み、もし俺達以外の何物かに見つかりそうになったら楔の時限式自壊機能を起動して他の楔へ転移で撤退するように指示しておいた。
そうしてこの楔を打ち込んだ部屋を再び魔術で塞ぎ、ザイオの監修で塞いだ場所のカモフラージュもしておいた。
念の為転移門で楔の部屋へ出入りできるのを確かめ、名目上の目的である抜け穴もきっちり塞いで戻ると丁度ジアトル達の準備も終わった所だった。
勿論炎山の仲間たちの準備も終わっていたんで、実際に転移門を使って見せて説明をし尋問が終わっていたジェルマン商会の連中も引き立てて王都へ移動を開始した。
流石に一回では王都周辺まで門をつなげなかったんで一旦途中の街道の脇に出て、もう一度転移門で発動する。
今度はヴォ―ガイ達を迎え入れた王都郊外のあの丘の上に転移門をつなげられた。
ヴォ―ガイ達獣人やドワーフに鉱夫達はジェルマン商会を排除するまでここに待機してもらう。
引っ張ってきたジェルマン商会の連中の中から頭を一人証人の代表として連れて行く事にして、残りはヴォ―ガイやゼペットといった獣人やドワーフの中で戦える連中に武器を渡して監視を頼む。
勿論謝礼も前金で払っておいた。
合わせて今回も周囲には誰もいなかったが、もしここの所有者がやってきた時に備えてここに居る黙認をもらうための金もちょっと多めに渡しておいたし、ジアトルも自分とコランタ商会の名前を出していいと許可を与えていた。
そうしておいてから俺達炎山とジアトル達で改めて王都へ向けて歩き出した。
ただ街道に出た所でジアトルの護衛の半分とは別れ、彼らにはゾイムともう一人を捉えるためその二人がやってくるはずの街道へ網を張りに行ってもらう。
同時にジアトルと残りの護衛達には俺達の馬を貸し出して、スムーズに王都へ入れるよう手配してもらうため先に城門へ向かってもらった。
俺達はジェルマン商会の奴の身柄を確保しながらなんで歩いてその後を追っていった。
日が傾いてきたがなんとか出入りが止められる前に城門へ着けた。
流石にジアトル達は地元の商会に所属しているだけあって城門の衛士達へちゃんと顔が利くみたいで、着くなり結構な人が待っている列に並ばずそのまま審査を受けられて王都へ入れた。
ジェルマン商会の場所は知っていると移動前に聞いていたんで、ここからはジアトル達に案内してもらうんだがそのジアトルの指示で護衛が二人俺達から離れていった。
「ジアトルさん、今の二人をどこへやったんだ?」
「あの二人にはコランタ商会の父の所と彼らの詰め所へ今回の事の報告と増援の要請に行ってもらいました。事後処理をスムーズに進めるためですが、味方は少しでも多い方がいいでしょう?」
「確かに商会を包囲する人出が増えるのはありがたいな」
「・・・その口ぶりだともしかして突入はご自分たちだけで行うつもりですか?勿論約束通りジェルマン商会の制圧はお任せしますが、どうしてかは教えてください」
「ああ、それは大勢で踏み込めば中の連中は初手から逃亡や不利になる証拠の隠滅を図ろうとするよな。でも俺達だけなら多分排除した方が楽だと思って襲いかかってくるはずだ。まあそこを返り討ちにして腕前がばれれば同じなんだが、逃亡や証拠の隠滅を遅らせればその分だけ後が楽だろ」
「なるほど。リクさん達位の腕利きならその方が効率的ですね。分かりました。もしこれから合流してくる者の中から異論を唱える者が出てきたら私がきちんと説き伏せます」
「もしそうなったら、よろしく頼む。じゃあ仕掛けるのは増援と合流してからにするとして、その前にジェルマン商会の場所と建物を確認させてほしい」
「案内します。ついて来てください」
頷き返してきたジアトルを先頭に王都の中を歩き出した。
日が沈みかけ人通りが増えている大通りを進んで行き、港に出た所であれがジェルマン商会ですとジアトルが中々大き目の建物を指さした。
ここから見えるのは正面の出入り口だけだが、この規模の建物ならきっと裏口もあるだろうし突入前に要確認だな。
中の気配も探ってみたがそう強いものはないんで、余程気配の隠ぺいに長けた腕利きでもいない限り制圧自体に問題は無さそうだ。
一応の確認が済んだんで少し距離を取って商会が見える位置から様子を覗っていると10人を上回る数の集団がこっちに近づいてきた。
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今週の投稿はこの1本です。




